November 15, 2018

歯を失う原因

管楽器奏者にとって歯を失う事は演奏家生命を脅かすことであり、少し前まで歯を失う原因の多くは歯周病だったのではないかと思う。しかし、当院に来院される方は皆さん歯をきれいにしている人がほとんどで、虫歯や歯周病で楽器が吹けなくなる人はもうあまりおらず、歯の咬耗や破折などの問題で吹けなくなる人が多いのではと考えていた。

80歳で20本以上の歯を有する割合は、25年前は約10%だったが、現在は50%を超えた。歯周病で多くの歯を失う人は減り、義歯なしで過ごしているお年寄りが増えたと言ってよいのではないかと思う。しかし、厚労省の調査結果によれば「日本人の30歳以上の8割は歯周病」だそうだ。何をもって歯周病とするかであるが、調査では歯肉のポケットに探針をいれて血がにじむと歯肉炎で、ポケットが深いと歯周炎ということなのだろう。結果を見ると歯周病の半分くらいはごく軽いものも含めて歯肉炎で、もう半分はなりかけも含めて歯周炎という感じだ。

少し前だが、アマチュアのトランペット奏者で重度の歯周病の方が来院された。前歯が抜けてしまったので、楽器を吹くためによい方法を相談したいということであった。年齢はまだ50代。口の中には何本かの歯が存在していたが、動揺が大きく歯垢と歯石が多量についている状況であった。レントゲンを撮るまでもなく抜歯が必要と思われた。話を伺うともう5年以上も前から歯周病を自覚していて、その頃から他の歯科医院ですべて抜歯して総入れ歯が必要と言われていたとのこと。でも、まったく歯周病の治療は受けていなかった。この状態になってもなお、管楽器をわかる歯科医院での治療を希望されたが、その方の近所で知人の歯科医院を紹介した。まずはきちんと治療に通うことが必要と思ったから。
歯周病は歯が抜けるだけではなく、全身の疾患に関連があることがわかっている。歯周病菌により血管を詰まらせ心筋梗塞や脳梗塞のリスクを上げる、糖尿病を悪化させるなどなど。管楽器演奏以前に、そのような口では自分の寿命も危なくなるのだ。

気持ちはわかる。昔歯医者で痛い思いをしたとか、歯の治療をして吹きにくくなったとかがきっかけで、歯科医院に行きたくないし行くにしても管楽器を理解している歯科医師でなければ治療を受けたくないという人は、今までに何人か来院されたことがある。
今は歯科医院は多く患者側にも選択肢がある。優しく痛くないことを心掛けている歯科医院はいっぱいある。通いやすいことは大切と思うので、まずは自分に合うところを見つけて通ってほしい。

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November 08, 2018

7番用アダプター

年齢を重ねると、7番(第2大臼歯:つまり一番後ろの歯)を何らかの原因で失う人は多い。一番後ろの歯が無くなった場合の一般的な治療法は、延長ブリッジかインプラントになるが、対合歯がなければ特に補わずに放置という人が多いかもしれない。それが演奏にどう影響があるか、人によるのではないかと思う。

プロオーケストラで長年演奏されているホルン奏者が来院した。1年ほど前に7番を抜歯することになりどうしたらよいかという相談にいらしたが、たぶん私はまずは歯科治療を受けてくださいといった話をしたんだと思う。
その後、欠損部位に一本義歯を保険治療で作製して使用していたとのこと。音が不安定で高音域が厳しいという状況であった。すぼめるようなアンブシュアであったが、元々は少し引き気味だったのにすぼめないと吹けないということであった。
そこで、以前に親知らずを抜歯した後に作製したアダプターを応用して左右の頬側にアダプターを作った。上顎は片側のみの7番欠損、下顎は両側7番欠損であったが、安定感やアンブシュアへの影響を考えて、まずは上のみに入れてみることにした。アンブシュアは改善し期待が持てるような結果となった。

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November 07, 2018

管楽器奏者のジストニア その後

2017年1月頃に管楽器奏者のジストニアについて記事を書いた。

その中で、ジストニアと思われるクラリネット奏者に6mm高さのアダプターを使用することでアンブシュアが安定した話を書いたのだが、実は写真のように、顎全体にはめる大きな物でだった。臼歯部を噛んで吹くためであった。
その後1年半ほどしてアダプターを新しく作ったのだが、結局普通のアダプターにすることとなった。下の前歯が咬耗しており、その短くなった分を補う程度の小さなアダプターでよくなった。かなり改善したと考えてよいかと思った。

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ちょっと前になるが、ジストニアの経験者というプロのトロンボーン奏者の方からメールをいただいた。簡単に言えば、金管楽器奏者の歯を削るな矯正治療もするな、演奏の不調は歯の問題ではない、自分は10分の指導で良い音にできる。私は、演奏の不調を歯を削ったり盛ったり動かしたりして改善しようとしているわけではなく、元のあるべき姿の歯の形に戻すといった方が近い。中には、この歯並びでは楽器を吹くのに苦労するだろうという歯並びも存在し、治療して夢のように吹きやすくなったとおっしゃる方も大勢いる。私の経験やアンブシュアについての知識のソースを説明し、何とか矯正治療を行うことについては納得いただいたようだ。


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August 12, 2018

上顎前突のアンブシュアのタイプ(金管) その2

さて「上顎前突の人には二種類のアンブシュアがある」(マウスピースの小さい金管楽器)という話を書いたが、それぞれにどういう特徴があるのか考えてみたい。

<上顎前歯の唇側面にリムが乗るタイプ>
・上顎前歯が唇側傾斜しているので、マウスパイプは水平に近くなる。
・顎の開きに伴いリムが上下すると、マウスパイプの角度がそれに応じて変化せざるを得ない。
・上下にリムからの圧力がかかるようにするためには、下顎をかなり前方に出すか、下唇をすぼめて厚みを増す必要がある。
・高音域は比較的楽に大きく出せるが、音は硬くなる。
・下唇を張れない人(シワができる=下唇の厚みを大きく増す)は、中音域は柔らかく響くが、大きな音や高音・低音を出すのは難しい。

<上顎前歯の切縁にリムが乗るタイプ>
・下顎前歯の唇側面に垂直にリムが乗り、顎の開きに伴い下顎前歯に沿ってリムが上下するようである。
・下唇前歯の唇側面の角度によるので、マウスパイプは下向きになる。
・顎の開きに伴いリムが上下しても、マウスパイプの角度はほぼ一定である。
・高音域を出すときに力が入ってしまいやすく、大きい音が難しい。
・顎の開きに限界があるので、低音域は難しい。

では、どっちがよいのか。以下は個人的な感想である。

結局私は後者のタイプで吹いている。普通に吹いては高音域も低音域も大きい音も難しいとは思うが、鍛錬をして音の高さをコントロールするのは顎の開き(歯の開き)だけではないことを体現できれば、少々上顎前突でも、広いダイナミックレンジと音域を得ることができるのだと思う。

私は昔はマウスパイプをかなり下向きで吹いていた。それなりに上手かったのだが、低音が苦手、高音は得意だが張った音になりがち(リップトリルができない)、音量は今に比べると小さかったと思う。たぶんこれらが下向きタイプにありがちな特徴なのだと思う。
その後水平へ変わっていったのにはいくつかきっかけがあり、ワグナーチューバを吹いてどう持っても水平になってしまう、オケのメンバーに爆音系の人がいた、トップが変りセクションの音が明るめになり皆が水平に近くなってきた等々。
最近まで水平近くで吹いていたのだが、どうしても高音域で無駄な力が入ってしまうこと、低音域がつらいことが悩みであった。試行錯誤をしているうち、高音域ほどカップの中に上唇を入れるようにしてマウスパイプを上向き、低音では下向きにし、リムを意識的に上下させると楽に吹けるようになった。しかし、音色は悪くなる一方。
で半年ほど前に、それらをやめアンブシュアの考えを改め、今に至るわけである。自分で書くのもなんだが、最近ちょっと上手になってホルンを吹くのが楽しい。

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April 09, 2018

上顎前突のアンブシュアのタイプ(金管)

どうも上顎前突の金管楽器には2種類のアンブシュアが存在しているようである。

一つは上の前歯の唇側面にリムが乗るアンブシュア(水平タイプ)で、もう一つは上の前歯の切縁にリムが乗るアンブシュア(下向きタイプ)である。乗る乗らないといっても口唇が介在するわけで、リムの支点とでもいえばよいだろうか。
一般的に上顎前突とは、臼歯で噛んだとき上の前歯と下の前歯の前後的な位置の差が大きい状態(正常は2~3mm)をいうが、多くの場合は上顎前歯が前に傾斜しており、さらに下の前歯も傾斜している(上下顎前突)ことも多い。日本人によくあるパターンの咬合である。

顎を楽に開けた状態で上下の前歯が一つの平面になるのが、ある意味金管楽器を吹くのに理想的と言ってもいいんじゃないかと思う。この場合は普通に上の前歯の唇側面にリムを乗せることが可能である。

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しかし上顎前突ではそうもいかない。下顎を無理に前方に出して上の前歯の唇側面に乗せるか、下顎は楽な位置で上の前歯の切縁に乗せるかどちらかになるのだと思う。
ちなみにトロンボーンなどではリムが大きいので下顎を出さなくても唇側面に乗るためか、トロンボーンで後者のタイプの人にはあまり会ったことがありません。

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(上記の図は同じ歯の傾きにしてあり、水平タイプは下顎を前方に出し、下向きはあまり出さずにアンブシュアを作ったときを想定して書いています。下向きタイプの図の点線は側切歯で、側切歯の切縁辺りに乗ることになるかと思いますが、リムの大きさや当て方によってはその限りではありません。)

上顎前突の2つのアンブシュアパターンにはそれぞれ利点欠点があるのだが、レッスンについたり専門的に学ぶ過程で、唇側面に乗る水平タイプに直されて、かえって元々の奏者の良さが消えてしまうことも多々あるのではないかと思う。
矯正治療をする上での注意する点としては、元々下向きタイプの人が上顎前突を改善すると思うように吹けなくなってしまうことがあるので、是非矯正治療中もコンスタントに楽器の演奏を続けてもらいたいし、矯正治療の時期も考慮した方がよいこともあると考えている。

注:便宜的に水平タイプ、下向きタイプとしたが、全くの水平とは限らないし極端に下向きでもないです。

つづく

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April 06, 2018

管楽器奏者の筋機能療法(MFT)(3)

口腔筋機能療法の概要については、もう20年近く前に「管楽器奏者の歯のためのページ」に掲載してアップデートしていない(レッスン2でとまっている)のだけど、まずそちらを読んでいただきたいと思います。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~ohara/muscle/mft.html

舌突出癖、低位舌、口唇閉鎖不全であれば、不正咬合と関連し、きちんとプログラムに沿って指導を受けてトレーニングすることをお勧めしたいが、中には正しくはこういうものだということを知るだけでも舌位が改善する人もいなくはないのでお伝えすると、何もしていないとき「舌は口蓋(ウワアゴ)に付け、歯は噛まずに開いて、口唇は閉じて鼻で息をする」をまず実践してみてほしい。

アンブシュア強化のためのトレーニングとして3つ紹介したいと思う。

1)ボタンプル:直径2.5cm程度の薄いボタンを用意し、タコ糸のような紐を通します。前歯と口唇の間にボタンをはさみ紐を前方に引っ張ります。基本は臼歯は噛んで紐は水平なのですが、アンブシュア強化には臼歯は少し開けて紐は少し下向きの方がよいかもしれません。応用としてはボタンを2個用意して左右に引っ張るのも効果的です。
主に下唇が下顎歯列に密着する力を強化します。音質の向上につながり、いわゆる「下あごを張れない人」にも効果があります。

2)風船トレーニング:一般的に手に入る普通のゴム風船を用意します。これを手を使わずに膨らませます。吹き口がロールしていてここに前歯を引っ掛けると簡単ですが、あえて引っ掛けずに口唇だけの力で保持します。一息膨らませたら口唇を閉じたまま鼻で息を吸ってまた膨らませます。
主に口唇を閉じる力を強化しますが、頬筋や呼吸のトレーニングにもなると思います。息漏れの解消や音の安定につながります。

3)オープンアンドクローズ:舌全体を上顎に吸い付け口を大きく開けて舌の下のヒモを伸ばします。次に吸い付けたまま奥歯を噛みます。開いたり噛んだりをゆっくり繰り返します。
注意点としては、舌の先が上前歯のすぐ後ろにあること、舌の前の方だけでなく後も吸い付いていること、舌が上の歯を覆わず上の歯列の内側に収まること、左右対称に吸い付けること。また、口を開けるときは、下顎が前に出たり横にズレたりせず、まっすぐ開けます。
アンブシュア強化のためには舌後方の脇を意識するとなお良いと思います。主に舌を挙上する力を強化します。ダブルタンニングや息のコントロール(特に高音域)に効果があります。

これら3つの力は、金管楽器だけでなくどの管楽器にも必要な力でしょう。
正直いうと私自身は基本は楽器の練習の中で筋肉を鍛えアンブシュアを作るべきと思っていますが、元々足りない人には効果があるかもしれません。私はときどき風船トレーニングをやっています。

※個人の感想であり、効能を確約するものではありません。。。

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April 03, 2018

管楽器奏者の筋機能療法(MFT)(2)

管楽器の演奏を始める年齢は、日本の場合圧倒的に中学生からが多く、早くても小学4年生なのではないかと思う。弦楽器やピアノに比べ開始年齢の遅い管楽器に対し、早期教育の必要性が言われ始め、「東京芸大早期教育プロジェクト」などいろいろな試みがされているようである。

日本人が管楽器演奏で大成しにくい原因として、言葉の違いがあるのではないかと聞く。日本語はドイツ語などに比較して、口唇より上の筋肉や舌後方の筋肉などをほとんど使わない。こういった筋肉が金管楽器演奏には重要なのだと。ドイツ人などは管楽器を勉強する前からこういった筋肉が発達するから、苦も無く良いアンブシュアを習得できるということらしい。だから、単に早くから専門家によるレッスンを受けるだけではなく、正しいアンブシュアの習得と、そのための筋肉のトレーニングが必要ではないかということである。

私が思うに、日本人の場合、口を閉じる、咀嚼する、嚥下するといった機能自体に問題がある子供の割合が多すぎる。おそらく欧米人の比ではないはずである。だが、それらの機能が弱くても生活は出来るし食事できるし日本語は話すことができるので、あまり問題にならないまま成長することが多いのである。管楽器の早期教育を考えるのであれば、まずはそういった日常の口腔機能を正しく行えるようにすることがまず大切なのではないかと。

歯科矯正での早期治療(多くは7~10歳くらい)については、効果が無いというエビデンスを元に、永久歯列完成後(12歳以降)に治療を開始すべきという方針の医療機関も残念ながら少なくはないようである。そんなことはない、早期治療をやるべき子供はたくさんいる。適切な時期に治療を行い口腔筋機能療法を行うことで、管楽器演奏にとって良い条件へ導くことはできるはずである。早期治療で良い効果が得られれば、永久歯列完成後の矯正治療をせずとも良い歯並びにすることができる。中学高校で始めると矯正装置自体が足かせとなり、矯正治療をあきらめるか管楽器をあきらめるかという選択となることも多い。早期からの管楽器教育を受けさせるのであれば、ぜひ歯並びや嚙み合わせも早めに問題解決した方がよい。

つづく

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March 13, 2018

管楽器奏者の筋機能療法(MFT)(1)

口腔筋機能療法とは、咬合不全の原因となる舌前方突出、低位舌、口唇閉鎖不全などの習癖を除去し、口腔周囲筋の機能を改善して習慣化するためのトレーニングである。日本で行われている方法は、アメリカで開発され日本には1980年頃から広まり現在では多くの矯正歯科で用いられている。
アメリカでは専門のセラピストがオフィスを持ち、矯正歯科医はそこに依頼してトレーニングを受けてもらうというが、日本では矯正歯科医院で歯科衛生士が行うのが現状である。
当院でも歯科衛生士さんに講習会で勉強してもらいMFTをやっている。本来トレーニングフィーを患者さんから徴収すべきだろうが、患者さんがもし希望されなかったらと思うと、つい治療費に含めて(追加料金無しで)行っている。歯磨きをちゃんとしてくるとポイントがもらえる制度を作ったところ、それまで歯磨き指導と歯面清掃に費やされていた分の時間をMFTにまわすことができ、当院では半分以上の患者さんにMFTをしている。実際ちゃんとMFTをするとバシッと噛んでくることが多い。矯正治療が順調に進み治療後も安定をするというのが診療におけるMFTの目的である。

では管楽器演奏をしてる患者さんにMFTをどうしているかというと、以前は正直あまり行っていなかった。大昔の研究論文に管楽器演奏が口腔機能向上の役に立つというのがあり、管楽器を演奏することで機能的な問題はないだろうという先入観があった。また、管楽器奏者には口の周りの機能に自信がある人も多少いて、あまり勧める感じでもなかった。

現在はというと、やはり半分以上の人にMFTをやってもらっている。
口腔周囲筋の機能と歯並び咬み合わせは密接に関連している。開咬など主に機能的問題で発生する不正咬合の人は、管楽器を習得しても口腔の習癖を残していることが多いし、管楽器奏者には開咬でなくても低位舌や口呼吸の癖がある人は多いように思う。舌癖はさほどでなくても、治療により変化してきた歯並びに適応するため、あるいはより機能を強化する目的にMFTを希望する管楽器奏者は多い。

もちろん日本の気候や住宅環境、顔面構造により鼻炎などが原因で口呼吸を起こしやすい民族なのではないかと思うが、管楽器演奏が口呼吸を誘発するといわれている話を数年前に書いた。
管楽器演奏は口呼吸を誘発するのか(1) (2)

管楽器演奏するとすべて口呼吸になるわけではないけど、なりそうなボーダーな状態だと場合によっては管楽器演奏が引き金となり口呼吸となり低位舌となるのかなという気がする。管楽器のプロ奏者を見ると、歯並びがあまり悪くなくても口呼吸、低位舌、歯軋り、楔状欠損という人が多いように思う(私の個人的な感想であり統計をとったわけではないです)。口呼吸の習慣が付いたのが歯列完成後であればそのようなことになるし、完成前の小学生くらいから管楽器を始めると開咬など引き起こすこともあるのかもしれない。

つづく

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December 08, 2017

歯の形は変わる、歯並びは変わる

この前15年前の自分の口腔模型を見つけて、現在の模型と比較をしてみて、意外と変化していることがわかった。上の前歯の内側が少し咬耗し、上の前歯の長さが少し短くなり、下の歯列の正中のずれがほんの少し大きくなっていた。どれもほんの少しではあるが、へ~~っと思った。

歯の形は変わる。例えば歯軋りなどをして歯に負担がかかると、歯は磨り減ったりカケたりする。歯頚部あたりに楔状欠損が起こることもある。もちろん虫歯等で歯の治療をしていれば元の歯とは違う形になる。私は自分では歯軋りなどしているつもりはないのだが、普通に過ごしていても歯は僅かずつ短くなるのである。

歯並びも変わる。昔読んだ論文によれば、咬合するとそのたびに歯が近心傾斜する方向に力がかかるそうだ。つまり長い年月のうちに奥歯は前方に移動し、そのしわ寄せを受けて歯は前に出るか叢生になるということになる。
経験的には、これは個人差があるように思う。最近聞いた話によれば、ドリコ(下顎が急傾斜な顔面骨格パターン)だと起こりやすく、ブラキ(下顎がガッチリした顔面骨格パターン)は起こりにくいということらしい。なるほど臼歯にかかる咬合力の方向を考えるとそうなるのであろう。
歯軋りや食いしばりで臼歯が磨り減る、また虫歯治療を繰り返すうちに臼歯が低くなるなどしてやはり前歯が前に出たり叢生になったりする。歯の治療方法(材料)よっては、余計磨り減ることもある。臼歯の欠損によってさらに顕著に起こる。これは上記のように自然に歯が前に移動してくるよりも大きな変化と思う。
また、成長は終わっても、歯並びに影響を及ぼす習慣は他にもある。多いのは舌突出癖。若いときは問題がなくても、中年になり歯周病によって歯の支えが弱くなると舌の影響を受けやすくなる。前歯が出てきて隙間も出来る。うつ伏せ寝で顔を横向きにしていると下顎に横から自重がかかり歯並びは歪む。などなど。

さて、それではどう対処すればよいかである。
起こるべき変化であれば、それに合わせてアンブシュアを適応させていく、あるいは道具を合わせていくということだろうか。例えば金管であればマウスピースのボアを大きくするとか。
何らかの原因があり必要以上に変わってしまったら、歯の形を元に戻すことも可能なこともあるだろうし、アダプターが助けになることもある。また、変わってしまった原因があれば、それを取り除く。調子のよい時の口腔模型を保存しておく、ナイトガード(歯を守るためのマウスピース)などを寝るときだけ使用するというのも良い対策と思う。

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November 24, 2017

アダプターの溝

当院を開院してすぐの頃からアダプターを作成し使っていただいていたユーフォニウム奏者が、最近来院した。最初は音大生であったが、15年以上経った今もユーフォの演奏を続けている。何度か作り直したり調整したりした。最初は私も手探りだったので、左右対称のつるっとした物から、上顎の前歯の非対称な並びに合わせたりしながら試行錯誤をした。

3年ほど前に「自分の歯で吹こう」と思い立ち、それからアダプターを使わないで吹いていたのだそうだけど、やはり吹きにくく、でも前のアダプターは入らないし不満もあるしということで、新しいものを作成した。
以前、アダプター表面をリアルな歯の形にして音質が変わったという話を書いたのだけど、彼女はそれを読んでいて、私のにもそうしてくださいというご要望。正直言うと、それを作るのはとても手間がかかり(歯並びの凹型を作ってレジンを流し込んだ)3万円もらってもやりたくないと思っていたので、迷ったのだけど、アダプターを使って吹くと周囲から音が浮いてしまうのだということで、しぶしぶすることにした。

やってみれば5分もかからず、溝を入れただけなので見た目あまりリアルではないが、音は激変。通常のアダプターだとメローな、おそらく不整倍音の少ない音質(それがユーフォらしさかと最初思った)だったが、溝を入れたところ、芯もありハッキリとした、でもユーフォらしい音となった。アダプターなしだと歯並びが悪いため更に不整倍音が増えるのか少々雑味のある音質なので、これだったら絶対アダプターありの方が良い音で、しかも吹きやすい。

アダプターの表面を歯並びのようにすることで音質が良くなるのは、ホルンでは起きても、もしかしたらユーフォのようなマウスピースの大きい楽器ではそれほど変化しないのではと想像していたのだけれど、むしろホルンよりも変化量が大きかったのでした。

アダプターを入れた状態。上の前歯とバランスが取れている。
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通常は上下前歯の被りに左右差がある。
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