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March 05, 2008

金管用アダプターと音色の変化

この前ググっていたら、こんな論文(というか発表の抄録)を見つけました。
ミュージックスプリント装着による音色変化をデジタルフィルタリングで評価する試み(2004年日本医療情報学会)

ミュージックスプリントとは私がアダプターという用語を使っているものと同一のものです(ややこしいのでここでは「アダプター」で統一します)。発表の内容は簡単に言うと、1)アダプターを装着することで音色が良くなることが証明された、2)アダプターの効果の客観的評価方法が確立できた...の2点ではないかと思います。

私も昔、治療の効果を記録&評価するために、周波数分布を簡単に解析できる方法はないかなと調べたことがあったのですが、結局聞けばある程度わかるし、そのままにしていました。ビデオや録音でもいいので何かルーチンに記録したいとは思ってるのですが、余裕無しなもので・・・。
ここでは「音色」変化としていますが、楽器の音色というのは、この「周波数分析」で表されるもの(音質)の他に、音の立ち上りや減衰の音形(音量)とピッチやヴィブラート(音程)の3つの要素があるのだと思うのです。だからこの方法で評価できるのは音質なのではなかろうかと。
まあそれはどうでもいいことなので、音色で話を統一することとしましょう。
音色が良いかどうかを試聴し選択させるという方法についは、研究としてはいいんでしょうけど、日常の臨床では現実的でないですね。その楽器の良い音というのは「その楽器らしい音」ではないかと思うのです。もちろん、それに好みとかジャンルとかが入りますけど。だからそういうデータ(ヤマハとかが持っていそう)と比較分析できると簡便に判定できるのではないかと私は思います。

金管と木管(シングルリード)のアダプターの作用機序は全く違うので、この発表がトランペットですので今日は金管楽器のアダプターと音色について少々書きたいと思います。
私はこちらの病院で作製された金管用アダプターを3例程見たことがあり、またこの発表でも写真が掲載されていますので、それらから想像するに、どうも「前歯の並びをつるっと整える」だけのデザインであるようなのです。ともすると前歯がつるっとさせること自体がよい音につながると理解されがちと思いますが、それは違うのです。音色を決める要素の一つが振動する口唇の質や状態※(下に注釈あり)ですが、アダプターが直接口唇の振動に何か起こすのではなく、間にいくつかのステップあると考えています。つまり
アダプターを入れる-->リムの当たる位置が変わる-->下顎の位置が変わる-->アンブシュア(口唇周囲の筋肉のバランスが変わる-->振動する口唇の状態が変わる、とか、あるいは、アダプターを入れる-->口唇の位置関係が変わる-->アパチュアの位置が変わる-->振動する部位が変わる、とかいろいろなヴァリエーションがあるのではないかと思うのです。
だから、顎や筋肉のバランスを考えてアダプターを作るべきと考え、私がデザインで重要視するのは上下の関係なのであります。アダプターは加えるものなので、ある程度どうしても厚さが必要になるから、叢生を解消するだけのつもりがそれ以上の変化が起こるのです。だから、それがたまたま良い結果になる場合あるし、悪い結果になることもあるのだと思います。また、臼歯部用のアダプターは某所で多用されているようなのですが、これは音色が悪くなることがある。確かに楽に吹けたり息漏れしにくくなるかもしれないけど、口唇が横に引かれてしまうから。

この発表のケースについて申せば、これは想像ですが、左側(写真の右側)2番から4番が反対側に比べて舌側に入っているのが補われてちょうど口角を支える部位のバランスがとれたことが、演奏向上の要因と思われます。厚みが出たこともこの人にとってはよい変化だったのでしょう。しかし、装着前後で右下5番と左下4番の状態が違うのが気になります。アダプターを使用し始めてからかなり期間が経っているのではと思うのです。アダプター無しでも以前は良い音がしていたかもしれず、アダプターを使うのに慣れてしまうともうその状態に戻れないわけで、同時期にアダプター無しとありを比較してもあまり意味がないんじゃないかな・・・。

アダプターでつるっとさせることを単純に下顎前歯の叢生の改善と考えるとすると、私は叢生自体が音色を悪くしているのではないと思います。私の知っている美音系超一流奏者はむしろ下の前歯の並びはがたがた。おそらくそれを改善したら出なくなるでしょう。ああいう音のためには叢生であることが必要なのかとさえ思います。
下唇が傷つくとか顎がずれるあるいは下唇を前に出したいといった具体的な目的があればわかるのですが、叢生というだけで音色を良くするためにアダプターを入れることはナンセンスだと私は思います。困ってなければ叢生は気にしなくてもいいですヨ。


※この辺が正直言うとよくわからないのです。一般的に音色はアパチュアの形と相関があると言われています。口唇周囲の筋肉のバランスによってアパチュアの形が変わるわけで、たとえば口角を横に引くとアパチュアは横に広がり音色は薄く硬くなるけれど、横に引いたアンブシュアだと口唇が引っ張られてフレキシビリティがなくなり硬くなり振動する口唇の量も減る(=リムの中の口唇が薄くなる)ということではないかと想像しているのですが、アパチュアの形自体も関係あるような気もするし・・・・勉強不足でスミマセン。

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