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August 2014

August 25, 2014

左手のポジションと音質

お盆休みにとあるホルンキャンプに参加して、楽しい3日間を過ごしたのだけれど、その中でアレクサンダー・テクニークのバジル先生のグループレッスンがありました。各人が演奏上の悩みを相談して体の使い方の視点から解決するというものでした。実はこれを楽しみに関西まで行ったのでした。

私の悩みとしては色々あって、バリッとしたフォルテの低音が出したいとか、リップトリルを確実にやりたいとか、何を相談するか迷いましたが、他の参加者が音を出すアンブシュア周囲に関わる相談ばかりだったので、左手について相談することにしました。昔簡単だったことが今上手く出来ないと、特に細かいパッセージで感じるのは、左手に起因する部分が大きいと思っていて、今使っている楽器の持った感じがしっくりこなくて、近々指かけは取替えようとは思っているけど、腕の使い方(向きや手首の角度など)も問題ではないかと考えていたのでした。

バジル先生の指導は、楽器を持ったら、首をひねって顔を左に向け、マウスピースを口唇に当てる。視線を戻すために体を右に向けるというものでした。あら不思議、楽に指が動くし楽に吹けて音も変わったような・・・。でも、しばらくそれで吹いていたら首の後ろが痛くなったので、再度聞いてみました。首だけをひねれば(首を軸に回転)痛くなることはない、腰からひねっているか頭に無理な力がかかっているかではないかという回答で、非対称な姿勢の例として、フルートの演奏時の姿勢や、ホルンの名奏者の例を出されました。

しかしですね、フルートの場合、確かに必ず頭に対して体が右を向きますが、大抵の人は顔が左に傾きます(アゴの先が右にいく)。首をひねる分、もしかしたら顔を傾けることでバランスをとっているのではないかなと。
ホルンに関しては、以前レッスンで左肩を前に出した姿勢を指導されたことがあります。立奏ですが、ファイティングポーズのような姿勢がよいと。左肩が前、右肩が後ろにくるので、同様に頭に対して体が右を向きますが、足先は正面を向き、その代り左足を前にして重心をかける。もしかしたらそれでバランスをとっているのかもと思うのです。

キャンプから帰ってオケの練習で、指導されたように意識的に首だけ回転させて吹き、椅子に対して斜に座るようにしたのですが、吹いているときはとても調子が良かったのだけれど、翌日は後頭部から首にかけてとても痛かったのであります。特に右側が痛い。薬を飲んでもまだ痛いくらい。もちろん、ホルン吹いているときの姿勢だけが原因ではないかもしれませんが。おそらく、首をひねることで右側の後頭部から肩にかけての筋肉が引伸ばされ、伸びた状態で演奏をすることで「伸張性収縮」しているわけですが、この伸張性収縮は調べてみましたら、一般的なトレーニングでは筋肥大のために行うようですが、筋繊維の微細裂傷を起こし筋肉痛の原因となるということでした。

と書くとクレーマーみたいになってしまいますが、腕を動かす筋肉の緊張が指の動きのみならず、音質にも影響を与えることがわかり、私にとっては目から鱗で、とても良い体験をさせてもらいました。
目的は首をひねることではなく、左腕に無理な動きをさせずに吹くことであります。口にまっすぐマウスパイプを当てるために左手を中央に持ってこようとして、鎖骨を中心とした筋肉が緊張し、口唇にも影響を与えていたんだと思います、つながってますから。腕を楽にして吹く手段はきっといろいろあると思うので自分なりに探してみることにします。

当院では、特にクラリネットやトランペットで「まっすぐ構えたい」という主訴の方が多く、アダプターや歯の調整でまっすぐにできると、単に見た目やフィンガリングだけではなく、明らかに音質自体が良くなる経験をしています。もしかしたら、腕や手が楽になることが口唇に影響を与えているのかもしれないなと思いました。

アレクサンダー・テクニークについては、もう少し勉強したいと思います。


追記(8/26)
いろいろ考えたのですが、首の筋肉(胸鎖乳突筋など)だけを使って首を回そう(顔を左を向く)としても、どうしても構造上頚椎にひねりが加わるわけで、深層筋にも影響があるんだと思うんです。
左肩を前にしようとすると、頚椎自体はひねらずにすみ、それだけでは力が入るので、鎖骨を意識してちょっと重心の移動するかしてバランスをとるとよいように思います。いろいろ動画を見てみましたが、ホルンの名奏者で顔を傾けている人は多いようです。
フルートに関しては、前々から顎が曲がっている(たぶん右にずれている)人が多いと思っていて、どうして曲がるのかわかったような気がします。それについては、また後日。

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August 23, 2014

60の手習い

還暦を過ぎてクラリネットを始めたいという方が来院されました。元々ヴァイオリンをやっていたけどクラリネットの音が好きで、何年か前にクラリネットを始めたのだけれど思うように吹けずそのままやめてしまったが、再挑戦をしたいということでした。
うまく吹けなかったのは、下の前歯の歯並びが悪く、1本内側に歯があるので線でなく点でリードをくわえてしまうためと自己分析していらっしゃいました。今更矯正治療までは考えていないが、アダプターを試したいということでした。
私は初診時には、歯列模型と演奏時のレントゲン写真を撮影するのですが、楽器を所有しておらず、アダプターを作ってもらえるのなら楽器を購入して始めたいということでした。型だけ取って、歯列のみを参考にアダプターを作ることとし、次回の予約は楽器購入後にしました。

新品の楽器を持って来院され、アダプターを口腔内で調整し、さあ楽器を吹いてみましょう!というところで、歯並びに気を取られてか、下唇をまかずにアダプターで直接リードをくわえてしまったのはご愛嬌ですが、下唇をまいて吹いてみて、あきらかにアダプターがあった方が良い音がしました。
指使いを覚えるのはこれからということで、音楽教室に通うことにしたのだそうです。楽しい趣味が増えるとよいですね。お役に立てたようでよかったです!ヤ○ハの回し者じゃないですけど、リタイア後に管楽器に挑戦したい人、応援します。

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August 20, 2014

顎関節に負担のない吹き方

今日は、中学生の顎関節症の相談がありました。中学2年生ながらトランペット歴5年の彼女は、コンクール前の時期に1日6時間練習があったときに顎が痛くなって、総合病院の口腔外科を受診し、マウスピースを作ったということです。上顎歯列全体を覆う厚目な物で、担当医からは演奏時に着けるよう指示されたそうです。当然吹けないですよね、2回試みて着けるのをやめたそうです。コンクールも終わりしばらく楽器を吹いていない今は症状はないということですが、講師に勧められで受診されました。

管楽器演奏と関連のある顎関節症の多くは、演奏時の顎位に問題があります。ありがちなのは、下顎を前に出しすぎているか、もしくは左右にずれた状態。吹いたところを見るとそうではなさそうなので、演奏時のレントゲンを撮影しました。

通常、演奏時は上下の前歯がほぼ前後的に同じ位置にきます(正確には上の前歯が1mmほど前にくることが理想的)。彼女の場合歯並びは良いのですが、上下の前歯の前後的な差が5mmほどあり、下顎をほとんど前に出さずに吹いていることがわかりました。頭蓋骨の窪みに下顎の関節が入ったままでした。演奏に理想的な前歯の位置関係に持っていくには、下顎の関節は前下方に移動しますが、彼女は関節の位置をほぼ変えずに蝶番運動で下顎を開いている感じです。中音域での撮影ですので、高音域ではさらに顎が閉じられ楽器のプレスも加わり、下顎の関節が後ろに押込まれていることが予想されます。

そういえば、ホルンを始めたばかりの中学生の頃、先輩から「顎関節の辺りを触って窪みができる状態で吹く」ように指導されたことを思い出しました。先輩はおそらくどこかの講習会で聞いてきたんだと思います。彼女にも同じように顎関節を触ってみて窪みができることを確認してもらいました。

今は症状もないんだし、吹きすぎないでねというアドヴァイスで終わりにする手もあったのですが、口の中の狭い感じの音色をしていたので、せっかくなのでこれを機会に良い音が出せるようになればよいなと思います。顎関節に負担のない吹き方は、良い音を出す吹き方であるとも言えるかもしれません。

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August 11, 2014

歯の呪縛から解き放つ

半年くらい前になるのですが、地方の音大を卒業して東京でプロを目指しているトランペット奏者が来院しました。その音大のある地域には、管楽器歯科を標榜し私と同じように管楽器奏者のための治療を行っている歯科医院があるようです。彼は元々そう悪くはない歯並びなのですが、ほんのちょっとした1mmほどの前歯の段差を気にして治療を受けていたそうで、大学3年頃の1年間は歯の治療に費やしてしまい楽器の勉強どころではなかったということでした。具体的には上の前歯(1番)1本の辺縁を削り、下の前歯(2番)1本の唇側全体にレジンを盛って段差をなくしたのですが、上の方はその後レジンで元に戻したそうです。

私の診療室に来た目的は、上の前歯のレジンが劣化したので修正したいということ。今までのレジンをほぼ落とし、反対側の1番を参考に本来こうだったであろう形態にし、吹奏感を確認しながら細かい調整を行った。下の2番のレジンを盛ったところが歯肉炎になっており、常時炎症状態と思われたのでそれを外すことを提案したのだけれど、どうしても必要ということでそのままにしました。

そして最近再来院した目的は、下の2番のレジンをさらに盛りたいということでした。もしこれ以上盛れないのならアダプターにしたいとのこと。中音域の一部の音域で口唇の振動が止まってしまうのだそうです。吹いてみてもらうと、奏法自体に問題がありました。今時珍しいのですが口を横に引いてコントロール、つまり高音に行くほど横に引いていました。今まで誰にも指摘されなかったか聞くと、言われたことはあるとのこと。それを歯の問題ととらえていたのでしょう。下のレジンがないと30分以上吹けないということでしたが、1mmほどの段差のせいで吹けない奏法の方が問題です。体格も顎の骨格も口唇も歯並びもトランペットを吹くのに恵まれていたので、今までそれなりに上手に吹けていたのでしょう。
盛るにしても一度外してどのくらいが適当か試したいと言ってレジンを削り、本来の歯に戻して吹いてみてもらいました。音質としては良くなり響きが豊かになった感じ。ほら、レジンがない方がよいでしょう?それよりもその吹き方を真剣に直した方がよいです、基本は練習の仕方ですとお話しして終わりにしました。

おそらく全国に管楽器歯科としていろいろなことをやっておられる歯科医は大勢いらっしゃるのだと思いますが、歯並びはつるっとしていればよいものではないし、本当に歯が問題なのか判断できることが大切だと思うのです。
そのためには、どのように音が出て音色が決まり、どのようにコントロールするのかを知る努力をし、それがどう歯や咬合と関わっているのかを考えたうえで治療をしていきたい。最終的には「歯を意識せずに吹けるようにすること」が私の仕事であると考えています。

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August 01, 2014

練習はしないと

昔の私のブログの記事を見てみると、楽器どうしよう、ケースどうしよう、譜面台の高さがどうだとか、マウスパイプがどうだとか、吹きすぎるとばてるとか顎が痛いとか、なさけないネタが多くて恥ずかしい限りです。今はほとんど解決しています(のつもり)。

楽器ですが、私は高校生の時からアレキサンダー103ユーザーなのですが、ほどよい抵抗感のある楽器が欲しくて、ロータリーウエイト入れてみたり、ベルに銀メッキかけてみたり、ハンドハンマーを買ってみたりしていました。以前よりゴールドプレートが気になっていたのですが、これはアレキサンダー社に特注しないといけない(ゴールドプレートの値段設定あり)ので、高価なので注文して吹いてみてNGだったときのダメージがとても大きいと思うととても手が出ませんでしたが、たまたま楽器屋さんに中古の103GPが出ていて、とても状態がよく気に入って使っています。数年落ちでしたが、前のユーザーがあまり吹いていなかったようで、所々金メッキをやすりで削り取ってありその分安く購入できました。ただ、レバーや指かけの位置関係か持った感じがしっくりこず指が思うように動かないので、何とかしなければいけません。

ケースはアコードのケースを購入し、もう7年くらいになるのですが、まだ綺麗で今まで事故もなく高いけどその分長く使えそうです。もうケースどうしようと悩む必要はもうありません。

譜面台の高さですが、思うところあり数年前にぐっと下げました。目的は顔を下向きにするためで(以前は少々上向きになりがちだった)、それを習慣化するために以前より20cmくらい下げています。顔を少々下向きにすることで、一つは下顎が自由になり前に出しても顎関節とその周囲に負担がかからないこと。一つは舌骨とオトガイの距離が縮まるので舌骨上筋が緩んで口唇の過度な緊張がなくなるために音色がよくなること、もう一つは首(後頭部)の緊張がなくなって、その周囲の痛みが出ないこと。ということで、いろいろなことが解決しました。

マウスピースやマウスパイプもあんまり気にならなくなり、アンブシュアがどうのではなく、純粋に音色や楽器との相性で選んで使っており、今ならどんなマウスピースでも吹ける気がします。今までは、高音から低音まで同じアンブシュアを目標に一つのマウスピースにしていましたが、低音域では音は出てもそれらしい音(下吹きの専門家が出すような音色)を出すのは難しいことを悟り、曲やパートによってマウスピースを替えることにし、普段はシュミット8番とアトリエモモ33CX(シュミット8番がそのままちょっとだけ大きくなった感じ)を使ってます。


迷いもなくなり、そう簡単にはバテないし、こういう練習をどれだけやればどの程度まで持っていけるということを身に着けたので、何とかできるという安心感からか、むしろ普段は練習不足になってしまい反省してます、トホホ。

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