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September 20, 2006

顎関節症だと楽器は吹けないのか?

管楽器奏者の顎関節症は、時にはとても深刻である。
痛いし口があまり開かないので思うように吹けない、それより何より治療先の歯科医師に楽器の演奏を禁止されてしまうことが大きな悩みとなる。そういった相談メールをいただきどう答えようか考えていたところで、ちょうど矯正歯科学会で顎関節治療を専門にしている先生の講演があり、回答のヒントとなった。顎関節症に関しての考え方や治療法は割と早いペースで変わってきているように感じる、常に新しい考え方を吸収しなければならないと思う。

メールの主は将来ユーフォニウムを仕事としたい高校3年生。1年前から顎関節症で関節円板の後方転位と診断されスプリント療法を受けている。一つの歯科医院では楽器を吹きながら治療と言われ、病院の口腔外科では楽器の演奏を禁止された。1年経っても症状は良くならず、痛くて吹けないこともあり2ヶ月吹いていない。どうしたらいいか・・・という切実なご相談。そこで、下記のような返事を出しました。

各患者さんの顎関節症の原因はこれ!と一つにしぼれるものではありません。ほとんどの患者さんは多くの原因を持ち重なることで発症すると考えられています。そうなると治療する側としては、その多くの因子の中から簡単に除去できるものからアタックしようとします。「管楽器の演奏」は教科書的に顎関節症の原因の一つとして認知されています。だから、その患者さんの症状が本当に楽器演奏を原因としているかは判らなくても取りあえず「やめなさい」と言うのが歯科医師の立場なのだと思います。
それではユーフォニウムが顎関節症の原因となっているかどうかですが、原因となりうるケースとしては演奏時の下顎の位置に無理がある、つまり極端な上顎前突や反対咬合の場合に上下の前歯をそろえるために顎を大きく前後的にずらして吹いているときや前歯の凸凹等が原因で下顎を左右どちらかにずらして吹いている時ではないかと思います。その場合の対処としては、アダプターや矯正治療で楽な下顎の位置で吹けるようにするか、吹込管の角度を変えて前歯の関係を無理にそろえないで吹く。また演奏時の姿勢(首の向きや肩のポジションなど)も大いに関係しますので、変な力が入っていないか楽な姿勢で吹けているかチェックしてみましょう。

楽器の演奏が発症の主原因でなくても、楽器の演奏が症状を悪化させることもあります。症状があるときは練習メニューを見直す。フォルテのロングトーンや跳躍系の練習は顎関節や周囲の筋肉に負担がかかりますので、これらの練習はお休みすると良いと思います。

それから何より楽器を一生懸命やっている人にとって、楽器を休む事自体が大きなストレスとなります。実はこれが一番良くないのではないかと思います。精神的なストレスが筋肉の緊張を生み症状が悪くします。楽器演奏と関係があるとしても、他の因子がなくなれば症状はよくなるはずです。どうか希望を持って下さい!!
(以下省略)

その講演の中で、顎関節症の原因として「下顎の偏位:楽器吹奏」として挙げられていた。つまり、ちょっと顎関節症について情報を得ている歯科医師は、管楽器が原因となるという知識があるということ。顎関節症は多因子疾患であり、管楽器演奏だけでなく噛み合せだったり姿勢だったり精神的なものだったりといったいろいろな原因が積み重なって症状が出る。噛み合せは不可逆的な処置、姿勢の改善は簡単なものではないし精神的なアプローチは難しい。だからまず歯科医にとってこの中で簡単に除去出来る因子である管楽器演奏がまず禁止されてしまうのだろう。
楽器吹奏で問題となるのは下顎の偏位(左右どっちかにずれること)だけでなく、大きく前方あるいは後方にずれることも問題であるし、そういった顎位で吹くあるいは力の入った無理な奏法で吹くことで周囲の筋肉に負担がかかることが問題だと私は思うが、それはとりあえず置いておいて。
管楽器の楽しみ方はいろいろある。上記の高校生のように管楽器演奏を禁止されれば将来の夢を断たれることもあるし、アマチュアだとしても多くは人生のかけがえのない楽しみであるはずである。以前にも、顎関節症の症状を書いた後でだから有名なY市のN先生の歯科医院を受診したいのでメールアドレスを教えてくれという相談メールをいただいたことがある。私はムッとしながらもNTTで電話番号を調べてはどうですかと至極普通にお答えしたのだが、すごく逆切れされた。それも理解出来ることで、大切な人生の友である楽器演奏を禁止されて将来が不安になり、精神的に不安定になっているのだろう。逆に言えば、そういうストレスに弱い人程顎関節症の症状が出やすいわけだし。
つまり、歯科医師が症状改善のために必要と思ってしたことが、症状悪化の原因に十分なりうるのではないかと私は思う。歯科医師としては、その患者さんと管楽器の関わりを知り、ただ演奏を禁止するのではなく、演奏時間を減らす・練習メニューを見直すアドバイスをする、管楽器のことを良く知らないと演奏時の顎位を変えるためのアダプターや歯の調整は難しいかもしれないが、演奏時のセファロX線写真を撮れればアドバイスもできると思う。

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