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September 2016

September 08, 2016

反対咬合とトランペット演奏 その3

前回の「反対咬合とトランペット演奏 その2」で紹介したプロ奏者のレントゲン写真を分析重ね合わせした。
高音域では関節頭が後方に行っているが、関節窩の形態から、どうしても下方に行く必要があり、結果下顎が回転して前歯が開いているのがわかる。
下唇を巻き込まないと吹けないということであったが、レントゲンでも巻き込まれているのがわかる。演奏時に歯を開いていることが原因と思われる。

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さて、反対咬合・受け口といってもいろいろなパターンがある。骨格的なバランス、前歯の傾斜、下顎骨の形態などなど。骨格的に上下顎のアンバランスの程度が大きいほど下顎前歯の舌側傾斜の程度が大きくなることが多いし、骨格のバランスは良いけど前歯が唇側傾斜してるために反対咬合になることもある。反対咬合でも演奏時の顎位はそれぞれであるはずである。
根本先生の説では、反対咬合では演奏時の前歯の関係は上よりも下の前歯が前に来るということであったが、私はなかなかそういうケースに会ったことはない。一人だけちょっと下の歯が前に出ているかなというレントゲンがあったのでよく見ていると、ほぼちょうどと言ってよいようである。この人の場合は、下唇の唇側傾斜が大きく、どうしても下顎前歯の切端が前に出やすくなる。

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つづく

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September 06, 2016

反対咬合とトランペット演奏 その2

先日とあるプロオケのトランペット奏者が来院した。元々受け口であるが、だんだん前歯の歯並びが変化したと感じており、アタックが決まらない、下唇を巻き込まないと吹けない、高音域で音がこもってしまうといった問題があるということであった。それらの演奏上の問題は受け口にあるのではないかと考えているとのこと。

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咬合時の歯並びの写真

歯並びは、顎顔面の成長が終わり親知らずも落ち着くと、そう変化はしないのであるが、歯ぎしりや舌癖などが原因で成人してからでも変化していくことがある。なので、歯並びが変化してきているというのは実際に起こっている可能性はあるが、今回はその件については触れない。

反対咬合の程度としては大きく、外科手術併用でないと治すことはできない。まずはレントゲンを撮ってみた。
下のレントゲンは、左が中音域の実音F。右がオクターブ上の実音Fである。

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中音域              高音域


反対咬合の程度が大きいのに、演奏時は上の前歯よりも下の前歯が後ろにある。下顎頭(下顎骨の関節頭)は関節窩の中にとどまり回転している。注目すべきは高音域で、通常前歯の開きが小さくなるのに、下の前歯がさらに後ろに行き、開きが大きくなっていることがわかる。おそらく高音を出すためには、前歯の開きを狭めることよりも、上下前歯の前後的な差をつけることの方が必要なのだと思う。下顎頭はこれ以上後方には行くことができず、下顎前歯が後方に行くためには下顎骨が後方に回転する必要があり、必然的に前歯の開きが大きくなったのだろう。

高音域では、息を絞るのが困難なことと、歯を開くために下の前歯にマウスピースのリムが引っかからず、上の前歯に下からプレスする状態であることが、高音域の演奏に影響を及ぼしていることが推察される。

つづく


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September 03, 2016

反対咬合とトランペット演奏

咬合と管楽器演奏の関係については、根本先生の本の図が有名すぎて、皆さん信じているのではないだろうか。各種テクニック本にも引用されているらしい。

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   ~根本俊男著「すべての管楽器奏者 ある歯科医の提言」より


下顎は3次元的に動き、可動域には個人差があり、口唇の厚さは筋肉により調節可能だし、マウスピースの圧力は均一ではない。つまり、咬合タイプによって決まるわけでもなく、咬合タイプによって理想的な向きがあるわけでもないと私は考える。
図では、正常咬合では演奏時に上下の前歯前歯がそろっていて、反対咬合では下の前歯が前に出ているが、私の経験(演奏時のレントゲン撮影)では、正常咬合の演奏時の顎位は、上下の前歯がちょうどそろうことはなく、わずかに上の前歯が前に来る。反対咬合の演奏時の顎位では、下の前歯が前に来るケースは少ない。

下の写真は5年前に講演のために、咬合と楽器の向きが関係ないことを示すために当団練習風景をこっそり撮ったもので、当団トランペット3名は咬合パターンがまったく違うのにも関わらず(1st骨格性III級、2nd上顎前突、3rdI級正常咬合)、向きはほぼいっしょである。
楽器の向きは強いて言えば演奏時の上下口唇の位置関係と相関があり、つまり出したい音色によっても変わるのではないか。いっしょに演奏しているうちに音色が似てくるので、向きがほぼいっしょなのではないかと思う。

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下顎(関節頭)は前には出るが後ろにはいかない。開口時に下顎は後方に回転する。つまり、金管楽器演奏時に、普通の人が下顎を前に出して演奏するところを、反対咬合の人はあまり前に出さずとも楽に演奏できる。しかし反対咬合の程度が大きければ下顎を後方に押し込める必要があり、顎関節周囲に負担がかかる。これが私の「受け口気味(軽い反対咬合)だと金管楽器演奏に有利かも」という仮説の根拠であった。


つづく


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