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June 02, 2016

管楽器奏者への歯科治療の評価方法

1年ほど前になりますが、とある歯科大学で管楽器奏者の治療を手掛けているという歯科医の方が見学にいらっしゃいました。専門は補綴学で、数年前に開かれたInternational Educational Project for Embouchureの第一回学術大会にも参加したということでした。いくつか管楽器に関する論文も発表されていて、発音障害の治療に関する研究を応用して管楽器の方の治療にあたっているようです。

治療の効果があったかどうかを評価する方法として、音量の大きさを指標にする、つまり音が大きくなることを良い結果であるとするというお話でした。管楽器を演奏している私からすれば不思議です。音の大きさは簡単に変えることができ、簡単にいろいろな環境で変わるものであるからです。しかしながら、ff,mf,ppを各音で吹き分けられるかというのも指標にしているようで、それは良い評価方法かもしれませんが、日常の臨床ではどうでしょうか。

私は、アダプターや歯の調整の際に「良くなった」かどうかをどう判断しているかですが、一番は音質。音質といってもいろいろな意味があると思うのですが、明らかに良くなったという状態であれば、吹いている本人が笑顔になっています。こもっていた音が抜けるようになった、ビヤッと広がっていた音がまとまるようになった、アタックのきれいになったなど。それからアンブシュア。自然な良いアンブシュアになる。無駄な動きや無理な力がなくなる。アンブシュアが音の高さにより変わらずつながるようになる。楽に吹けるようになると細かいパッセージを突然吹き始めるようになる人もいるし、pが楽にコントロールできるかテストする人も多いです。ときたま音程、高音域がぶら下がらないか。などなど・・・

これらを客観的に評価する方法はないだろうか。その歯科医が見学に来た時にお話ししたのは、やるとすれば、周波数分布を調べることなのかなと。その楽器の音色には本来の周波数分布というのがあるのだから、それにいかに近づくか検証するのがよいかもしれません。
あとは術後の演奏時レントゲン写真で評価をすることもできるかもしれませんが、術前のレントゲンから得られる情報にくらべ、既に治療が終わり満足な結果となっているところでレントゲンを撮っても、その患者さん自身にとって有用ではないかもしれず、現在の当院では行っていません。

私が日頃経験するような、クラリネットの音色が境界明瞭になった感じとか、ホルンの音色に艶が出た感じとか、数字ではとても評価できない、耳と目と指先で行う職人的な仕事であります。
その歯科医はお聞きしたところ、ご自分はピアノ奏者で管楽器奏者の治療経験は5名ということでした。私の百分の一です。私も当院にいらしていただいた管楽器奏者の皆様のデータを何かの形で世の中に活かしていきたいとは思っています。

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