« October 2007 | Main | March 2008 »

February 2008

February 29, 2008

演奏による首や顎関節の痛み

数ヶ月前にあるプロのサックス奏者にアダプターを入れました。
その患者さんは以前とある大学病院で矯正治療をして歯並びを直したのだけど、その後、顎関節と首の痛みに悩まされているということでした。顎関節症としては結構ヤバそうな音(普通はカクッというのだけどミシミシと軋轢音)がするので関節円板自体の異常が疑われ、とりあえず以前通院していた大学病院で相談することをお勧めし、アダプターで演奏時の顎への負担を減らしてみることを提案したのでした。その後矯正をした大学病院でまた別の大学病院の口腔外科を紹介され次回検査をすることになっているそうでした。演奏後には首と顎関節周囲に痛みが出るのでサロンパスを貼って演奏活動を続けているようでしたが、そのサロンパスも貼りすぎて皮膚が炎症を起こすまでになったそうです。
歯並びは矯正しているので一見綺麗に直っているのだけど、サックスの向きに影響する下の前歯の切縁のラインが傾いており、噛み合わせた時の上下前歯の右側が開いている。実際演奏時のレントゲンを見ると、マウスピースが左右で傾き上右の前歯だけで咬んでいることがわかります。
そこで下の前歯の切縁の傾きを是正し、上下前歯が均等に咬めるように調整したアダプターを作製し、試奏してもらった。とにかく楽!とのこと。このくらい楽なのであれば、大学病院に行くのはやめます!ということでした。
で、その後の調子はどうかなと、メールで連絡を取ったところ返信をいただきまして「いろいろ試行錯誤はしているが、本番が多いときや練習時間を増やしたいときに着用をしている。着用すると疲れない。顎関節痛と筋肉痛はだいぶ治まってきた、奏法上の問題によることが多かったようだ。」ということでした。
アダプターにより演奏時の筋肉のバランスが変わって、そうするとアダプター無しでもそのバランスで吹けるようになり無くても大丈夫になることがありますので、そういう使い方で私はいいと思います。

追記)6/3にメールをいただきまして、今は練習時だけでなく本番でも使用し、演奏後も疲れることがあまりなく、連日の演奏にも対応できるようになったということです。
080229

首と顎関節の痛みというと、私のサイトを以前から読んでいる方は「そういうあんたはどうなのよ」と思われるのではないでしょうか。実は私、以前はオケの練習や本番でたくさん吹いた後は、決まって後頭部から首にかけて痛くなり(低音の続く時は顎関節も痛くなった)、それに酒を飲むとさらにひどいことになって、湿布を貼りながら演奏活動をしていたのです。もちろん首が痛いのは楽器演奏だけが原因ではないのですが、+ホルンを吹くと悪化していたのであります。
それがですね、この半年くらい平気なのですよ。首は別の原因で時々痛くなりますけど自分で鍼打ったり薬飲んだりしてコントロールできる程度で、以前のように練習や本番の翌日ひどく痛くなるということは全くなくなりました!!どんなに吹いてもバテないぞって感じです。
まず一つはマウスピースをボアの小さい物に変えたこと。半年くらいどんな高音も低音もこれ(シュミット8番)1つで吹くようにしてます。そのことで微妙に顎の開きが小さくなって顎関節の負担が少なくなったと思います。
もう一つは左手の持ち方を変えたこと。私は高校生の時からずっとアレキの103を使っていますが、その最初の1本目がレバーがとても遠い楽器で掌をレバー側に被せて吹く(そうすると左ひじが上がる)習慣がついていたのです。それを掌に楽器を乗せて吹くようにしたところ肩等への負担が減ったと思います。
そして何よりもアンブシュアが安定してきたこと。今まで微妙に下顎が左にずれ首が右に傾いていたのですが、下唇が安定して息漏れもなく真っ直ぐ吹けるようになりました。少々歯並びが左右非対称であろうと凸凹があろうと奏法さえよければそれなりに吹けるのだと思います。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 27, 2008

折れた歯はこんな感じで直ります

仮歯(↓の記事)を直していた隣のユニットの患者さんは矯正治療中の音大志望のトランペット。最初来た時上の前歯1本折れたままになっていたのです。折ってから1年近く経ってたのですが直してもらえなかったそうです。矯正治療始める前にまずその前歯をレジンでリアルに修復しました(下の写真)。それだけで吹きやすくなったそうだし、それより見た目が随分よくなりました。
080227













丁度その前の患者さんは管楽器と無関係な患者さんだけど上の前歯2本折れていて、近所の歯科医院からの紹介で矯正治療後に修復しますと手紙がついてたのだけど、2年間も折れたままなんてあまりに気の毒だったので、その日装置をつける直前にレジンで修復したところでした。
つまり、前歯が折れていると歯の神経が無事であってもクラウン(歯の周り全体を削って被せる;いわゆる差し歯)で修復する歯科医院が多いのです。基本的に歯肉の位置が落ち着く18歳以降に治療するので、中学生だと放っておかれるのです。また、最終修復物は矯正治療後に入れる方がよいので矯正前も放っておかれるのであります。
以前にもクラリネットを吹いている学生さんが来まして、「中学の時前歯を折ったのだけど、18歳にならないと治療できないと言われました。18歳になったので直してください。」と言われたことがあります。気の毒にそれまで上の前歯1本で支えて吹いていたのですね。折れた歯をレジンで修復して吹きやすくなったと喜ばれたことがあります。
もちろん後で取れたりかけたりする可能性はあるかもしれませんが、神経や歯質をそのまま残すレジン修復は望ましい治療法(MI臨床参照)といえます。私の経験では、弱いので管楽器奏者に適さないということはありません。万一壊れたら直せばいいんだし。管楽器を吹くには丈夫な差し歯の方がいいと考える人多いですけど、そんなことないと思います。
しかし正直言ってどこの歯科医院でもこの程度のことをしてもらえるわけではありません。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

February 26, 2008

仮歯が吹きにくい理由

今日はピアノ系の雑誌が吹奏楽の特集を組むというので取材にきました。読者の中高生の多くが吹奏楽部に入っているからだそうです。何の準備も無くいろいろ話しましたが、以前のことは覚えてないもので(?)昨日来た患者さん達の話をしました。

昨日は予約が詰まっていたのだけど、どうしても!(仕事に支障があるんでしょう)というのでトロンボーンの人が来ました。以前上の前歯が1本出てきたというご相談で根尖病巣(根の先に膿みが溜まっている)の治療をまずするよう話したのですが、他院で根の治療の前に差し歯を外し仮歯にしたら吹きにくくなったというのです。
その仮歯(暫間クラウン)を見ると、良心的に作ってあって歯科的に及第点以上の形態をしていますが、上下的な長さが少々短くて唇側面が丸い感じ(図は咬合面から見た所:図の右側が仮歯でもう一つは天然歯)。レジンを盛って直しました。長さにしてせいぜい0.5mm弱だけど特に高音域の出しやすさに影響が出たようです。唇側面の両脇の形は2次元の図では表現できないんですが、ここのニュアンスも大事ですね、調整の仕方で音色も変わります。
仮歯の図



根の治療中はその歯に力がかからないように短めに作ることが多いと思うし、暫間クラウンは既製品を使って作ることが多いのだけど、この既製品何となく唇側面が丸いんですよね(適合と調整のしやすさのためかな)。だから普通に仮歯にすると調子悪くなることは多いと思います。

マイブームなのか記事のアップは続きます、乞うご期待!最近頻繁にアップしてるのに、アクセスが増えないので残念(そりゃ長いことほったらかしにしてたからサ)。そのうちPC打ち過ぎによる肩凝りでギブアップするかもです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 22, 2008

ドッペルの出る歯並び

この前関西から「ドッペルが出る」を主訴にトロンボーン専攻の学生さんが来ました。
ドッペルについては2004年の「たわごと」で、「犬歯が極端に前方に出ていると、アパチュアと口角の間の口唇が前方に出て浮いてしまいアパチュアが余計にできてしまうのが原因ではないか」と書きました。その学生さんはその記事を読んでなかったということですが、自分で下の犬歯が前方に飛び出ているのが原因と分析していました。
私の経験では上の歯並びが原因のケースばかりでしたが、彼の場合は明らかにリムの外は下唇が前に出て上唇に被さっています。通常金管楽器の演奏時は上唇が被さるのがまれに受け口でなくとも下唇が被さる人があり(「下唇を出して吹く人」)、口唇の被さりを逆にして吹く人は口角を大頬骨筋でコントロールするのが特徴で彼もそうなってたし、それで被さりが逆なので下の歯並びが影響して同じことが起きたと私は考えたのです。
2004年にも書いているのですが、出ている犬歯に関しては矯正でもしないと改善は難しいと説明した上で、アダプターを試してみることにし下の前歯部分に厚みを出して犬歯との位置関係を整えたのです。結果は少々ドッペルは減ったけどさほどよくなりませんでした。

彼は2年前から他の歯科医院に通っていたのだけど全く効果がなかったのだそうです。1つの歯科では片側上下臼歯部のアダプター。たぶん「吹き溜まり」(?)を防いで何とかしようとしたのでしょう。両側に臼歯部のアダプターを入れると口角間の距離が広がり口唇の緩みが減少するので多少の効果は見込めるとは思いましたが、根本的な解決にならないので私は試しませんでした。もう1つの歯科では上下の側切歯の凹みにアダプターを入れて上下前歯の並びをそれぞれつるっとさせてみたようでした。まああまり効果ないでしょうね。その後「キャビトン」という歯科治療で使う仮封剤を瓶ごと渡され自分で詰める様に指示されたそうですが、口の中でボロボロしてあまりいい感じはしなかったそうです(でしょうねえ)。

結局出ているものを下げることはアダプターにはできないけど、それでも私の試作品はもうちょっと効果あるかなと思ったんですよ。なので原因をよーく考えてみました。
おそらく全体的に上唇に下唇が被っているという前提が間違っていたのでしょう。演奏時のレントゲンでは上の前歯のほうが前方ですが、下唇の厚みのせいで逆になると思ってしまいました。リムの中の上下唇は正常で上唇が被っているけどその脇は逆転して下唇が被っているのでしょう(唇が3つある感じ)。
それでも下の前歯部分の厚みをつければ下顎を後方にしてアンブシュアを作れるので相対的に下の犬歯が下がるとも思ったのですが、あまり下顎の位置は変わらなかったかもですね。かといって下の前歯にもっと厚みをつけて全体的に下唇が被るようにすると全然吹けなくなるでしょうし。

さっそく自分用に彼と同じように下の犬歯を4mm程突出させたアダプターを作りトロンボーン用リムでバズイングしてみる。私は普通に吹けるけど、下唇を緩めるとリムの両脇にアパチュアが出来て3つ音をさせることができた。
アンブシュア的には下唇を中央に寄せる感じにして下唇の下の筋肉をしっかり使えるようにするのが解決策だろうし、もしかしたら楽器を下向きにして下顎を後ろにして吹くようにすれば少しはよくなるかもしれない。しかし4年間いろいろやってきて今更アンブシュアを直せというのもねえ。小臼歯を抜歯して矯正して下唇を下げるのが本人納得できる唯一の手段かもしれません。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 21, 2008

キレイに治療されても

土曜日は定期的に通院してくる矯正治療の患者さんのために時間を使わなければいけないので、管楽器関係のご相談はなるべくご遠慮いただいていますが、この前の土曜は青森からトランペット1名どうしてもというので治療しました。
彼が来るのは4回目。1回目は前歯の叢生についてアダプターの相談で模型をとってあったからよかった。2回目は青森で前歯の治療をしたら調子が悪くなったというのですが、元々上の中切歯2本を治療してあって少々アンバランスだったのを、歯科医が良かれと思ってきれいにしたものだから、中切歯の中央の位置が変わってしまったんですね。模型を参考に手直ししました。3回目はその歯の表面をつるっとしたいと青森で一層レジンを持ってもらったようなのですが、段差が気になると来ました。少々削って磨いて納得してもらいました。と同時に上の小臼歯の頬側咬頭をわざわざレジンで形態を回復したら不調になったということで、削って解決しました。
それで4回目のこの日は中切歯に詰めたレジンがかけたとのこと(私が詰めたところではないです)。青森で治療しては直しに来ることになるので、今回は最初からウチに来たようです。残っているレジンを一部削って詰めなおすことにし、とりあえずかけた所を少々整えた時点で吹いてもらいましたが、音がやわらかめで本人NG。レジンを盛って普通の歯の形にして吹いてもらうと随分音質違いますね、張りとつやが出ました。思ったより手間がかからなくて良かったです。

上の前歯の形態と金管楽器の音質の関係はアンブシュアとの兼ね合いがあるので簡単に説明ができないのですけど、音質に関係がある要素の一つが「歯の角の形(切縁隅角)」です。ここが何らかの原因でかけているのを本来の形に戻すだけで音質が変わります。具体的には、この隅角が角に近いほど圧力の効いたハリのある音になり、丸くなるほど柔らかめのポアっという感じになります。上の中切歯だけでなく側切歯も結構影響があります。特に困ってなければ、音質を変えるために歯を削ったりレジン盛ったりすることを勧めませんが、歯がかけて放ってあるとか治療したけど不自然な形とかであれば、調整をしてみるといいかもしれません。

もう一点、上の小臼歯の頬側咬頭が何に関係あるかです。ご本人がいうには治療されてから音程が上ずるようになったということ。元々の歯並びがその歯一本下に伸びていて(歯科用語でいう高位)それが噛んでいるうちに削れて他の歯と高さが合っていたのですね。それを歯軋りで歯が削れてしまっているとその歯医者さんは本来の歯の形に戻したわけです。削れるべくして削れたのだから、私には何でそんな治療をする必要があったのか理解できませんが、それは置いておいて。上の小臼歯が下に伸びるとアンブシュアの口角の位置が下がるんでしょう。それで普段と違う力がかかって音が微妙に上がったんじゃないかと思います。小臼歯の上下的な位置というのは結構アンブシュアに影響がでるのですね。

その土曜日ですが、診療室で自由にトランペット吹いてもらいましたけど、いいんです。隣のユニットの患者さんはチューバを吹いている青年、待合室はトランペット工場にお勤めの方なもので(いずれも矯正治療中)。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 15, 2008

ある日の診療風景

すみません、久々の登場です。
テーマを決めてうんちくを書く程の余裕がないので、こんなのどうでしょう?「ある日の診療風景」。ということで、今日のお仕事の内容を少々・・・

今日の1人目は、クラリネットを勉強している学生さんのアダプターのセット。
最初上の前歯を削ってほしいと来院された。楽器を曲がって構えているため、安定せず鳴りにくいとのことであった。確かに上の前歯1本が捻転していて、2本で当てるためにはかなり削るか削っても駄目かというところ。楽器が傾いているのは下の前歯の影響が大きいのでアダプターを勧めたところ「アダプターは使ってみたけど駄目だったんです!」とのこと。話を聞くと2軒の歯科医院でアダプターを作ったということで、特に管楽器に詳しいというわけでなく近所なので(学校の先生に勧められて)行ったということ。見せてもらいましたが「こんなの意味ないじゃん」という感じのデザインでした。下の前歯の唇側と舌側を全体的に被っていて高さは切縁まで(切縁部分が開けてある)。顎が疲れるので削ってもらったということでしたが、それでも違和感があって使えないということでした。素人の人は前歯の叢生があると前後的な段差が問題と思うんでしょうけど、あんまり関係なくて上の面の方が重要なんですよ。その人はベル上向き気味だからなおさらだし、特に咬合平面に対して下の前歯部(犬歯から犬歯)が左右で傾いているのを直さないと曲りは直らないし。前のは管楽器に詳しくない人が作ったので良い結果が出なかったと思うよ、といってもウチで作ったからといって100%イイと限らない、たくさん作っているけど中には1人だけどうにも違和感があってダメという人いたしね、でもレントゲン撮ってよく考えて作るから試してみてはと説得し、今日入れたというわけです。
ばっちり楽器の曲りは直り、まとまった感じの音になりました。楽器の向きの融通が利くようになったし。本人も想像よりよかったというので、上の歯は削らないことにしますということになりました。

2人目は、サックス専攻の学生さんの相談。マウスピースパッチにすぐ穴があいてしまうので片方だけ強く当っているのではということ。残念ながらリードを持って来なかったので正確にはわからないけど上の中切歯2本で均等に当っている。少々削ってもいいかと思ったけど、たぶんアダプター入れて咬み込む力を減らしてあげた方がよさそう。私は患者さんの方から矯正と言わない限りは矯正を勧めないようにしているので、こんな説明をしたのだけれど、最後に「管楽器奏者はみんな歯並びいいし・・・」というので、なんだ歯並び直したいのか〜〜と思い、矯正した方が機能的にも演奏上も絶対いいので一応勧めました。でもとりあえず来月の試験で結果を出したいそうで、まずアダプターを試すことになりそうです。

3人目は、サックスのプロ奏者の方で矯正治療中の患者さん。演奏のためというよりも特に臼歯部の咬み合わせを良くするのが目的。少々下の前歯に叢生があるのが直ってきたので「どうですか??」と聞いたんですけど、吹きやすくなりましたよという答えを期待したけど「ソプラノを吹くと歯が動きます」ということでした。高音ほど圧力がかかるということですね。まあ、ちょっとずつ動きますからそんなに変化は感じないでしょうけど、矯正器具あっても演奏には差し支えはないようです。最近口内炎が出来やすいとか口臭が気になるということでした。唾液が出にくいかと思い薬飲んでますかと聞いたところ、花粉症の薬を飲んでいるということ。きっとそのせいですね。これからの季節は花粉症の管楽器の人は大変だと思います。

では今日はこの辺で。
(ウチの診療室は管楽器専門という訳ではなく、楽器と無関係の患者さんがメインです。)

| | Comments (2) | TrackBack (0)

« October 2007 | Main | March 2008 »