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March 02, 2017

管楽器奏者のジストニア(3)

では、ジストニアとはどのようにして起きるかである。人間の動作は筋肉の収縮によってされるが、例えばある指を動かすとして、その指を曲げる筋肉と伸ばす筋肉があるように、動作には相反する動作があって、それぞれに働く筋肉が違う。その相反する筋肉が意思に反して同時に収縮してしまうと、硬直して動かなくなるか、痙攣をおこすというわけである。

前回の記事で紹介したクラリネットの人の場合、数年前の吹けない様子を見せてもらった記憶から想像すると、おそらく顎を閉じる筋肉と開ける筋肉が同時に収縮している状態だったのではないかと思う。
下顎の動きを行う筋肉は咀嚼筋と呼ばれ、開口筋と閉口筋からなる。それらのコンビネーションにより下顎は複雑な動きをするわけである。下顎運動は自分の意思で行う随意運動であるが、物を食べる際に口に食べ物が入ってから嚥下までの動作は意識せずに行われる不随意運動(反射)である。主な反射としては、下顎張反射(閉口反射)と開口反射がある。閉口反射は、閉口筋の急激かつ一過性の伸展により生じる閉口の反射。開口反射は、口腔粘膜や口腔周辺の皮膚、歯根膜に刺激が加わることで生じる開口の反射。
私の想像では、クラリネットをくわえる力が侵襲刺激と認識されて開口反射が起き、でもクラリネットを吹こうとする意志はあるので閉口しようとする。つまり、開口筋と閉口筋の収縮が同時に起こってガクガクし吹けなかったのではないかと思うのである。ちなみに開口反射は、閉口筋の抑制と開口筋の促進の両方で起こると考えられているらしい。それまで普通に吹けていたものが吹けなくなったのは、開口反射の原因となる刺激自体が強くなったのか、もしくは閾値が下がったのではないかと思う。

この人の場合、歯の摩耗具合から強いブラキシズム(歯ぎしり・食いしばり)が想像され、一つには前歯が短くなったことで、より演奏時に下顎を閉じる必要が出てきて閉口筋の収縮が過剰になったこと。もう一つは歯の摩耗により歯の刺激に対する閾値が下がったことも原因かもしれない。
話は変わるが、ブラキシズムが起きるのは、この開口反射が睡眠中は抑制されるためらしい。昼間口を開けている人には歯ぎしりをする人が多いというのはそういうことなのであろう。

今回、アダプターでジストニアに対する効果があったとすれば、演奏時の顎位を開いて閉口筋の収縮を抑えられることと、前歯の歯根膜への刺激が軽減されたためではないかと思う。

・参考文献
顔面・口腔領域に誘発される反射の変調について(新潟歯学会誌より)
http://www.dent.niigata-u.ac.jp/nds/journal/302/t302_yamamura.pdf

・口腔領域のジストニアに専門に取り組んでいる先生
京都医療センター歯科口腔外科
https://sites.google.com/site/oromadibulardystonia/

つづく

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