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March 2016

March 27, 2016

トランペット奏者が側切歯を抜いたら(4)

さらにその後のお話です。

右上側切歯抜歯後、人工歯を片側だけスーパーボンドで接着し、特に問題なくしばらく楽器を吹いていた当団首席トランペット氏。シュミット4番の次のシーズンは若い者にトップを任せ自分は2ndを吹き、その次のシーズンの「復活」で復活するかどうかというところでした。

復活のシーズンが始まって少しして「ハイトーンが思うように出ない」というのです。歯の長さを調整してみますかということで来院いただきましたが、口を見て気が付きました。
抜いた側切歯の歯肉部分が凹んでいました。歯を抜いて歯根があった部分が骨吸収を起こすから当然のことです。おそらくこれが原因なのではないかと思い、試しにシリコン印象材を使って薄くその凹みを埋めて吹いてもらいました。

高音域でぶら下がってしまう音程が直りました!
ずっとシリコン印象材というわけにもいかないからレジンでアタッチメントを作る予定でいました。

でも使ってくれないんです。キヨハラみたいにクスリに頼りたくないのだそうです。人工的な補助はクスリのような物ということでしょう。ここまで来ると精神論だからしかたありません。骨が凹んだのを戻すのだから良いと思うんですけど・・・

おそらく抜歯後の歯槽骨吸収は半年~1年くらいで収まるので、もうそろそろ落ち着くとは思います。


※抜歯後の歯槽骨の凹み具合は16.8.22の「折れた歯を戻す」でご覧いただけます。


補足(9/3) :やっぱり使っていたんだそうです、あるとないとで高音域の出が全然違うそうです。さすがにシリコン印象材はちぎれてしまったそうで。半年たちますから。作り直します。

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March 02, 2016

親知らず用アダプター 続き

元記事はこちら2016.2.1

その後、何度かの来院で長くしたり短くしたり薄くしたり厚くしたりしました。その経緯をすべて記録してもしかたないので、このアダプターの調整の中から見えてきたことをまとめたいと思います。

親知らずのアダプターとしましたが、今回作製のアダプターには2つの要素があり、
1)抜歯した親知らずの代替
2)頬側の厚さの調整

1)親知らずの部分
形については、頬側・舌側とも、最初の物だと違和感があるということで、一度削ったのです。頬側は印象で取れているギリギリに設定し、舌側は上顎7番よりもわざと内側にしたのですが、それを削って6番7番の延長上に調整しました。
しかし、それだと息が抜けてしまいタンギングできないということで、戻しました。
金管楽器演奏時、舌後方の両脇は上顎最後方歯の舌側面に触れているけど、タンギングで奥の方の歯に押し付けていないと思うのです。(自分がそうだからといって多くがそうとは限らないのだけれど、むしろ舌後方を上に挙げることのできない人も少なくない。)だから、通常は親知らずを抜歯してもタンギングに悪影響が出ないと思うわけです。
おそらく、このチューバ奏者は特殊(というか素晴らしい)なのではないか。チューバなのに本当にクリアなアタックで、ご本人いわく「tatata」ではなく「kakaka」とタンギングをしているのだそうです。

2)頬側の部分
頬側の厚みがあると、口角がもっていかれるということで、可能な限り薄くし6番7番のみ被う形にしました。
しかしその後、ご自分で綿を詰めていろいろ試してみたところ、あった方が良い音がするということで、薄くしたアダプターはそのままに、犬歯まで被うアダプターを新たに作製しました。上下的には歯槽部に移行的にすることで良い結果となりました。
おそらく最初5番まで被ったので、3番4番とのギャップが大きくなり、口角が持ってかれた感があったのだと思います。移行的に広く覆うことで、むしろ口角が安定するようになったのでしょう。
チューバ奏者は、名奏者であっても頬に空気を入れた状態で演奏する人が少なからずあると思うのですが、この方は口角~頬を歯列に密着させて演奏するので、特に影響があったのだと思います。アダプターなしだと、もちろんそれはそれでよい音ではありますが、明るく広い感じで、アダプターを入れると深く境界明瞭な音になりました。

ではなぜ、このように効果があったかなのですが、成人した後に歯の形態および歯槽骨の形態が変化してしまったからと思います。それは楔状欠損と外骨症です。
少々小臼歯部が舌側傾斜しているように思いますが、それが成人後の変化なのかどうかはわかりません。若い時の模型があると良いのですがお持ちではなかった。チューバ演奏で歯列が内側に傾斜する可能性はあるとは思うのですが、もし演奏の影響でだんだん内側に入ってきたとすれば、そのあおりで前歯に何らかの叢生が現れると思うのにそれはないので、元々このような歯列形態だったと思います。演奏時の歯列頬側の筋肉活動はかなりなものとは思いますが、口腔内の圧力も高まっているので、歯にかかる力自体はプラマイゼロではと想像しています。(実際にプロ奏者では小臼歯部にかかかる圧力がゼロという結果が出た実験もある。)
まず楔状欠損ですが、歯の頬側の歯茎寄りのところが削れて凹んでいる状態で、この方の場合だと、上顎の3番4番5番に顕著にみられ、元々あった歯槽骨も減ったと思われます。
それから上顎の歯茎の上の方にボコボコした隆起がありますが、これは外骨症といって経年的に大きくなるものです。
ですので奏法が確立した頃に比べて、歯の歯頸部付近が凹み顎骨の上部が出てくるという変化がおこったのではないか。それによって、演奏上問題が出てきたのではないかと思うのです。それをアダプターが補ったということです。

歯並びの状態~楔状欠損と外骨症がわかります
1603021

アダプターを入れたところ(その後調整して薄くしました)
1603022

とりあえず現在のアダプター
1603023


次回は楔状欠損や外骨症の原因と思われる歯ぎしり・くいしばりについて書こうと思います。

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March 01, 2016

フルート演奏で下顎左側前歯は前に出る?

フルートを吹くと下顎が横に偏位するのではないかと、ずっと前から思っていました。単に私の周りにそういうフルートの方が複数名いるからです。なぜ下顎が偏位するかですが、それはアパチュアの位置に関係するのではないかと思っています。上唇の正中は少し尖っているため、アパチュアは左右どちらかにずれる。下唇は中央がアパチュアとなるので、下顎(あるいは下唇)を左右どちらかにずらさないと上唇のくぼみに合わない。おそらく構え方から左側にアパチュアが出来る方が自然ではないかと想像していて、下顎を左にずらして吹く人が多いのではないか。歯並びや口唇の形自体にもよるだろうから、アパチュアの位置は左右どちらも(あるいは中央も)可能性としてはありだとは思うが、右アパチュアだと頭というか肩の捻りが大きくなるのではないか。
私の想像をざっくり図にするとこんな感じ。絵心なさすぎですみません。

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このところ、プロのフルート奏者で左下の前歯が前に出てきたという方が2名あった。普通に考えると、アパチュアが左に来た時の楽器の構え方は口よりも手の方が前方に来るから、左下の前歯の方にリッププレートが当たる、つまり楽器からの圧力を考えると左下の前歯が後ろに下がってしまってもよさそうなものなのに・・・である。なぜだろうかと考えてみた。

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模型をよく観察すると、2名とも、右下の側方歯群(犬歯~小臼歯)が内側に倒れているのがわかる。下顎(あるいは下唇)を左側にずらして演奏すると、口唇周囲の筋肉は右の方が引っ張られて当然強くなるわけで、その影響により右下の歯に力がかかり、その影響で左下の前歯があぶれて押し出されたか、相対的に前になったか・・・と想像できる。そうなるとそれにより演奏に支障が出て、上の奏者は右下前歯と口唇の間が開くため息漏れがするようになり、下の奏者は左側だけ受け口になり息の方向のコントロールに難が出てきたというわけである。

もちろん、フルートは足の構え、肩の位置からして左右非対称の姿勢で演奏するわけで、人によっては頭を横に傾けて吹くし、身体全体の筋肉の使い方が非対称なので、いろいろな影響があるのだろうけど、フルート演奏は左右非対称の歯並びを引き起こすことがあるというのは間違いないと思う。近いうちに調査してみたいなと。

注:すべてのフルート奏者が下顎前歯の歯並びに影響がでると言っているのではないです。口唇・頬から歯列への圧力が左右対称の人もあるでしょうし、元々の歯並びや咬合力によっては影響を受けにくいことも多いと思います。

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