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October 22, 2007

ホルンは歯列形態に影響を与えるか

先月の矯正歯科の学会で上記タイトルの展示発表があった。
演者は音大でホルンを専攻したあと歯科衛生士学校を最近卒業し、衛生士学校の卒業研究を発表したとのこと。
研究の内容はというと、音大生20何名の歯列模型を取って幅と奥行きを測ってホルン吹いてない大学生と比べてみましたというものです。頬による側方からの圧力が歯列に影響をあたえるという仮定によるというもので、結果は上の歯列の幅が有意差(平均で1.何mmの違い)ありで狭いのだそうです。

確かに幅は有意差があったかもしれないが奥行き(専門用語では長径)もホルン群の方が小さく、2群間に歯の大きさに差があった可能性が大きいから幅の差は側方からの影響といえるのかどうか??矯正歯科医の見方をすると側方からの圧力がかかると幅が狭くなるだけでなく長径も大きくなるはず。もともとの歯列の大きさが2群で差があったと考えられるのでどうせなら幅と長径の割合の有意差を調べればいいと思うが、それは計算していないということ。日頃臨床していて歯列の大きさはいろいろであることを経験する。ちょっと歯列の大きいor小さい人が一人でも入れば、簡単に平均値は0.5mmくらい変わっちゃうしね。
ホルン吹いているときにどういう力が頬筋から歯列にかかるであるが、高音域ほど中央寄り(犬歯付近)に圧力がかかり低音に行くほど後方に圧力のポイントが移動して力も弱くなる。あまり理想的でない奏法(プロであっても)だと低音域では力がゼロになる。力の大きさのオーダーは忘れちゃったけど、頬筋の力すべてが歯列にかかるわけでない、というのは演奏時は口腔内の圧力が上がっているので頬筋はそれに対抗し歯列にかかる力は差し引きでそれほど大きくはないと思う。 また、研究対象は平均1日4時間吹いているというが、そのうち実際に歯列に力がかかるほどの音を出している時間はわずかと想像する。

私の経験では逆で、プロの金管奏者の上顎歯列は広い印象の人(四角っぽい歯列)が多い。 もしかしたら舌圧が関係しているかもしれない。特に高音域では舌の後方を上に持ち上げて(いわゆるシラブルですね)息のスピードというか圧力を上げるのだけど、大臼歯部に舌圧がかかるのだと思う。たぶん結構な高音域のみだろうし、舌後方を持ち上げられずに巧く吹けないという人も多くて個人差ありだろうけど、上手い人はそれができるんだろうな。
うちの診療室に某○響のホルンの患者さんの模型が置いてあって20年間の比較をしてみると、幅は変わりなし、長径が1〜2mm短くなってました(ちゃんとした計測器で測ったわけでないけど)上の前歯の傾斜が内側入っているのです。それも個人差ありだろうけど、上顎の巾が狭くなるようなことは明らかに起きていない。
想像するに舌の後方をちゃんと持上げることの出来る人は上の大臼歯部が広がるのではないかと思うのです(歯列がそういう影響を受けやすい中高生の時期)。ある程度まで広がると歯槽骨には頬側に皮質骨があるからそれ以上は広がらない、ということではないかと。

ということで、たぶんたまたま有意差が出ちゃったんでしょうね。たぶんこのレベルでは影響は出ないんじゃないかと私は思うのです。衛生士学校の卒業研究であれば結果(有意差あり)が出てよかったねですむと思うのですが、これを全国の矯正歯科医が見るとなると、フ〜〜ン楽器吹くと歯並びによくないんだと取られかねないのが心配であります。ただでさえ、矯正している子は管楽器を吹かせてもらえなかったりしているのに・・・。

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