« March 2018 | Main

April 2018

April 09, 2018

上顎前突のアンブシュアのタイプ(金管)

どうも上顎前突の金管楽器には2種類のアンブシュアが存在しているようである。

一つは上の前歯の唇側面にリムが乗るアンブシュア(水平タイプ)で、もう一つは上の前歯の切縁にリムが乗るアンブシュア(下向きタイプ)である。乗る乗らないといっても口唇が介在するわけで、リムの支点とでもいえばよいだろうか。
一般的に上顎前突とは、臼歯で噛んだとき上の前歯と下の前歯の前後的な位置の差が大きい状態(正常は2~3mm)をいうが、多くの場合は上顎前歯が前に傾斜しており、さらに下の前歯も傾斜している(上下顎前突)ことも多い。日本人によくあるパターンの咬合である。

顎を楽に開けた状態で上下の前歯が一つの平面になるのが、ある意味金管楽器を吹くのに理想的と言ってもいいんじゃないかと思う。この場合は普通に上の前歯の唇側面にリムを乗せることが可能である。

1804091

しかし上顎前突ではそうもいかない。下顎を無理に前方に出して上の前歯の唇側面に乗せるか、下顎は楽な位置で上の前歯の切縁に乗せるかどちらかになるのだと思う。
ちなみにトロンボーンなどではリムが大きいので下顎を出さなくても唇側面に乗るためか、トロンボーンで後者のタイプの人にはあまり会ったことがありません。

1804092 1804093

(上記の図は同じ歯の傾きにしてあり、水平タイプは下顎を前方に出し、下向きはあまり出さずにアンブシュアを作ったときを想定して書いています。下向きタイプの図の点線は側切歯で、側切歯の切縁辺りに乗ることになるかと思いますが、リムの大きさや当て方によってはその限りではありません。)

上顎前突の2つのアンブシュアパターンにはそれぞれ利点欠点があるのだが、レッスンについたり専門的に学ぶ過程で、唇側面に乗る水平タイプに直されて、かえって元々の奏者の良さが消えてしまうことも多々あるのではないかと思う。
矯正治療をする上での注意する点としては、元々下向きタイプの人が上顎前突を改善すると思うように吹けなくなってしまうことがあるので、是非矯正治療中もコンスタントに楽器の演奏を続けてもらいたいし、矯正治療の時期も考慮した方がよいこともあると考えている。

注:便宜的に水平タイプ、下向きタイプとしたが、全くの水平とは限らないし極端に下向きでもないです。

つづく

| | Comments (0) | TrackBack (0)

April 06, 2018

管楽器奏者の筋機能療法(MFT)(3)

口腔筋機能療法の概要については、もう20年近く前に「管楽器奏者の歯のためのページ」に掲載してアップデートしていない(レッスン2でとまっている)のだけど、まずそちらを読んでいただきたいと思います。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~ohara/muscle/mft.html

舌突出癖、低位舌、口唇閉鎖不全であれば、不正咬合と関連し、きちんとプログラムに沿って指導を受けてトレーニングすることをお勧めしたいが、中には正しくはこういうものだということを知るだけでも舌位が改善する人もいなくはないのでお伝えすると、何もしていないとき「舌は口蓋(ウワアゴ)に付け、歯は噛まずに開いて、口唇は閉じて鼻で息をする」をまず実践してみてほしい。

アンブシュア強化のためのトレーニングとして3つ紹介したいと思う。

1)ボタンプル:直径2.5cm程度の薄いボタンを用意し、タコ糸のような紐を通します。前歯と口唇の間にボタンをはさみ紐を前方に引っ張ります。基本は臼歯は噛んで紐は水平なのですが、アンブシュア強化には臼歯は少し開けて紐は少し下向きの方がよいかもしれません。応用としてはボタンを2個用意して左右に引っ張るのも効果的です。
主に下唇が下顎歯列に密着する力を強化します。音質の向上につながり、いわゆる「下あごを張れない人」にも効果があります。

2)風船トレーニング:一般的に手に入る普通のゴム風船を用意します。これを手を使わずに膨らませます。吹き口がロールしていてここに前歯を引っ掛けると簡単ですが、あえて引っ掛けずに口唇だけの力で保持します。一息膨らませたら口唇を閉じたまま鼻で息を吸ってまた膨らませます。
主に口唇を閉じる力を強化しますが、頬筋や呼吸のトレーニングにもなると思います。息漏れの解消や音の安定につながります。

3)オープンアンドクローズ:舌全体を上顎に吸い付け口を大きく開けて舌の下のヒモを伸ばします。次に吸い付けたまま奥歯を噛みます。開いたり噛んだりをゆっくり繰り返します。
注意点としては、舌の先が上前歯のすぐ後ろにあること、舌の前の方だけでなく後も吸い付いていること、舌が上の歯を覆わず上の歯列の内側に収まること、左右対称に吸い付けること。また、口を開けるときは、下顎が前に出たり横にズレたりせず、まっすぐ開けます。
アンブシュア強化のためには舌後方の脇を意識するとなお良いと思います。主に舌を挙上する力を強化します。ダブルタンニングや息のコントロール(特に高音域)に効果があります。

これら3つの力は、金管楽器だけでなくどの管楽器にも必要な力でしょう。
正直いうと私自身は基本は楽器の練習の中で筋肉を鍛えアンブシュアを作るべきと思っていますが、元々足りない人には効果があるかもしれません。私はときどき風船トレーニングをやっています。

※個人の感想であり、効能を確約するものではありません。。。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

April 03, 2018

管楽器奏者の筋機能療法(MFT)(2)

管楽器の演奏を始める年齢は、日本の場合圧倒的に中学生からが多く、早くても小学4年生なのではないかと思う。弦楽器やピアノに比べ開始年齢の遅い管楽器に対し、早期教育の必要性が言われ始め、「東京芸大早期教育プロジェクト」などいろいろな試みがされているようである。

日本人が管楽器演奏で大成しにくい原因として、言葉の違いがあるのではないかと聞く。日本語はドイツ語などに比較して、口唇より上の筋肉や舌後方の筋肉などをほとんど使わない。こういった筋肉が金管楽器演奏には重要なのだと。ドイツ人などは管楽器を勉強する前からこういった筋肉が発達するから、苦も無く良いアンブシュアを習得できるということらしい。だから、単に早くから専門家によるレッスンを受けるだけではなく、正しいアンブシュアの習得と、そのための筋肉のトレーニングが必要ではないかということである。

私が思うに、日本人の場合、口を閉じる、咀嚼する、嚥下するといった機能自体に問題がある子供の割合が多すぎる。おそらく欧米人の比ではないはずである。だが、それらの機能が弱くても生活は出来るし食事できるし日本語は話すことができるので、あまり問題にならないまま成長することが多いのである。管楽器の早期教育を考えるのであれば、まずはそういった日常の口腔機能を正しく行えるようにすることがまず大切なのではないかと。

歯科矯正での早期治療(多くは7~10歳くらい)については、効果が無いというエビデンスを元に、永久歯列完成後(12歳以降)に治療を開始すべきという方針の医療機関も残念ながら少なくはないようである。そんなことはない、早期治療をやるべき子供はたくさんいる。適切な時期に治療を行い口腔筋機能療法を行うことで、管楽器演奏にとって良い条件へ導くことはできるはずである。早期治療で良い効果が得られれば、永久歯列完成後の矯正治療をせずとも良い歯並びにすることができる。中学高校で始めると矯正装置自体が足かせとなり、矯正治療をあきらめるか管楽器をあきらめるかという選択となることも多い。早期からの管楽器教育を受けさせるのであれば、ぜひ歯並びや嚙み合わせも早めに問題解決した方がよい。

つづく

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« March 2018 | Main