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インビザラインをはめて吹くか

最近はインビザラインが普及していて、テレビに映る芸能人でもこの人してるなという人を見かけるし、一般的になっているんだと思う。インビザラインとは取り外し可能な治療方法であるマウスピース型矯正装置の中でも世界的にシェアの大きいものである。

管楽器をよく知らない歯科医師は、インビザラインなら管楽器が吹けますよ、と言うのではないかと思う。実はインビザラインは120時間使用、2週間ごとの交換を前提に設計されているはず。しかし講習会などでは、患者さんに20時間を守ってもらうために22時間と指示をするべきと言う先生も多い。頑張れば20時間使用しても2~3時間練習できるけど、さすがに22時間はめないといけないとなると練習できないから装置を着用したまま吹かざるをえない。また、交換を7日あるいは10日にするのが一般的になってきていることもあり、毎日22時間使うよう歯科医院から強く求められる(怒られる)だろう。

私のところではどうしているかというと、基本ははめたまま吹くことを勧めないが、試しにはめたまま吹いてみてくださいと言う。当院では多くのプロ奏者(プロオケ正団員もそれなりにいる)のインビザラインやそれ以外のマウスピース型矯正装置を使って治療を行っているが、結果ほとんどの人が外して吹いている。プロオケ奏者は使えるのは115時間くらい、忙しいと15時間も難しい。音大生で頑張って18時間平均というところか。私は使用時間を長くするようリクエストする代わりに交換頻度を下げる。つまり毎日20時間確実なら10日ごとの交換のところ、18時間ならば2週間、15時間ならば3週間としている。管楽器奏者は、むしろゆっくり直したい(アンブシュアを適応させるため)という人もいる。

インビザラインの厚さは約0.5mm。裏表に少々の空隙(いつもぴったりとは限らない)を加えてすべての歯が1mm以上厚くなる。0.5mm歯が長くなるので、同じ位置で楽器をくわえたり(リード木管楽器)、同じ歯の隙間を作る(金管、フルート)ためには1mm以上顎を開く必要があり当然筋肉のバランスが変わる。歯の切端の形は金管楽器を吹くうえで重要だが、それも被われてしまう。当院で、はめて吹いているという人はクラリネット数名とホルン1名のみであった。

早く歯並びを直したいがために覚悟を決めてのインビザライン使用での演奏と思う。確かにクラリネットでは影響は少ないとは思うが、歯が1mm長くなるのと同じなので口の中が広くなりタンギングがうまくできないという人もいた。金管の場合、吹けなくはないが音色が変わる、それを許容範囲と思えるかどうかである。柔らかいぼやけた音になる。少なくとも私には無理と思った。金管のアタックは、口唇のアパチュアの開閉である。つまり舌から口唇までの距離が1mm長くなるので同じ感覚で吹くと音の反応が遅くなる。切縁を被い角が取れ隙間が塞がれると、息のスピードが単調になり、華やかさ煌びやかさがなくなるのだろう。当院ではフルートではめて吹く人はいないが、フルートでは金管楽器と同じ様なことが起こるのではないかと想像している。

(上級者向けの話です。そこまで気にしない人はどうぞはめたまま吹いてください。)

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