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September 01, 2006

管楽器奏者の外科的矯正治療

この前、外科矯正の患者さんの手術の見学に行って来た。今までは歯学部の大学病院にお願いしていたのであるが、今回から当院近くの都立病院にお願いしている。普通の総合病院に口腔外科があっても小規模なことが多いが、そこは常勤の歯科医がたくさんいて研修医も受入れており「口腔科」と名乗って大きな診療科である。親知らずの抜歯をお願いすると入院して4本一度に抜いてくれることも可で、これは負担が少ないと当院の患者さんに好評である。科長の先生のご専門が外科矯正ということで、外科矯正の年間オペ数も大学病院の半数程度とかなり多い。ちゃんとオペ着に着替えて見てきました。口腔科の先生方、ご親切にしていただきありがとうございました。(手みやげを持って行くのを忘れました、ごめんなさい。)

外科的矯正治療(顎矯正外科とも言う)というのは何か簡単に説明すると、顎骨のバランスが悪く普通の歯列矯正だけでは噛み合せや歯並びをうまく直せない時に、顎骨のバランス自体を手術で変えて直そうというもので、通常は術前矯正(手術時に良く噛むよう並べておく;1〜2年間)、入院手術、術後矯正(半年間)という流れで行われる。
適応症としては外科矯正でなければ直せない時、歯列矯正のみでも直るが外科矯正の方がきれいに直る(主に顔貌が良くなる)時だが、大学病院ほど外科矯正を勧める率が高いように感じる。私は通常、手術ありとなしの場合の両方を提示して選んでいただくようにしているが、管楽器をやっている人には基本的に外科矯正を勧めないようにしていた。その理由は
1)手術の後に下唇麻痺を起こす可能性がある。
2)後戻り予防のため手術の際に咬筋等の咀嚼筋を剥がすことがある。
3)デンタルコンペンゼーション(顎がズレている分を補って少しでも噛み合うために歯が傾斜している)を術前矯正で戻すことにより、手術前に上下の歯の関係がさらに悪くなる。
4)今までにケースがない。

見学に行き話をうかがったところ、一昔前と違って麻痺の起こりにくい手術法になっている、咀嚼筋を剥がすことはめったにしないということ。手術時間も入院期間も短くなり患者さんの負担もリスクも以前から軽減しているように思う。
今回のケースでは、本来なら(各種値を標準にし左右ぴったり対称の顔貌にするためには)もっと大掛かりになるはずだが、治療目標を咬合の改善だけにし必要最小限の移動量にすることで1、2のリスクを軽減した。
3に関しては、術前矯正なしで手術をしてもらい、リコンペンゼーションのために演奏しにくくなることを回避することができた。最近は術前矯正なしで手術という方法も学会で市民権を得つつあるようである。
今回外科矯正でないと直せない、本人も楽器演奏以前に噛み合せを気にしていた、ということでこの治療方針に踏み切った。矯正器具を半年後には外す予定でトータル治療期間半年という早さも勧めた理由である。
問題は4で、この後矯正器具以外(急に噛み合せが変わること、手術自体の後遺症)が演奏にどのくらい影響があるかは未知数であるが、今回は問題になる可能性は低いのではないかと期待している。

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