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October 2010

October 22, 2010

アダプターから見えてきたこと

前回紹介のホルンのための下顎前歯用アダプターについて、とても良い効果がありましたが、アダプター使用前後で各音域でレントゲンを撮らせてもらったので、レントゲンを分析してどうして音質が良くなったのか考えているうち、自分でも試したくなり、この2ヶ月アダプターを試作しては調整し、だんだんいろんなことが見えてきました。

自分用には8年くらい前にいろいろ試してみたことがあるのですが、その時は左右のバランスをとってコントロールし易くすることを主眼にしていたのでかなり薄い物だったことと、当時スランプで奏法自体に問題があったので、本来の効果が出なかったたであろうこと、自分でいつでも作ったり調整出来るので状態が定まらずもう自分の歯で吹こう!と心に決めたこと〜で、アダプターを自分で使うことをやめていたのでした。
アダプターの試作を始める前の1ヶ月間くらい咳が出てほとんどホルンを吹いていなかったというのもあるのですが、アダプターに慣れて吹けるようになるのに少々時間がかかりました。1作目は1.5mm厚で薄くとも下唇への圧迫感は大きくpや低音域に難点があったのですが、それでも良い点もあったので我慢して使い続けることにしました。3週間して少々厚くし改良した物(2mm厚)にし少し前の本番ではこれを使用しました。試作品を作っては調整するのでまともな練習をしていなかったのですが、さすがに本番前1週間はアダプターを固定してアンブシュア作りをしました。今使っているのは3日前に作った物で、今度は3mm厚。最初は下唇への圧迫感があって響きが死んでしまう感覚がありましたが、まだ音出しに時間はかかるものも慣れてくるとそれもなくなります。

アダプターの厚さの分、そのまま下唇が前に出るわけではありません。下顎が後ろに行く距離+下唇が前に出た距離=アダプターの厚さということになります。この配分は人によっても音域によっても違うようです。最初はどうしてもそれまでの顎位で吹いてしまうので、最初は下唇が痛かったりしますが、そのうち慣れてきます(下顎を後ろにして吹けるようになる)。慣れるのにどのくらいの期間がかかるかは、人によっても練習時間によっても違うでしょうけど、アダプターを作製後しばらく練習してから調整に来てもらった方が良い結果が出るかもしれないと思いました。

自分用にアダプターの試作品を作っては調整した過程で、もちろんベースには今まで歯の調整をしてきた経験がありますが、アダプターの長さ、厚さ、上の歯との関係、表面の形状、材料などなど、どうするとどういうことに影響し、こういうふうに作ると良い〜というのがなんとなくわかってきたので、それはいずれまとめるとして、今日は「なぜ音質が良くなるのか」について書きたいと思います。

1)下唇が出ることで上下唇の前後関係が良くなる。具体的には上下の前歯(ここでは上の前歯とアダプター)が前後的にほぼ揃った状態になる。上下唇の被りが変わることで上唇の振動部位の位置が変わり質が変わるのではないと想像する。下唇が後ろで被りが深いと音が暗く、逆だと明るくなるように思う。また、上下唇の被りが浅くなることで発音効率が良くなるのか音量が大きくなるようだ。

2)下顎をあまり前方に出さずに吹けるようになる。これは舌の位置に関係するようだ。下顎を前に出すと特に高音域で下唇が緊張して硬くなりやすいし、低音域ではさらに下唇に厚みを作るために下唇を緊張させてしまう。下顎を前に出さずにすむと舌骨が後ろに下がって舌骨上筋群の緊張しなくなるのでそれにつながる下唇の筋肉がリラックスするではないかと想像する。

3)下顎歯列の形態が変わる=アダプターを入れることで前歯部のカーブが変わる。これにより下唇(口輪筋?)の収縮の仕方が変わるように思う。下の前歯が直線に近いと下唇が収縮するときに中央に寄って硬くなりがちになるが、Rを小さくすると下唇が収縮するときに歯(アダプタ)に密接しやすく中央の柔らかさを保ちやすいようだ。

私の場合、例えばリップスラーで分散和音の練習をしても上に行く時に下唇に力が入るのを自覚していました。ものすごい練習して調子がいいと何とかなることもあったのですが、アダプターを入れるとそれが楽に上がれるのであります。今まで特に高音域では張った音になってしまいがちでそれが持ち味でもあったのだけど、どうしてもpでは硬くなりがちで、それがかなり改善されたように感じます。私はアダプタ無しでoverjet4mmくらいなのですが、2mmの物でほぼ標準の被蓋になり、3mmを入れると標準よりも浅くなるのだけどこれが一番効果がある。なんで今まで気がつかなかったのだろう〜〜早く気がついていれば、私のホルン生活はもっと楽しかっただろうに。

下顎前歯用アダプターは、下顎前歯の表面に足す物なので、対象は上顎前突(奥で咬んだ時に上下前歯の前後差=overjetが大きい:標準は2〜3mm)となります。日本人はoverjetが大きめなことが多く、overjet3mm以上なら効果が見込めるかもと思います。また、上の前歯だけ補綴処置をして下はそのままなんていう人にも効果があるかもしれません。
ただし、すべての人に効果があるわけではありません。ある程度はそれなりに吹けていないと上記のような効果は出ないかもしれません。特殊(?)なアンブシュアというか吹き方にアソビのないような人には向かないでしょうし。
上顎前突はそれなりに不利、標準の噛み合わせ(overjet)であってもそれなりの練習とセンスが必要、噛み合わせの浅い人は苦労しないでそういうことができるということかもしれません。今まで言ってきていた「受け口気味の人はむしろ金管楽器に有利」というのはこういうことなんでしょう。

次回はレントゲンの分析について書きたいと思います。

※自分で聴いた音や吹いた感じからの推察なので、客観的な評価ではありません。

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