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March 30, 2007

顎関節症で管楽器を吹くために(2)

もう一つ自分で出来ることとしては、楽器の角度を変化させることである。割と知られていることとしては、下顎を前に出しすぎると顎関節の負担がかかるので、あまり前に出さないで吹くために楽器を下向きにするということではないかと思う。
しかしながら、それをすると音が変わるという点でプレーヤーの立場からはあまり望ましいことではない。多くの奏者は、練習と演奏を繰り返し自分にとって良い音のするアンブシュアにたどり着いてその角度で吹いているのだから。金管であれば下顎を前に出さないで吹くと、口唇の被り具合が大きくなり、通常は音質が暗くこもった音となる。シングルリードも当然音色が変化するが、マウスピースと上の前歯の角度やリードをくわえる位置が変わるためではないかと思う(クラリネットは下向きにした方がそれらしい音になるることが多いように思うが)。フルートであればトーンホールの位置を変えることで下顎の位置を調整できると思うが、口唇の被りが大きくなることで息の角度が下向きになり、通常は音質が軽くなる。
顎の負担が小さくなる方向への顎位の変化により起こる音質の変化が、よい方向であればそれはやるべきであるが、そうとは限らないのである。しかし、顎関節症の症状が深刻であればそうも言っていられないわけで、どっちをとるかはケースバイケースということだろう。大したことなければ、演奏を優先して顎関節症と上手に付き合っていくことを考えればいいわけだし。

ということで私のところでは、アダプターを使ったり歯科矯正治療をすることで、前歯や口唇の条件が良いまま下顎の位置を楽にして吹けるようにしようということをしているわけである。場合によっては前歯をほんの少々削って整えるだけで顎の位置を変えることが出来る場合もある。

下顎を前に出しすぎる人の多くは、上顎前突:上下の前歯の位置が前後的に離れていたり、上下の前歯の被さりが上下的に大きい人であるが、逆に下顎が後ろに押し込められた状態で吹いているために問題になる人もいる。下顎の関節は構造上前方には出るが後ろにはほとんどいかないのであるが、下顎を後ろに押し込めた状態で吹くと顎関節周囲の血行が悪くなったり神経が圧迫されるのではないかと思う。下顎を後ろに押し込めて吹く人は、当然下顎前突気味の人に多いが、下顎下縁平面角の小さい(専門用語ですみません:つまりアゴのラインが水平に近い)人も顆路角が急なので下顎が前に行きにくいのが影響してその傾向があるように思う。

少し前に顎関節症に悩むトロンボーンの音大生が来た。骨格的にやや下顎前突気味だが前歯の噛み合わせはほぼ正常、楽器を吹いているところを見ると顔を少々上向きにして楽器を下向きにして吹いている。演奏時のレントゲンを見ると上下の前歯の位置関係は少々被り気味。おそらく顔を上向きにした方が下顎が後ろに行きやすいのでそうなっていると思われる。顔を上向きにするとどういうことが起きるかというと、下顎や首の後部の筋肉が緊張してしまう。それに加えて顎関節が関節窩に押し込められるので、顎関節とその周囲に負担がかかっているということである。ということで、意識的にアゴを引き顔の向きをまっすぐにして、楽器もまっすぐ前に構えることをアドバイスし、顔に対して楽器の向きを変えることで下顎が自由になることを期待して様子を見ることとした。
割と顔を下向きにして吹いている奏者は多く少々であればむしろいいのではと思うが、上向きだと首や関節に負担がかかるので気をつけた方がよい。自分の正しい顔の向きがわかならい場合は「耳の穴と目の周りの骨の凹みの下」(専門用語でフランクフルト平面=外耳孔上縁と眼窩下縁を結んだライン)が立った時に水平になるようにするとよいかと思う。

楽器の角度というのは顔の向きと顔に対する楽器の向きの2つの要素で決まるので、単純に楽器の角度の問題ではないのです。顎関節症のときに楽器演奏時の構えでチェックすることとして
・下顎を前に出しすぎていないか
・下顎を後ろに押し込めすぎていないか
・下顎の位置が左右のどっちかにずれていないか
・顔の向きが上を向いていないか
ということで、参考にしてみてください。確認したいときは演奏時のレントゲンを撮るとよいでしょう。撮るといろんな情報がわかるので、興味があればご相談ください。

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