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January 17, 2017

管楽器奏者のジストニア

音楽家のジストニアが注目されるようになって10年くらいだろうか。

ジストニアというのは、「筋肉の緊張の異常によって様々な不随意運動や肢位、姿勢の異常が生じる状態」(日本脳神経外科学会のサイトより)をいう。管楽器奏者では、演奏時に限定して起こるアンブシュアや指の不随意運動(意思と関係なく震えたり動かなかったり)がそれにあたる。
全身性のジストニアと局所性のジストニアがあり、音楽家のジストニアはごく一部の症状なのでフォーカル(焦点)ジストニアとも言われている。脳性まひのように脳の病気で二次的に起こるものもあるが、それ以外は原因のよくわからない本態性ジストニアである。
治療方法としては、異常な動きをする筋肉にボツリヌスを注射して麻痺させる、あるいはその筋肉の運動神経を遮断する。全身性のジストニアには脳深部刺激療法といった治療法がある。

10年前は、半年といった長期間「まずは演奏を休む」ことが推奨されているようであった。ジストニアは反射であるから、その反射を中枢が忘れることが必要なのかと思った。
私の診療室にも、1~2年に1人くらいの割で、ジストニアかな?と思うような患者さんが相談に来院されることがある。多くは、普通は起こらないくらいの不安定なアンブシュア。細かく口唇が震える程度から、顎がガクガク動く重症な人まで。もちろん、奏法の問題や練習不足、いわゆるスランプなのかもしれないし、ジストニアかもしれませんねと言ったとしても、それは演奏を休むくらいしか対応策がないし、適切な紹介先を知っているわけではなかったので、自分からジストニアというワードを出すことはあまりしていなかったと思う。
私ができる範囲のこと~例えばアダプターとか歯の治療で、楽に演奏できるようになる可能性があれば試してみた。ご本人の希望で矯正治療を行うこともあった。

現在は、音楽家のジストニアの専門家と称する人も増えており、管楽器奏者のジストニアへの取組としては、楽に楽器を演奏できる姿勢とか運動療法的なものが中心のように思う。そういう意味では、歯科的なアプローチで楽に演奏できるアンブシュアを試みることはそう悪いことではなかったのではないかと思う。
そもそも一般的な治療方法である筋肉や運動神経を麻痺させることは、口唇周囲のような複雑で繊細な組織にはリスキーすぎる。抗精神薬などを処方されることもあるらしいが、副作用や依存性を考えるとそう飲みたくないものである。

つづく。

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