November 26, 2020

スランプとジストニア

タンギングが出来ないというプロトロンボーン奏者が来院された。タンギングをすると息が漏れるということ。演奏時のレントゲンを見ると、舌や顎の位置に大きな問題はなく、アンブシュア自体の問題(口唇周囲の筋肉のゆるみ)であると思いました。
ご本人はジストニアを疑っているということで、専門病院への受診を考えているということでしたが、おそらく違うでしょう。こういった金管楽器奏者の不調は40歳前後に出ることが多くスランプとして受け止められていましたが、最近は「アンブシュアジストニア」と解釈されてしまうのかもしれません。

基本練習不足と身も蓋もないことを言ってしまいましたが、口呼吸と歯の楔状欠損と歯周病がきっかけになっている可能性があると思いました。まずは歯のクリーニングとMFT(口腔周囲筋のトレーニング)を行うことになりました。
その後ジストニアの相談で受診した病院で副甲状腺機能亢進症であることがわかり、病的に歯槽骨が吸収したのはそれも原因であった可能性が考えられる。それは治療を行って完治し、歯肉の状態もよくなったところで、臼歯部の頬側歯槽骨がなくなり歯根が露出して摩耗している部分を補ってみることにした。
効果があるかどうか試すために、シリコーンで臼歯部の頬側を被った。それまでたどたどしい演奏だったのが、どんどん水を得た魚のように吹けるようになった。頬筋の支えとなっていた臼歯部の歯槽骨と歯が減ってしまった分を補うことで、以前の筋肉バランスに近づいたのだと考えている。

しばらく練習をした後、レジンで最終的な臼歯部用アダプターを作り現在も使用中、演奏活動に復帰することができた。MFTとクリーニングで定期的に通院していただいており、だんだん調子が上がっているようである。
ジストニアと判断した演奏の不調も、歯や歯並び、歯槽部の変化によってアンブシュアが変わってしまったことが原因(あるいはきっかけ)であることは多いのではないかと思う。

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臼歯の歯肉が下がり歯がすり減っている。青いのはシリコン。(その後レジンで作製しなおした)

 追記:金管楽器でジストニア風な不安定なアンブシュア・音の揺れについては、「アパチュアの大きさが適切でない」ことが原因なことが多いではないかと思っている。その楽器に合ったアパチュアではないと、音が安定しない。つまり楽器を変えた、あるいは歯や演奏時の顎位が変わってしまったのが原因になるのではないかということ。加齢により顎は開きにくくなる。多くは歯の開きが狭いことで音が不安定になるので、しっかりロングトーンなど基本練習をして音が安定するアパチュアを探し身につけることが根本解決策だと思う。

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November 16, 2019

ジストニアの予防

少し前になるが「第9回日本音楽家医学研究会」に行ってきた。といっても新響の練習と被ったので最後の一演題のみ聞きました。「逆説的にジストニアから学ぶ、ゆるくても効率的な奏法・練習法」という、ピアニストにして神経内科医の方のお話でした。
ジストニアが起こる機序を神経内科的にわかりやすく説明され、投薬やボトックスといった治療よりも装具や楽器の工夫の方が改善を見込め、普通に練習をした方が自覚改善度が高いこと。近年大脳基底核の凝固術が行われているが良い成果が上がることは少ない。一度なってしまうと決定的な治療法もなく治癒が難しいので、予防が大切でありどういった練習の仕方をすればよいか・・・ピアニストとして若い時にコンクール入賞や一流ホールでのリサイタルを行い、卒業後は医学に専念するも、現在は医師として働きながら演奏活動を行っているという音楽家の言葉はとても説得力があった。

ジストニアは大脳基底核の機能障害である。運動は感覚入力によって表現されるが、感覚野のマッピングが重なってしまい、近くの神経や似たような動作が抑制されなくなるという現象らしい(間違っていたらすみません)。
予防としては、overuseをしないこと、特に痛みがあるときに無理に練習しない。長時間の反復練習をしない。イメージトレーニングを活用する。運指の固定や曲の理解によって練習の無駄を省く。使う筋、使わない筋を選択し、個々の筋について使う・休む時を考える。感覚入力を意識する、すなわち音を聴く・筋肉関節の状態を感じ取る。

ピアニストの手のジストニアの予防のための話であるが、管楽器にも当てはまると思う。よく聴きよく考えて練習することは、当たり前のようで、神経内科的見地からも大切である。

管楽器のジストニアについての記事はこちら(2017年)

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November 12, 2019

くちびるのケア

金管楽器を吹く人には、リップクリーム塗る派と塗らない派があると思う。私は塗らない派である。普段から基本何も塗らないし荒れない。

私は元々唇が痛くなることはないし、奏法見直して口の周囲の筋肉がバテることもなくなったし、吹き過ぎると痛くなった首や背中もコントロールできるようになったが、しかしここ数年気になってきたのが、唇がツルツルというかテロテロというか一皮剥けたに感じになること。前日のリハからずっと吹いていると本番の時にいつもと違う感じになってしまい、不安になってリップクリーム塗るとさらに違和感でなんか調子が悪くなる。きっと齢のせいだ、新陳代謝の低下か。

くちびる(ここでは赤唇部といって表側の赤い部分のことを書きます。通常口唇は口裂上下の動く部分をいいます。)は、皮膚と粘膜の移行部であり、その中間的な性格を持っている。粘膜と違って角質層はあるが皮膚と比べて角質層が薄く、皮膚と違って汗腺や皮脂腺がない。ターンオーバーとは表皮の細胞が生まれ変わるサイクルであるが、皮膚では4週間のところ、くちびるは1週間ほどである。
楽器演奏の刺激で角質が剥離して表皮の新生が追い付かないという状態なのかと思う。そこで、くちびる専用美容液を使ってみている。といってもたまにではあるが、使うようになって今のところツルツルテロテロで困ることはなくなった。

これは宣伝になってしまうのだが、私が加盟しているホワイトエッセンスでは自社ブランドのリップ美容液を3種類出していて、理想的には3つとも使うといいのだろうけど、私はそのうちのコラーゲン生成を促進するものを使用している。もし試してみたいということであれば「ホットリップエステ」というメニューがあって、マッサージしつつ3つの美容液を効果的に作用させるので、ターンオーバーに合わせて1週間ごとに1か月くらい続けて受けてもらうと、かなりくちびるのコンディションは良くなると思う。
リップクリームは物によっていろいろな成分が入っていて期待できる効果もそれぞれなのだろうけど、基本的には保湿が目的である。くちびるは汗腺や皮脂腺がないので乾燥しやすいから。しかし、くちびるが荒れている人やリップクリームが手放せない人の多くは、いつも口を開けているかくちびるを舐める癖がある。くちびるのコンディションを良くするためにも、もし口呼吸をしているようであれば改善すべきである。

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November 05, 2019

咬み合わせと聴力

少し前の話になるが、「オージオバイトチェッカー」のデモンストレーションをしてもらった。簡単に説明すると、聴力を調べることで咬み合わせをチェックすることができるというシステムである。私にお金が余っていれば導入したかもしれないが、咬み合わせのチェックは直接歯を見てできるし、場合によっては普通の聴力検査機を買えばよい。またの機会にすることにした。

左右それぞれ7つの音の高さについて、小さい音から段々大きくしていって、聞こえ始める一番小さな音の大きさを記録する。各音の高さで水平になっていれば咬み合わせのバランスが良い。音の高さそれぞれに歯の位置に相当し、高音域ほど前歯、低音域ほど後方の臼歯の状態をあらわし、良く聞こえない部分は強く噛み過ぎ、過敏な部分は噛んでいないという判定となる。
例えば高音域が聞こえが悪ければ前歯に噛み癖があり、低音域の聞こえが悪ければ臼歯が強く当たっているということになる。左右差があれば片噛みの癖がある。じゃあ噛んでなければ良いかということではなくバランスが重要なのだそうだ。咬合状態は見ればわかるものであるが、この検査は動的な咬合(噛み癖)を判定するということである。

聴力に影響することはおそらく多くの要素があり、聴力検査結果が必ずしも咬合状態とイコールではないとは思うが、相関関係はあるのだろう(いくつかの科学的根拠があるようだ)。
音楽家にとって聴力はとても大切なことだ。突発性難聴で休業するプロ奏者も少なくはない。中には咬み合わせの問題が関連していることもあるかもしれない。前々から私は管楽器演奏時の顎位や姿勢によって聴力の問題が出ることもあるのではないかと思っていたが、おそらくこれと関連があるのではないかと思う。歯ぎしりで突発性難聴になるというのもそういうことであろう。
咬合状態だけでなく、無理のない顎位で演奏することと、舌を挙上して口の広さ保ち歯ぎしりなどしないようにすることが、聴力を悪くしないポイントの一つかもしれない。

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November 04, 2019

前歯の治療を甘く見てはいけない

金管楽器を演奏している人は前歯の治療には慎重になることが多い。多くの場合は普通に治療をすれば、多少吹きにくい時期はあったとしてもアンブシュアが適応してそのうち吹けるようになる。歯の形や位置には理由があるから、そうは違わない歯の形になることが多いからだと思う。しかしその変化に適応できず、中には納得いく演奏ができずに悩む人もあるだろう。
だから可能な限り最小の変化での治療をし、全体を補うのであれば以前の歯型に近づける(仮歯の時点で試奏して形を決めそれを元に補綴物を作る)、場合によっては折れた歯をそのまま戻すなどの工夫をする。

3年前にアマチュアのトランペット奏者に折れた上顎中切歯を戻した話を書いた( 「折れた歯を戻す その2」)。ほぼ同じ歯の状態に戻したのだから、楽器持参ではなかったが問題なく吹けたはずだ。しかしながらツギハギの歯だったので、最終的には全体を被せた方が良いと話したのだと思う。
それが欠けてしまい他院にて治療中だが全く吹けなくなった、明日本番なので何とかしてほしいと来院された。見ると仮歯(レジン冠)の代わりにデュラシールというレジン系仮封材を丸めて両隣の歯にとめてあった。短いし膨らんでいるのでそれは吹けないだろう。きちんとした仮歯を入れない医院もあるのだ。
10日後には新しい冠が入るというので、デュラシールの膨らんでいる部分のみ削り充填用のレジンを盛り足した。私が思う金管楽器が吹きやすい形態にし試奏して問題ないというので終わりにしたが、家に帰って吹くと吹けないという。そこで3年前の写真を参考に歯を斜めにして内側を削り吹けるようになった。 前回は治療後問題なく吹けたからといって、なぜ本番直前にしかも他院で治療を受けたのか・・・。

3年前の治療後の写真(今回の写真はないです)
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まず言えるのは本番直前の前歯の治療はリスキーであること。通常は普通の歯の形、歯並びにすれば、慣れるのに時間がかかるかもしれないが、吹くことは可能である。しかし、この人のような歯が捻転していて息の通り道ができている人は、それが塞がってしまうと吹奏感が大きく変わるので、どうするかはよく相談した方がよい。

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November 03, 2019

金管楽器と舌小帯

舌小帯というのは舌の下にある口腔底と舌を結ぶ膜というか紐のようなもので、誰にでもある。「舌小帯が短い」ことを舌小帯短縮症あるいは舌小帯強直症という。昔は乳児で舌小帯が短いとうまく母乳を飲めないので簡単に切っていたし、その後も発音障害の改善の妨げになるので、舌を出して中央が凹むハート形になる、目安としては舌を口蓋に吸い付けた時の開口量が最大開口量の1/2以下なら切るとよいとされていた。 舌小帯が短いこと自体は歯列不正の原因にはならず、舌の機能的な問題があると短くなるように思う。だから、舌小帯切除術はあまりおこなわれない傾向になってきた。

舌小帯が短ければ舌が前方に突出する癖もないし、舌小帯が短くても安静時に舌を口蓋に付けることは可能であるが、以前にも紹介した筋機能療法のレッスンを行うのは難しい。短い舌小帯を切る手術自体はとても簡単で、よく芸能人が滑舌をよくするために大手術をしたみたいな記事になっているけれど、ちょっと麻酔してちょっと切るだけ。当院ではレーザーを使うので縫う必要もない。歯列には影響がなくても舌の動きに問題があれば切ることを考えてはどうかと私は思う。(切る前後に舌を挙上するトレーニングを必ず行ってください。)

管楽器演奏の場合、タンギングに少なからず影響が出ることがあるはずだ。しかし舌小帯の短い人にはタンギングが出来ない(遅い、汚い)自覚症状はあまりないようだ。なぜなら、舌小帯の短いままキレイなタンギングができるアンブシュア、つまり舌の可動域が狭くても大丈夫なように口を狭く(顎を閉じて)吹いているのだと思う。

金管楽器ではもう一つ問題がある。音域によるアンブシュアの変化の重要ポイントに、高音域ほど舌の後方部を挙上する、低音域ほど下顎前歯の後方に空間を作ることがある。いずれも舌の可動域が大きくないと難しい。

つまり舌小帯の短い金管楽器奏者の特徴として、少々横に引き気味のアンブシュアで、場合によっては音が揺れる、特に高音域・低音域で大音量が難しいことが予想される。過去に当院で切った人の治療前の演奏時のレントゲンを見ると歯の開きはとても狭く、切ると高音域が楽に出るようになったという感想をいただいた。

こちらは2011年9月の記事で紹介した音域による下顎と舌および舌骨の変化。当時の芸大生(ホルン)のものである。先生によればまだ改善の余地があるということであったが、典型的な舌の動きであると思うので参考にしてください。

 

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October 22, 2019

MFTの現実

以前に矯正歯科における口腔周囲筋機能療法(以下MFT)と、それを管楽器演奏にどう活かせるかという話を書いたが、先日日本筋機能療法学会大会の講演を聞いた。その中で、矯正歯科におけるMFTは口腔機能の改善を目的としているのではなく、歯列と周囲の筋肉の均衡が取れればよいという話があった。機能的に問題があっても困ってなければ直す必要がないということを言っていたのだと思う。
歯科診療はボランティアではないから、確かに本当に必要なことのみすべきなのであろう。昨年から「口腔機能発達不全症」という病名が付いて保険適応になった。とある矯正歯科専門医院では矯正治療中の患者でも保険で算定しているという話もあった。(おそらく、混合診療禁止というルールの中では認められなくなる可能性はあるであろう。)通常はMFTは1回3千円とか場合によっては基本料の追加分をいただいているかもしれず、金銭的にも時間的にも患者さんに負担がかかり、保険ともなれば財政にも負担がかかる。もちろん歯科医院側にも負担がかかる。
もしかしたら当院では、そういった観点では必要のない患者さんにも行っているのかもしれない。しかし、多くの症例でMFTを行うことにより矯正治療がきれいに早く進んで、その後安定することは確かだと私は思う。何より口腔機能を改善することで、その患者さんの幸せや将来の健康につながるのであれば、口腔機能に問題が少しでもあればやりたいと私は思う。特に当院では管楽器奏者の患者さんが多いわけだが、MFTの話をすると、演奏上の悩みに通じるようで積極的に取り組んでくださる。
当院では、MFTの費用は原則いただいていないし(通常の治療費に含んでいる)、専用のスペースもあるし、私は治療は早いしブラケットの脱離も少ないし皆きれいに磨いてきて歯磨き指導に時間を取られないから時間はあるし、ちゃんと講習会を受講してMFT大好きという衛生士さんが2人いるし。だから、そんなことを言っていられるのだとは思う。

他の矯正歯科医院で治療中あるいは治療済という患者さんが先週2名来院したのだけれど、あきらかに舌癖があって、1人は治療が長引いて直らない、1人は装置が壊れて後戻りを始めていた。聞くと舌のトレーニングはやったことがないという。MFTは矯正歯科の中ではかなり認知されてきたと思っているが、まだまだ専門医院でも取り組んでいない所が多いのが現実のようだ。

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May 26, 2019

早期教育と早期治療

日本では管楽器を始めるきっかけが中学の吹奏楽部ということがほとんどなので、多くは13歳、早くても小学校高学年から管楽器演奏の経験がスタートするのが現状ではないかと思う。しかし、海外のトッププレーヤーの経歴を見ると、7~8歳から管楽器の勉強を始めていることが多いようだ。

管楽器は口腔の機能と口腔周囲の筋肉を使って演奏する。上達のポイントとなる筋肉の中には、管楽器演奏の本流といってもよい独墺の言語を発音するために使われるが、日本語ではあまり必要としない筋肉がある。そういった筋肉をゲルマン語を話す民族は生まれながらに使っており、管楽器演奏を習得しやすいという。ドイツの「管楽器の早期教育プログラム」は、さらに管楽器演奏に必要な筋肉・口腔機能を強化し、将来の管楽器演奏のための基礎を作るのが目的なんだろう。早くに導入したある非ゲルマン語国では、すでに多くの世界的奏者が生まれているそうだ。日本でも、将来世界に通用する奏者を育てるために、そのプログラムの試験的な実施が始まった。

そのプログラムは、矯正歯科で行っている口腔周囲筋機能療法(MFT)に似ているものがベースになっているようだ。食べる、飲み込む、話す、口を閉じるといった生活をしていく上での基本的な機能ができていないとすれば、それは管楽器を吹くかどうかにかかわらず早期に改善すべきであり、もし将来管楽器を演奏したいと思うようになった時のための土台は親が作ってあげてほしいと思う。そういった機能と歯並び・顎の形態は関連しており、歯並びに問題のある子どもの多くは機能的にも問題がある。

だからこそ、矯正治療は早いうちに受けた方がいいと思うのだが、歯科医から永久歯がそろってから(だいたい13歳以降)治療しましょうと言われてしまうことが多く、最近増々そういう傾向がある。エビデンスとして、1期治療(おもに7~9歳くらい)をやってから2期治療をやっても、1期治療をやらないで2期治療をやっても、結果は同じ(形態的な数値)だから、1期治療はやるべきではないとまで言われている。
対象が多くなり数字としての差は消えてしまうのかもしれないが、1期治療をやってよかったという経験は山ほどある。管楽器教育に絞って考えても、口腔機能の改善は早いうちの方がよいし、固定式の矯正器具(ブラケット)を付けるにしても、13歳以降より小学生のうちの方が影響が少ないことは明らかである。実際矯正治療をすべき状態の管楽器演奏家は、矯正治療を親が受けさせようと思った時には吹奏楽部にいて治療ができなかったという人が多い。

まだ小学生だけど将来管楽器をやらせたいという方は、早期治療を検討してみてはいかかでしょうか。

 

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April 14, 2019

中学生の相談

先日中学生が相談に来院した。当院の近所にお住まいで、当院の近くの一般歯科医院で矯正治療を始めたが、トランペットが吹けなくなったというご相談であった。話を聞くと、小学生の時に側方拡大をして様子を見ていたが、仕上げとして上下の前歯にブラケット装置を付けたということであった。担当医にはトランペットを吹いていることは話をしたのに、よくわからないけどとりあえず付けてみましょうと言われて治療を始めたということであった。私からは以下のような話をした。

矯正治療の方針について。正直今の状況で治療を進めても、よく噛まないし前歯が前に出て増々口唇が閉じにくくなるし、トランペットは更に吹きにくなる。検査をした上の話であるが、何本か歯を抜いて(元々1本足りない)きちんと直した方がよいし、トランペットも吹きやすくなる。

治療開始時について。吹奏楽部の中学3年生(装置を付けたのは中学2年の2月)は、これから自分がメインで活躍していくという時期。ブラケット装置をつけるのであれば、少なくとも今の時期ではない方がよい。トランペットが好きでずっと吹いていきたいのであれば、中学3年のコンクールが終わってから、あるいは高校に入ってから始めた方がよいのではないか。高校によっては矯正装置が付いていると希望パートにならない可能性もあるので、それも考慮した方がよい。

矯正器具について。付いている装置は透明の比較的大きいブラケット装置。当院であれば、二回りくらい小さくて薄くて角の丸い物を使うなどをするので、今よりずっと吹きやすいし、前歯にブラケットを付けずに治療する方法もあるので、トランペットを続けながら治療ができる。

よくある一般歯科医院の矯正治療のように、矯正歯科医は月に1回しか来ないということで、すぐに対応してもらえないならその医院の院長に話して今すぐ装置を外しましょうかと話したら、とても律儀な方で今の矯正の先生には親切にしてもらったので、次回受診時に相談しますとのことであった。
こうして好きな楽器が吹けなくなってしまう中学生が、世の中にたくさんいるのかなと思ったとともに、こんな近所の人にも(患者さんも歯科医師も)情報が伝わっていないのかと反省をした。

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April 09, 2019

管楽器奏者の理想の歯並び

私は年に1回くらい「管楽器歯科」などのキーワードで検索をしてみる。上位にくるサイトは変わり、私のサイトは出てこなくなってきた。管楽器歯科と標榜している歯科医院さんも増えている。とある矯正歯科医院の運営する情報サイトの「管楽器奏者の理想の歯並び|矯正治療でより美しい音を」という題名の記事が上位にあった。あれ、管楽器に詳しい矯正歯科医がいるのかと読んでみると、当「管楽器奏者の歯のためのページ」の記事として2001年に掲載した「金管楽器演奏に有利な歯並びは?」の内容の丸パクリでした。コピペならまだいいが、言い回しをそっくり変えて別の記事に仕立てられ元記事と違って矯正治療を勧める文章で閉められていた。SEO対策のためのプロが手掛けるサイトだから閲覧される機会も多かったであろう。(現在は削除されています。)

まずは著作権の問題。ライターさんがネットで情報を集めて書いたのだとは思うが、引用元も載せずに言い回しを変えるだけなんて!私もコンテンツSEOとしてコラムを外注していたので業者さんに聞いてみると、その世界では当たり前のことのよう。なんてこと!
また、この記事は一般的な話ではなく私のオリジナルな考えであり、2001年当時の「現時点で考えていること」「結論ではない」として掲載しました。なのに、あたかも定説、一般論のように書かれていた。その記事は2017年に掲載されて1年半もの間にもしかしたら記事の内容が独り歩きして、歯科医師が矯正治療を勧める根拠にして不要な矯正治療が行われたかもしれないと思うと、とても心配。

当院に少し前に来院されたフルート奏者は、他院で長年矯正治療をして外したはいいけど、下顎歯列のスピーカーブが強く上の前歯が上過ぎて、これじゃあ吹きづらいだろうという歯並びであった。前の矯正歯科医院ではこれで良いと言われたとのこと。おそらく治療前の方がずっと吹きやすかったはず。矯正歯科的に「あり」な歯並びであっても、管楽器奏者にとっては「なし」なこともある。きちんと直せば大抵は楽器を吹くのに都合が良くなるだろうが、直し方によってはそうではないこともある。以前にもなんでこんな方針で直したんだろうな、これでは吹きにくいだろうという矯正治療後の歯並びに何度か会ったことがある。
演奏にとっての良い歯並びは、人それぞれであって歯科医があまり言うべきではないと考えているが、矯正治療をする上で管楽器を吹くために外せないポイントというのはあると私は思う。そういう不幸な人が増えないようにするためにも、私のサイトが上位に来るように対策せねばいけない。

 

アーカイブとして残してあった2001年の記事はこちら
http://www2s.biglobe.ne.jp/~ohara/teeth/hanarabi.html

 

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