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October 2008

October 27, 2008

上の前歯とクラリネットの角度

大学オケでバスクラリネットを吹いている学生さんが来院しました。悩みはマウスピースにパッチを貼るが片側だけ穴が開くので、パッチを張り替えると調子が悪くなるんだそうです。上の中切歯の長さは2本ともほぼ同じなんだけど、前後に段差があり内側にある方の中切歯でマウスピースを支えているのです。これは当然で歯並びに対して水平にマウスピースをくわえていれば問題ないのだけど、少々下向きになるので、同じ長さの歯であっても内側の方がマウスピースに付いてしまうわけです。彼女の場合は上顎前突気味なのでそうなりやすいしバスクラだと楽器の構えに自由度が少ないのであります。
そこで、内側にある中切歯の切縁を削ることと下の前歯にアダプターを試してくわえ方を変えることを提案しました。
オケでバスクラを担当するのは、普段普通のクラリネットを吹いている人が持ち替えをするものなので、彼女にはB管を持ってきてもらいました。ところがですね、アダプターを入れると全然駄目だし、前歯をホンの少々削っただけで音が出なくなるし・・・B管自体長年吹いていないらしく、普段からバスクラだけを頑張っているのですね。
萌出したままほとんど磨り減っていない歯だし少々削った位は全く問題ないので、まずは練習してもらうことにしました。バスクラでは左右の中切歯で均等に咬めるようになったということで、今度はアダプターも試したいということでした。慣れたバスクラではアダプターありの方が音質がまとまって良くなったので使うことになりました。

これまた最近アマチュアのクラ吹きが相談にきました。片方の側切歯が内側に転位していて、そこにマウスピースの先が当ってしまい深くくわえられないので音量が出ないのが悩みということ。楽器は下向きで、自分でも意識して下向きにして口をすぼめたアンブシュアにしているのだそう。内側の側切歯の高さがほぼ中切歯と同じくらいなので、楽器が下向きだと側切歯にぶつかってしまうとのです。
そこでまず楽器の向きを上げてみることを勧めました。前歯の咬み合わせ自体は浅めなので、その方が楽なはず。で、悩みはそれで解決。側切歯と反対側の中切歯の2点でマウスピースを支え、無理に口をすぼめずなくてもよくなり、しっかりとした音質に変わりました。上の前歯に対してのマウスピースの角度が垂直に近づいたことで無理な力がいらなくなったのでしょう。少々歯の切縁を削って調整すれば左右中切歯で支えることも可能でしょう。
後で聞いたら、本人は「もうこれは矯正治療をやるしかない!」と決意していたそうで・・・う〜〜ん、良かったのか悪かったのか。結局歯には何にもしませんでした。

クラリネットは2本の前歯で均等に支えることが出来た方が良いです。そのためには、楽器の角度に応じて前歯をほんの少々削るとよいこともあるし、楽器の角度を変えることで解決することもある、というお話でした。


#といっても、上の側切歯が内側にあるのがクラリネットのマウスピースに当るからと矯正治療をする人もいます。最近前歯がほぼ並んだ人がいますが、やはりかなり吹きやすくなったということでした。内側にあっても楽器の角度を変えることで解決しますが、逆に言えば内側に歯がなければ楽器の角度に自由度ができるということです。

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October 23, 2008

金管楽器の差し歯

私は一応矯正歯科専門でやっているので普通の歯科治療はしないことにしているのだけど、どうしても私のところで差し歯を入れたいという管楽器関係の患者さんもあり、根の処置がいらない場合に限りですけど補綴処置もやることにしました。
補綴処置というのはいわゆる取り外しのできる入れ歯の他に、クラウン(歯の周りを削って全体を被せる治療:いわゆる差し歯)やブリッジ(歯の欠損した前後をクラウンにしてダミーの歯をくっつける)をさします。管楽器奏者では、この補綴治療を受けるとき一番心配なのは治療前と歯の形が変わって吹けなくなってしまうことです。ですので、治療を受けるときにできれば下記のような手順をふむと安心と考えていました(当サイト「歯の相談室1998~99年」質問5に掲載。)
・まず治療前の模型を作る。
・土台を削り印象をとる。
・仮歯(テンポラリークラウン)を作る:この段階で楽器を吹いてチェックする(場合によってはいろいろ試みて形態を調整する)。
・形態が決まったら模型をとり(特に形態を変えない時は治療前の模型)これを模して技工してもらう。
・補綴物を仮着する:この段階で楽器を吹いてチェックする。
・補綴物を合着する(最終的な接着剤で)。

しかしですね、こういう形にしてくださいと技工所に参考模型を渡しても、そうは同じ形にはならないのです。隣の歯や対合歯、反対側同名歯があればまだいいのですが、最近入れたのは前歯全部しかも下の歯と噛んでない状態だったせいもあり、全然違う歯ができてきました。大手技工所の技工料の高い材料のいいものを選んでいるのでそれなりの人が作っていると思うのですがそれでもです。普通の歯科的には十分にきれいで自然な形の妥当な物だとは思うんですが、なんとなく丸みを帯びているのです。なるべく平面的に作ってくださいと指示書に書いておいたんですが。それにどう見ても短いし薄い・・・。ということで、硬質レジン前装冠にしてよかったですよ。充填用のレジンを盛り足して形態の調整をしました。
たぶん普段からたくさん補綴物を作ってもらっている技工所であれば、要望も分かってもらえるんでしょうけど、なにせごくたまになもので。丸みを帯びた感じがピンとこない方は「仮歯が吹きにくい理由」(08.2.26)の図を参照ください、ここまで丸くはないですけど。世の中の差し歯には天然歯よりも丸みを帯びていることが多いように思います。
前々から管楽器の方に差し歯をいれるときは、硬質レジン前装冠がよいのではないかと思っていて、というのは通常自費診療で前歯を直すときは大抵の歯科医院ではセラミック(ポーセレン)を勧められるのだけど、厚くなりがちだったり後で形態修整するのが難しいのです。硬質レジン前装冠は保険でもできるのであまりよくない物もあるけど、ちゃんと作ったものは色もいいし摩耗もしなくなってきているし何より形態の修正がしやすい。

#もちろんセラミックの方が高価で優れている点がありますので、できあがってから形態修正の必要がなさそうなケースでは硬質レジン前装冠である必要はないと思いますし、一般的には差し歯をいれて最初吹きにくくてもそのうち適応してそれなりに吹けるようになることが多いので、他院での治療に硬質レジン前装冠を勧めているわけではありません。

では、どのように形態調整をするか、私は音を聞きアンブシュアを見ながら直していくんですが、例えば上の前歯であればチェックポイントは以下の通り。
・歯の厚さ(唇舌的な位置):これを重要視する人が多いが、少々の違いはあまり演奏に関係しないと私は思う。並びよりも上下の前歯で一つの面を作れることが重要。
・唇側面の形態:上下的なカーブ、左右的なカーブとも天然歯のように。補綴物は丸みを帯びていることが多く少々平面的にする方がよいようだ。
・歯の長さ:まず中切歯を臼歯部とのバランス、上唇とのバランスを見ておおよその設定をし、アンブシュア(口角の上下的位置等)を見て決定する。歯を軽く開いたとき(アンブシュアを作るように上下の歯を前後的に揃えて)開きがほぼ均一になるように、またアンブシュアを作った時の下唇のラインに平行になるように各歯の調整をする。
・歯の角の形態:角に近いほど圧力の効いたハリのある音になり、丸くなるほど柔らかめのポアっという感じ。抵抗感や吹き心地を確認しながら三次元的に調整する。
・切縁の斜面、舌側面の形態は普通にしておけばよいと思う(どこまで関係あるかは私にはまだわかりません)。

#ようするに本来の歯の形であればよいのでしょう。

わかりにくい説明ですが、職人芸的なところもあるので・・・・といっても最近やっと見えてきた感じでして、今後変わっていくかもしれません。

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October 22, 2008

MRIで・・・

この土日は新潟に行ってきました。歯学部の同級会に出るのはホントに久しぶりであります。いつも土曜日の夜なので練習あるから行けないですよ。結構楽しかったです、企画してくださった皆さんどうもありがとうございました。次回は東京でやろうというので私が幹事になってしまったようなので、とりあえず私の都合に合わせて開催できます。
ウチのクラスからは2人教授になってまして1人は放射線が専門なのですが、MRIで音を聴いた時に反応する脳の部位がわかるそうで、専門家(奏者)でどう反応するかを調べたいそうです。彼ら2人の教授の元に同級生の多くが社会人大学院生として世話になっていて、私もどう?と言われました。もしMRIを使って研究できるならもっと違うことをやりたいです。でも、今現在これ調べたい!というのがないんです。以前は演奏時の下顎の動きを調べたくって下顎運動解析装置&筋電計を買ったのだけど今はさほど興味なく(想像ができるから)、アンケート調査をしてみようかと調べる項目を考えたこともあったけどそれっきりなのです。

少し前に内科医をしている後輩から「管楽器を吹くとき首が膨らむ機序は何か」というメールが来ました。M山先生から聞かれたのだそうです。
首が膨らむというのは横方向と前方向とあって、前方向はたぶん舌骨が下がって口腔底が膨らむのと広頸筋が緊張するためではないかと思うのですが、そのことを聞いているのではなく横に広がることのようです。たまに真横にぶわっと広がる人がいますよね(私はほとんど広がりませんが)。結果的にはそこの病院にG大生連れて行ってMRIを撮ったところ内頸静脈が拡大していたということで、個人差はあるが人によっては5倍くらいになるんだそうです。
MRIつながりで放射線の教授にその話をしたら、そりゃそうだろうねということでした。くしゃみをするとやはり内頸静脈が5倍になるのだそうです。

ということで、まずは奏者&指導者向けにアンケート調査でもしてみようかなと思っております。

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October 17, 2008

歯周病で歯茎が下がったら

少し前の話になるのですが、70歳にして現役のアマチュアオケマンのトロンボーン吹きが来院されました。数年前に前歯をぶつけたら1本前に出てしまい、唇に傷が付いてしまうというお話でした。
口の中は虫歯や歯周病で全体的に大変な状態になっていて、きちんと歯科治療を受ける必要があります。その出てきたという1本は接着剤で固定してありましたが大きな問題ではなく、おそらく元々上顎前突なのに加えて、臼歯部の歯が欠損しているのと歯周病のためにさらに上の前歯が前突してしまったと予想されます。
演奏時のレントゲンを確認すると下顎を前方に出し上下の前歯をほぼ揃えて吹いているようでした。
歯医者に全く行っていなかったわけでなくかかりつけの歯科医院もあったようなのですが、ご本人が吹けなくなると困ると主張されたようです。未治療のまま長い期間が経過し、さすがに直さなくちゃと思われたのでしょう、某大学病院にいる管楽器経験者を紹介してもらい、ようやく虫歯の治療を始めたはいいけど、大学病院でなかなか治療が進まないということでした。
気持ちはわかるのですが、そうなる前に是非きちんと歯科治療を受けて欲しかった。通いやすく親身になってくれるところであれば別に管楽器奏者の歯科医師である必要はないのです。それを自分の歯を大事にするあまりに、こんなことになっちゃたのでしょう。

そこで、下記の提案をし実行しました。
1)挺出している左上2番3番を短く削り周囲とバランスをとる。
-->中音域の雑音が解消し音の抜けが良くなった。
2)上顎前歯部の歯肉&歯槽骨が退縮した分を埋める。
-->アンブシュアの無駄な動きが減り自然に吹けるようになった。
3)下顎前歯のアダプターをためしてみる。
-->音質がよくなり結構吹けるので私は使うべきと思うが、ご本人はダメみたい。
4)根の治療中で歯冠の欠損した左下3番にアダプターを入れる。
-->下唇の支えができて高音域が楽になった。

「歯肉&歯槽骨の退縮を埋める」に関してですが、よく歯周病になって歯茎が下がると歯と歯の間に隙間ができてそこから息漏れがしてしまうと思っている人が多いんですけど、私はたぶん違うと思うのです。隙間を埋めると良くなると聞きますが、隙間が埋まり空気が抜けなくなるのではなく、厚みが変わり(=本来に戻り)上唇が密着しやすくなるからなのだと思います。
どうやって埋めるかですが、まずヘビータイプのシリコン印象剤を使ってみるのがお勧めです。薄く作れるしいろいろ試して丁度いい厚さを探すことができる。それで効果があればレジンで長く使えるものを作ればいいと思います。ある程度弾力が必要なので、私はマルチガードという少々軟らかいレジンで作製してます。

※そのうち写真を載せるようにしたいと思います。

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October 16, 2008

すぼめない

ドール&草津ネタは昨日のでお終いにしようと思ってましたが、ご要望ありましたので少々・・・

アンブシュアに関しては「カッコいいアンブシュアでないとカッコいい音は出ない」と言って鏡を見させてました。
私の↓「アンブシュア変えて」というのは、ドールに言われてではなく、アシスタントを務められていた守山先生にアドヴァイスいただいて大変ためになりました。
具体的には、私は昔から調子が悪いと左側から息漏れをするのですが、それを昨年夏のアレグリーニのコースで相談したところ下唇をすぼめるように言われたので、それを意識して1年間吹いていたのですが、「息漏れがするのは下唇をすぼめるからだ」と言われました。口唇をすぼめる力と引く力のバランスをとると考えていたのですが(ファーカスの本にもそんな感じで書いてありますよね)、アンブシュアを水平的でなく立体的にとらえ、下唇を下の中切歯と犬歯の間に密接させる感じにする。その密接の仕方を音によって変えるのだということ。

(すぼめるすぼめないといっても口角の巾を変えていないので、見てもわかんないくらいの違いです。)

どういうことかというと、下唇をすぼめようとすると口輪筋が緊張する。そうすると下唇だけでなく上唇の口輪筋も緊張してしまい、上唇に余計な力が入って音質が悪くなる。そうではなく、下の側切歯に密着させようとすれば主にオトガイ筋を緊張させることでアンブシュアを保つことができる・・・ということではないかと思う。

ということで、今の私の先生は鏡です。いかに余計な動きをさせずに吹くか・・・であります。

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October 15, 2008

今年の夏は

ご無沙汰しております。もう半年も更新していないので、もう誰も見に来てくれないかしら・・・。
3月に頸椎ヘルニアで首が動かなくなって以来、PCはなるべくいじらない&ホルンの練習もする気しない時期が続きました。夏になって首が動くようになり痛みもだいぶ良くなったので、思い切ってドールのマスタークラスを受けてきました。別に何の野望もないのですが、基本はレジャーとリハビリ、草津の温泉は首に効きそうですし。もちろん奏法の最新傾向を知ることと他の受講生の歯並びと演奏の関係を観察をするのも目的です(本当はただのミーハー、だってドール好きだし)。草津音楽祭は基本2週間なので普通に働いている私にとってかなり思い切りのいることでしたが、行ってよかった!!
私に限らず皆言われていたのは「息」「右手」「姿勢」。単純で初歩的ですけど、これが一番大事なんですね。どの受講生も音が激変していました。
レッスンは当然立って吹かなくちゃいけないのですが、数年前に買った楽器は小指掛けのみ可動にしたけど指が届かないままだし、ただでさえホルンの練習不足でスゴいヒドい状態だったのに、まずは立って吹くこと自体が大変でした。毎日朝8時半から練習して、疲れ溜まるし、アンブシュア変えてわけわかんなくなるし・・・でも東京に帰った時には別人のような音が出るようになってました。
今年は毎コンと重なってしまったので後半は参加者が少なかったのですが、ドールと4重奏も出来たし、最後はおばさん(=私)と高校生でステージのドールに花束も渡したし、ケースにもサインしてもらったし・・・楽しかったです!
立って&大きい音で練習をする、まずはそのための体力をつけるところから始めないといけないです。かえってさっそくゴムバンド(ドールがいつも楽器ケースにいれていて、レッスンで使ってました=腹の支えを保つ感覚を覚えさせる)を買ったのでした。
ということで、ためているネタを少しずつアップして行く予定です。

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