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February 2015

February 15, 2015

金管楽器は文化に合わない??

2年以上前の雑誌なのですが、きっと自宅で読もうと持ち帰ってそのままになっていたのが掃除で出てきたので読んでみたら、こんな記事がありました。アポロニアという歯科医院経営情報誌です。


小児歯列不正を起こす要因 ブラスバンドも影響?

近年、小児の歯列不正が頻繁に見られるようになった要因として、軟食傾向が挙げられる。軟食による歯列の舌側傾斜は確かに大きな要因であろう。これに加え、最近、少し気になっているのは、ブラスバンドの練習に熱心な子どもに歯列不正が多い傾向があること。金管楽器を演奏するには、吸い口を密着させて頬筋を大きく狭める必要があるため、習慣化すると舌側唇側への歯列傾斜リスクになると考えられる。その結果、舌が沈下して口呼吸となり、SAS気味の子どもが多い。
これに対して、東洋の伝統的な管楽器は吸い口を密着させず、頬筋にも負担が少ない。軟食傾向も金管楽器も異文化受容といえるが、「文化に合わないことをすると生体に影響する」のかもしれない。
(アポロニア21/2012年10月号より)


「金管楽器を吹くことで、頬筋をすぼめて歯列に圧力がかかる習慣がついて、歯列が傾斜してしまう」ということをおっしゃっているのだと思います。
まず、金管楽器を吹くときの頬筋の使い方と、口腔周囲の習癖で頬筋をすぼめるときの使い方は全く違う。もし同じだとしても、よほど悪い吹き方であり長時間の演奏に耐えられないだろう。金管楽器を吹いている私の経験として、吹かない時は口の周囲はリラックスさせるので、習慣化する子供が多いとはとても思えない。
私の想像では、まったく別の原因(=鼻炎や狭い気道など)で習癖がある子供がたまたま金管楽器を吹いていたという事例を見て、その歯科医師はそう感じているのではないかと思います。

百歩譲って実際にそういう印象が正しいとして、不正咬合を引き起こす口腔周囲の機能異常を元々持っている割合が高いということはあるかもしれません。
もっともスポーツも楽器演奏と同様に口呼吸を引き起こす誘因になる可能性があります。

最近、トランペットを始めたのが原因で歯並びが悪くなったと一般歯科の先生から紹介があった。元々鼻炎があり口呼吸をしているために前歯の唇側傾斜と開咬が起きている可能性がとても高い。開咬のためトランペットの影響を受けやすくて少々の叢生になった可能性はゼロでないにしても、必ず別に原因があるはずである。
以前のブログに書いたように、口呼吸の誘因の一つになる可能性はあるとは思う。しかし、アメリカのメジャーな歯科矯正学の学会誌では、管楽器が成長期の子供の口腔機能の発達に役立つという論文がある。


ということで、歯科医師(私の印象では特に小児歯科)が歯並びや咬み合わせが悪いことを、楽器演奏のせいにすることが増えてきたように思いますが、私の意見としては、多くの場合他に主たる原因があるということであります。


そもそも、「金管楽器のような文化に合わないことをすると生体に影響する」って???
日本にも「ほら貝」という伝統的な金管楽器と同じ発音方法の楽器があるし、調べてみたら、東洋の各国に伝統的なラッパが存在する(ネパールの「ドゥンチェン」、チベットの「ラグドゥン」など)みたいですよ。

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February 04, 2015

トランペットのための矯正治療

当院では、管楽器をやっている人のための矯正治療として

・できるだけ装置が演奏の妨げにならないよう工夫する。
・治療中の歯の位置変化が、演奏に支障が出ないような治療手順にする。
・治療期間ができるだけ短く、あるいは演奏に支障のある装置を入れている期間をできるだけ短くする。
・演奏活動に配慮して治療を進める。

といったことを行っています。
では具体的にどうするかですが、楽器の種類や歯並びの状態によっても違うので、簡単には書けないのですが、トランペットの人ならどう・・・といった決まりがあるわけではなく「いつまでに、どの状態になっていたいのか」ということを考え、治療方針を相談しながら決めております。

当院ではトランペットの場合、非抜歯で移動量が少なければマウスピース矯正、抜歯ケースであれば、リンガルか唇側かは選んでいただき、唇側の場合は金属製ブラケットの薄くて小さいものを選択し、リガチャーはできるだけリングを使用し、治療中の前歯の唇側傾斜が起こらぬよう配慮して治療を進めますが、患者さんのご要望や状況によっては、イレギュラーな治療手順を取ることがあります。

例えば同じように叢生を伴う上顎前突の抜歯ケース(小臼歯を抜いて前歯を後ろに下げる)であっても、状況によって治療方針は違ってきます。今回はその例をいくつか挙げてみようと思います。すべて最近の例です。


例1)音大生。八重歯(上の犬歯)が邪魔。歯並びの影響か楽器の演奏により肩こりになる。先生にはさくっと直すようにと言われている。

<方針>まずリンガルアーチ(大臼歯を固定する)を入れて犬歯を後ろに動かし、その後1年以内を目安に唇側ブラケットで治療。その後必要であればマウスピース矯正で仕上げ。

<理由>一番直したい歯を早く動かし、しかもしばらくは前歯に装置を付けずにすむ。3年生になった時に装置も外れて歯並びもほぼ確定して、奏法を確立することができれば充実した音大生活が送れるのではないか。


例2)1年後に音大受験を控えている浪人生。歯並びが原因で演奏に限界を感じ、少しでも受験前に改善をしておきたい。

<方針>まず上下とも犬歯~大臼歯に唇側ブラケットを付け、犬歯を後ろに移動する(4か月)。その後インビザラインで治療(1年強)。終了は受験半年後の予定だが、受験時にはある程度良くなっているようにする。

<理由>最初からインビザラインで治療すると、治療期間全体が長くなるだけでなく、抜歯ケースの場合1本ずつ移動するため、前歯が動くのが随分先になってしまう。前歯をフリーにして犬歯を後ろに移動すると、ある程度自然に前歯の叢生が改善し少々舌側移動が見込める。犬歯までの唇側ブラケットおよびインビザラインのアタッチメントは演奏に支障がなかった。リンガルアーチ利用ではなくセクショナルにしたのは、臼歯部の叢生があるのと、第一大臼歯を近心に移動させたいため。練習時間を除いても1日18~19時間は装着可能。少々短くなるが、この程度であれば対応可能か。


例3)中高一貫校の吹奏楽部の中学生。今はコンクールのメンバーに選ばれないのは仕方ないが、高校1年の夏には装置を外しうまく吹けるようになっていたい。

<方針>高校1年の夏までの1年3か月間の期間限定で、全体的な唇側ブラケット装置で治療を行う。その後はマウスピース矯正を行う。

<理由>叢生少なめで前歯の舌側移動量が大きいため、最初からブラケットを付けて治療を始める。治療間隔を狭める等、できるだけ1年3か月の間に治療が進むよう配慮するが、スペースが残り仕上げが不十分な可能性が高く、その時の状況によりインビザラインかクリアアライナーのどちらにするか決める。高校1年生の夏にほぼ直っていることが目標。今は見た目を重視したいので、上だけ透明ブラケット希望とのこと。この人の吹き方だと下の方が演奏に支障が出る可能性が高いため、下は金属ブラケットで。


例4)劇団に所属して演奏活動をしている。拘束時間が長く、さらに個人練習も必要。

<方針>普通にリンガルブラケットで治療することに。途中前歯が唇側移動しないよう注意して治療を進める。

<理由>最近はインビザラインで抜歯ケースを治療するケースが増えているようだが、インビザラインを使用できる時間が12時間くらいしか取れない見込みなので、おそらく計画通りに歯を移動させることは難しい。舌感に比較的影響の少ないインコグニト使用。舌側ブラケットではアタックがきれいに出来なくなる可能性があることは了承すみ。


こんな感じで対応しますので、やりたいことをあきらめないで!!

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February 03, 2015

リッププロテクター

この前、大学の同期の同業者(つまり矯正歯科専門医)から電話があり、トランペットを吹いている患者さんについて聞かれました。リッププロテクターはどこのを使っているのかというお尋ねでした。

「リッププロテクター、私は使ってないよ。○○社が出しているから一応在庫はあるけどね。さらに厚くなってしまうので吹きにくくなるから薦めていない。痛くて吹けないって言っているのなら、痛みに関しては効果があると思うので、試してもらえばいいと思う。でも、たぶん吹きにくいよ。
それよりも、ブラケット(歯につぶつぶ付ける矯正器具のこと)を小さくて薄いのにして、リガチャワイヤーの代わりにモジュールリングにすると、ずいぶん楽になるよ。全く同じには吹けないけどね。」

と説明したところ、彼はそれらの情報から判断し、一度治療は中断し、高校生になってトランペットをやめたら矯正を始めることにする・・・だそうです。

患者さん本人が納得なら、それが一番良いかもです。
矯正歯科医はいろいろなこだわりを持って治療をしていますから、自分の使っている矯正器具やリガチャ―のやり方を、患者さんの都合で変えたりはしないんです。

リッププロテクターの写真を撮ろうと探してみたら、見つからなかった。3年前に診療室の移転をしたときに行方不明か・・・。注文することにしました。スポーツ用マウスガードの代わりにはいいと思うので、やっぱり在庫は必要かな。管楽器やっている患者さんで試したい方もどうぞ。

リッププロテクターは、こんな感じ。メーカーさん的には、管楽器を吹いている患者さん向けにすすめております。

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最近出た新製品で、薄いシート状のカバーがあるので、リッププロテクターよりも吹きにくくなりにくいかと思います。また、シリンジからシリコンを出すタイプのプロテクターも最近の新製品であります。
でも、当院ではブラケットやリガチャーの工夫で、痛くて吹けないという人はほとんどいないですし、血だらけになるということは絶対ありません。シリンジから出すタイプのシリコンは思うように薄くすることが難しいので、当院では、必要な方にはヘビータイプのシリコン印象材をお渡しし、自分で練って使っていただいております。

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