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September 03, 2006

下唇を出して吹く人

金管楽器において、演奏時はわずかに上唇が下唇にかぶさっていて、重度の反対咬合の場合逆に下唇が上唇にかぶさることがあるという話(05.4.14のブログ)をしたが、その唇のかぶさりが逆のケースがあることに気がついてから、当院に来院したトランペット奏者でかぶさりが逆になっている人を3人見た。結構いるのである。アンブシュアを見ると大体わかるのだけど、レントゲンを見て演奏時の上下の前歯の関係が逆になっているので確かだと思う。一人は骨格性の反対咬合だけどあとの2人はそうではなく、この前来た人はむしろ上顎前突であった。
不自然なアンブシュアではあるが、大学オケで現役で吹いているだけあって練習しているのかそれなりに上手に吹けるのである。そこで興味は筋肉はどのように働くかなのだけど、彼の吹いているところを見てホホ〜と思ったわけです。
口角を安定させて吹くために、通常は口角下制筋といった下唇の下の筋肉が活躍する。特に高音域に行く程口角が上がる(口角が上がれば上唇の振動部分が小さくなって楽に高音が出てしまうけど音質は低下するので望ましくない)のと拮抗するためか、口角下制筋の働きは大きくなると考えているのだけど、彼の場合は高音域に行く程口角を斜め上方に引く筋肉、おそらく大頬骨筋あたりがその役割をしているようで、高音域に行く程その筋が活動しているのが目に見えてわかるのである。逆に下唇の下の筋肉はいわゆる張れていない状態であまり使っていない様子。
つまり、上下唇のかぶさりが逆だと周囲の筋肉のバランスも上下逆になるのだということが推測される(もちろんそうでない人もいるかもしれない)ということ。

ところでもう一つ、では上顎前突なのになぜ上下唇のかぶさりが逆になったか、つまり下の歯をそこまで前に出して吹く必要があったのかが不思議なところなのですが、彼は高校生の時に関西で下の前歯にアダプターを作製しずっと使用していたのであります。アダプターの目的は下の前歯の軽い叢生で下唇が痛いということで、下の前歯6本を被う大きなもので当然それなりに厚みもある。普通だとアダプターが入るとその分下顎を前に出さずに吹けるので上顎前突の場合楽になるのですが、必要以上に下顎を出している状態。可能性としては、そのアダプターの影響で逆になっちゃたかもと思うのであります。歯科医は、アダプターで単につるっとさせるのでなく前歯の位置や顎位にも影響があることを理解して入れなければなりません。

それで、将来のことを考えるといわゆる正しい奏法に戻した方がいいのかもしれないと思ったりもしたけど、大学オケで吹けるのはこの時期しかなく今苦労してアンブシュアを変えるのはリスキィだなと、余計なことを言うのはやめたのでした。

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