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November 2016

November 20, 2016

2つのアダプター

以前から当院で作製したアダプターを使用しているクラリネット奏者が、アダプターを無くしてしまったので再作製したいということで来院しました。

最初に作ったのが10年前(=A)で、6年前(=B)にスペアを作りました。スペアを作る際に、私の方から敢えて形状の変更を提案し、最初の物よりも幅を狭く、咬合時の上顎とのスペースを狭くしました。
多くの方のアダプターを作製していくうちに、私なりに「よいデザイン」の要件ができてきて、幅はあまり広くせず、下顎犬歯間の幅を変えない。そうすることで下唇を下顎歯列に密着しやすくなり下唇が安定すると考えたのです。また不思議なことに咬合調整をきちんとすると良い結果となり、それは上下のバランスを取ることと、下顎のセッティングの安定につながるのではないかと想像をしていました。
私としてはAを見て過去の自分を反省し、私なりの良いデザインであるBを作ったわけです。

以前のブログ記事はこちら

A 1611201
B 1611202

ところが、無くしてしまったのはAの方で、メインでこちらを使っていたのだそうです。Bでも使えなくはないのだけれとAの方が音色が好きだそうで、個性的な音色が武器となっていたということです。AとBの違いは

1)Aは作製時に模型のアンダーカットを埋めて作製したので歯との間にわずかに隙間があるが、Bは内面を一層削って軟らかいレジンで直接口腔内で硬化させたため、歯に密着していたのです。Bではリードの振動が直接歯に伝わるために痛みを感じ、しっかり噛みこむことができないということです。
2)幅が違う。前述のような理由で幅を狭くしましたが、広い方がマウスピースが安定してよいということでした。
3)Aは真っ平でしたが、Bはなるべく咬合するようにしました。平らな方がよいのではということでした。

Bを作製したときのベースはAのコピーでしたので、今回はBのコピーを作製して写真を参考に幅を変え、あとは吹きながら以前の感覚を思い出していただき調整していきました。

できあがりはこちら(=A’)

1611203 1611204

本人の吹奏感を元に高さを調整しましたが、正面の写真で見ると左右傾いて見えるのですが、下から見るとバランスが取れているかな。

語弊があるかもですが、私の感想としてはA’はフランス的なふわっと柔らさを纏った音、Bはドイツ的なしっかりした境界明瞭な音。ご本人によれば、しっかりマウスピースを噛むことが出来るので、口唇に力を入れずに吹くことができるからではないかということでした。

私も今後は思い込みをせずに、本人の目指す音色やアンブシュアを理解して、いろいろ試して形態を作っていきたいと思いました。

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November 10, 2016

ダブルリップ用アダプター

当院にて、上の前歯の調整をし、下顎前歯のアダプターを作製して使っていただいているクラリネットを吹く方です。今度はダブルリップに挑戦したいということで、上顎にアダプターを試してみることになりました。

以前の記事はこちら

クラリネットのアンブシュアは、通常上唇は巻かずに上顎前歯で直接マウスピースを噛み、下唇は巻いてリードを噛むのですが、ダブルリップというのは、上下とも口唇を内側に巻いてマウスピースをくわえる奏法です。
メリットとしては、音色が柔かくなること。おそらくリードにかかる力を弱くできるからではないかと思います。しかし、歯の状況によっては上唇内側の粘膜が痛くなる可能性があります。

この方の場合、上顎前歯が磨り減って鋭利になっているため、ダブルリップで吹きたいのに上唇が痛いということです。しかし、歯が磨り減って咬合高径が低くなっているので、そういう意味でもダブルリップは有効かなと思います。

そこで、相談していろいろ試して、結果このような物になりました。

1611101

ソフトシート1.0mm(一番薄いもの)を使用し、加熱圧接すると出来上がりは厚さ0.5mm。表側は長くても気にならないということで、保持のために歯頸部から5mmほど。内側は、あるとタンギングに差し支えるというで、歯頸部ぎりぎりに。最初は犬歯~犬歯にしましたが、段差があると違和感があるということで奥まで伸ばしました。

1611102


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November 02, 2016

歯の長さを整える

オーボエ用の上顎アダプターがとても効果があったので掲載します。

普通の会社員をされているけど音大出身のかなり上級者です。元々は上顎前歯2本の長さが違うために当院にいらした方で、歯ぎしり等により歯が全体的に磨り減っているのだけれど、1本は補綴物(セラミック)のために長さが保たれており、結果2本の長さが変わってしまった。
そこで、もう1本の方をレジン充填材で長さを調整し、演奏上の効果もあったし壊れることもなかった。
全体的に歯が磨り減っているために、咬合が低くなっており、なので下顎前歯部のアダプターで咬合を上げて演奏が出来た方がよいと考え勧めたのだけど、違和感があって使用はしていないということ。

何年かして、今度は上顎の側切歯、犬歯がかけたということで来院された。歯の咬耗は進み、左右とも中切歯に比べて側切歯と犬歯が短い。
最初はレジン充填材にて歯の形態を長くし、咬合調整も十分にやったのであるが、なにせ歯ぎしりで歯にかかる力には耐えられず、取れてしまった。歯ぎしりによる歯の損傷を防ぐためのナイトガードは使用しているが、どうしても日中でも無意識に歯ぎしり食いしばりをやってしまうのだそうである。

1611021

そこで、着脱式にして長さを補うようなアダプターを試すことになった。模型上で歯の長さを整え、それにハードタイプのシートを使用してマウスピースを作成した。
結果は期待していたような効果があったということで、pやsfが特に良くなったとの事。ご本人によれば、歯の長さが短いと、その部位の口唇・頬の支えがないため、内側に寄る方向に力が入って、上唇の中央部に厚みが増してしまうのではないか。そうするとリードに余分な力がかかってしまい、キャパシティが減ってしまう。ということです。

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オーボエ・ファゴットでは、口唇を内側に巻いてアンブシュアを作るので、どうせ歯並びは関係ないと思っている人は多いのではないかと思うのですが、やっぱり関係あるんですよね。

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