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November 2018

November 28, 2018

管楽器演奏と嘔吐反射

もう1か月たちますが、毎年開催される日本矯正歯科学会学術大会に行ってきました。学術展示の中に管楽器に関係する発表がありましたので紹介します。

「水泳・管楽器経験者における印象採得時に伴う嘔吐反射の発生率調査」

印象採得というのは歯科治療でのいわゆる型取りのことで、矯正治療をする場合必ず模型を作成するので印象採得をするのですが、これでオエッとなることが予測できないかということで、生活習慣として水泳と管楽器演奏に目を付けて調べてみたということ。
結果は(管楽器についてのみ書きます)管楽器経験あり9名中嘔吐反射あり0名、管楽器経験なし91名中嘔吐反射あり25名。管楽器経験なしで優位に嘔吐反射を誘発した。管楽器演奏が鼻呼吸を促すこと、異物が口腔内に入ることに慣れているためではと考えたということであった。

・まず、嘔吐反射の起きる率が高すぎなのではないかと思った。当院ではせいぜい年に数回である(当院の衛生士さんの自己申告)。嘔吐反射が起きるかどうかは術者の力量によるところが大きい。

・対象者の年齢を聞いたところ、管楽器経験者はほぼ中高生ということ。調査全体の対象者は4~52歳ということなので、10歳代と幼児や中高年を比べるのは変だと思った。普通に考えてちびっこや中高年の方が嘔吐反射出やすいだろう。比較するなら管楽器経験なしのうち中高生だけに絞って比較すべきではないか。

・管楽器奏者で嘔吐反射が出ないのは、低位舌でないからと考えたとのこと。いや、管楽器演奏は口呼吸を誘発することがあるし、特に成人してからの管楽器奏者には低位舌は多いと感じている。当院でも管楽器吹いていて型取り嫌いな人はいます。(気持ち悪いから嫌いと言いますが、嘔吐反射が出るわけではないです。)

目の付け所は面白いと思うけど、嘔吐反射を起こす人にどう対応するかではなくて、嘔吐反射を起こさないようにどう印象採るか考えればよいのにと思ったのでした。そこの医院では約半数に嘔吐反射が起こるそうで、たぶん使っている印象材が軟らかいタイプであることも一因ではないかと。(余計なお世話ですみません。)

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November 15, 2018

歯を失う原因

管楽器奏者にとって歯を失う事は演奏家生命を脅かすことであり、少し前まで歯を失う原因の多くは歯周病だったのではないかと思う。しかし、当院に来院される方は皆さん歯をきれいにしている人がほとんどで、虫歯や歯周病で楽器が吹けなくなる人はもうあまりおらず、歯の咬耗や破折などの問題で吹けなくなる人が多いのではと考えていた。

80歳で20本以上の歯を有する割合は、25年前は約10%だったが、現在は50%を超えた。歯周病で多くの歯を失う人は減り、義歯なしで過ごしているお年寄りが増えたと言ってよいのではないかと思う。しかし、厚労省の調査結果によれば「日本人の30歳以上の8割は歯周病」だそうだ。何をもって歯周病とするかであるが、調査では歯肉のポケットに探針をいれて血がにじむと歯肉炎で、ポケットが深いと歯周炎ということなのだろう。結果を見ると歯周病の半分くらいはごく軽いものも含めて歯肉炎で、もう半分はなりかけも含めて歯周炎という感じだ。

少し前だが、アマチュアのトランペット奏者で重度の歯周病の方が来院された。前歯が抜けてしまったので、楽器を吹くためによい方法を相談したいということであった。年齢はまだ50代。口の中には何本かの歯が存在していたが、動揺が大きく歯垢と歯石が多量についている状況であった。レントゲンを撮るまでもなく抜歯が必要と思われた。話を伺うともう5年以上も前から歯周病を自覚していて、その頃から他の歯科医院ですべて抜歯して総入れ歯が必要と言われていたとのこと。でも、まったく歯周病の治療は受けていなかった。この状態になってもなお、管楽器をわかる歯科医院での治療を希望されたが、その方の近所で知人の歯科医院を紹介した。まずはきちんと治療に通うことが必要と思ったから。
歯周病は歯が抜けるだけではなく、全身の疾患に関連があることがわかっている。歯周病菌により血管を詰まらせ心筋梗塞や脳梗塞のリスクを上げる、糖尿病を悪化させるなどなど。管楽器演奏以前に、そのような口では自分の寿命も危なくなるのだ。

気持ちはわかる。昔歯医者で痛い思いをしたとか、歯の治療をして吹きにくくなったとかがきっかけで、歯科医院に行きたくないし行くにしても管楽器を理解している歯科医師でなければ治療を受けたくないという人は、今までに何人か来院されたことがある。
今は歯科医院は多く患者側にも選択肢がある。優しく痛くないことを心掛けている歯科医院はいっぱいある。通いやすいことは大切と思うので、まずは自分に合うところを見つけて通ってほしい。

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November 08, 2018

7番用アダプター

年齢を重ねると、7番(第2大臼歯:つまり一番後ろの歯)を何らかの原因で失う人は多い。一番後ろの歯が無くなった場合の一般的な治療法は、延長ブリッジかインプラントになるが、対合歯がなければ特に補わずに放置という人が多いかもしれない。それが演奏にどう影響があるか、人によるのではないかと思う。

プロオーケストラで長年演奏されているホルン奏者が来院した。1年ほど前に7番を抜歯することになりどうしたらよいかという相談にいらしたが、たぶん私はまずは歯科治療を受けてくださいといった話をしたんだと思う。
その後、欠損部位に一本義歯を保険治療で作製して使用していたとのこと。音が不安定で高音域が厳しいという状況であった。すぼめるようなアンブシュアであったが、元々は少し引き気味だったのにすぼめないと吹けないということであった。
そこで、以前に親知らずを抜歯した後に作製したアダプターを応用して左右の頬側にアダプターを作った。上顎は片側のみの7番欠損、下顎は両側7番欠損であったが、安定感やアンブシュアへの影響を考えて、まずは上のみに入れてみることにした。アンブシュアは改善し期待が持てるような結果となった。

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November 07, 2018

管楽器奏者のジストニア その後

2017年1月頃に管楽器奏者のジストニアについて記事を書いた。

その中で、ジストニアと思われるクラリネット奏者に6mm高さのアダプターを使用することでアンブシュアが安定した話を書いたのだが、実は写真のように、顎全体にはめる大きな物でだった。臼歯部を噛んで吹くためであった。
その後1年半ほどしてアダプターを新しく作ったのだが、結局普通のアダプターにすることとなった。下の前歯が咬耗しており、その短くなった分を補う程度の小さなアダプターでよくなった。かなり改善したと考えてよいかと思った。

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ちょっと前になるが、ジストニアの経験者というプロのトロンボーン奏者の方からメールをいただいた。簡単に言えば、金管楽器奏者の歯を削るな矯正治療もするな、演奏の不調は歯の問題ではない、自分は10分の指導で良い音にできる。私は、演奏の不調を歯を削ったり盛ったり動かしたりして改善しようとしているわけではなく、元のあるべき姿の歯の形に戻すといった方が近い。中には、この歯並びでは楽器を吹くのに苦労するだろうという歯並びも存在し、治療して夢のように吹きやすくなったとおっしゃる方も大勢いる。私の経験やアンブシュアについての知識のソースを説明し、何とか矯正治療を行うことについては納得いただいたようだ。


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