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June 2006

June 28, 2006

連携

今週の日曜月曜、とある矯正歯科関係の学会に行って来た(私は非会員)。テーマは「連携医療」。歯科の中にもいろいろな分野の専門医があるわけで、矯正歯科医としてどのように他と連携し専門医としてやって行くかということである。
講演の中には究極の歯科治療のような見事な出来のものもあった。いろいろなニーズがあり、また保険制度の縛りの中で、また患者さんの負担とのバランスの中で、何を大切に治療をするかというのは状況によって違うとは思うが、そういった治療結果を生むための手段と学術的な根拠に関する知識を、歯科医として持たなければいけないとは思う。もちろん私は矯正専門開業をしている以上、周囲の歯科医師やその患者さんのかかりつけ医と連携しながらの治療となり、現実として専門医とだけ連携するわけにはいかない。

で、話を聞きつつ自分に当てはめ、いろいろなことを考えた。

私は一応矯正歯科専門開業をしているという点で矯正歯科専門医である。が、同時に管楽器奏者の歯科治療に関してそれなりの専門的な立場にある。いろいろな経験をさせていただいた上でわかったこと、自分が奏法について考えていることなどを活かしてやっていることは、社会に還元しなければいけないと思う。また、矯正歯科医ならではの治療のアイディアを管楽器奏者に応用することもしている。とはいえ、未だにわからないことも試行錯誤中のこともたくさんある。
少し前に、やはり自分で歯冠修復(いわゆる差し歯、被せ物)までやらないと、管楽器奏者の役に立ちにくいのではないかと思い、ある程度の道具や材料を揃え技工所をあたってみたとこがある。しかし、管楽器奏者の歯を考えるという専門家であるためには、すべて自分でやろうとするのではなく連携を考えないといけないと考え直した。アダプターをいれたり数回ですむ歯の形態修正や、通院は月に1回の矯正治療なら、少々の遠方からでも通院可能だが、通常の歯科診療はある程度の通院回数が必要で普通の社会人なら通いやすさが重要である。そういったかかりつけ歯科医とどういった連携をしていくかということだろう。
また、歯のことよりも奏法の問題、つまりプロによるレッスンを受けることの方が必要と思うことも多い。しかし残念ながらレッスンでアンブシュアについて全く言わない人もいるようだし、歯なんて関係ないよと理解のないプロ奏者も多い。私のところには各楽器に(多くは音大の先生も兼ねている)自分の弟子を送ってくる人が1人位ずついるのだが、そういった方々の協力を得ていくことも必要だろう。中には、自分では歯が原因と思ってるけど、アンブシュアと練習方法と何より練習しなさすぎの方が問題の愛好家も多く、上手くなろうという気持ちのない人には無駄かもしれないけど。
そして、他科との連携。これに関しては整形外科の先生が耳鼻科と歯科とグループを組んで芸団協と連携をすることを企画しているが、2年前に演奏家医学シンポジウムを開いてからは進展していない様子。私としては特に精神科や心療内科との連携が必要と感じることもあり、今後いろいろな情報を得て行きたいと思っている。

学会のパネルディシュカッションで、「自分と同じような価値観の人間と連携するとよい」というコメントがあったが、そういう仲間作りをしないといけないということなんだろう。

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June 27, 2006

管楽器とジグリング

聞いた話なのだけど、少し前にとある研究会でとある有名な矯正歯科医が講演の中で「私は矯正患者が管楽器を吹くことに反対である。別の楽器をやればすむだろう。なぜなら、ジグリングを起こしオープンバイトになるからである。」という話をされたそうだ。もちろん又聞きなので、ニュアンスが違うかもしれないことをお断りしておく。
ジグリングというのは歯を揺さぶることで、矯正歯科で問題となるのは、舌癖や咬合力等によって歯が前に押し出される力と矯正力によって歯を後ろに下げる力が交互にかかり、歯根吸収(根が短くなる)を起こす可能性がある場合である。

大きな誤解がまず一つある。管楽器すべてをひっくるめて論じていること。フルートは問題となるような力が歯にかかることはないと言っていいと思う。金管楽器の場合、奏法によっては前歯に圧力がかかることがあるかもしれないが、むしろ歯を動かすのと同じ方向に力がかかることが多いので治療上問題にならない。クラリネットやサックスでは、確かに問題となる力がかかる可能性はあるかもしれないが、すべてではないと考える。

私の経験で、クラリネット/サックスで矯正治療の終盤にオープンが残ってなかなか咬んでくれなかったことが2例だけある。一人は音大生で演奏時間が長いのにマルチループを入れたものだから、ワイヤーの形に歯列が動いてオープンになってしまったのであって、ジグリングフォースの影響ではないだろうし、幸い歯根吸収はほとんど起きなかった。一人は矯正治療途中でサックスを始めたのだけど、それを私は知らなくて、元々III級傾向なのに何でジェットが残るのだろう(ほんのちょっとだけどね)と不思議に思いつつディテーリングで改善、装置を外した後に聞いて納得したということがあった。
思うに、上顎前歯の唇側傾斜が強い場合にクラリネット/サックスでジグリングフォースがかかる可能性は確かにあると思う。問題となるのは矯正治療終盤なので多くは唇側傾斜が改善されており、どっちかというと圧下力がかかることでオープン気味になるのではないだろうか。クラリネット/サックスで演奏向上目的で矯正治療をする人の多くは上顎前突でバイトが深いので、それが問題になるケースは少ないように感じる。私は経験はないが、オーボエでオープンが直らなくて困ったという話を聞いたことがあるが、これも口唇が介在することで圧下力がかかるためなのではないかと考える。
前歯の傾斜と楽器演奏時にかかる力の方向を考慮し、ワイヤーやエラスティックの配慮をすれば、そういった問題なしに治療ができると私は思う。

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June 21, 2006

クチビルの厚さとリムの位置

ちょっと前にコルネット(古楽器)のためのアダプターを作った。モダンの楽器では必要なかったのだが、コルネットではリムをほとんど口角辺り、犬歯と小臼歯部に当てて演奏するのだそうで、そのため八重歯だった犬歯を抜歯したら、今度はその前後の歯がやや内側にあるのと抜歯後にスペースが残ったため、補正をしたいということであった。
ではなぜ、そんな極端に脇の方で吹くかであるが、クチビルの厚さの関係らしい。コルネットのマウスピースは小さな象牙製でリムも薄い。中央付近では厚すぎで脇にずれると薄くなってそれらしい音がするとのこと。

金管楽器のマウスピースはクチビルのぴったり中央(水平方向)に来るわけではない理由としては、良い歯並びであったとしても、上唇の形(=真ん中が尖って長い)の関係でアパチュアが中央からほんのちょっとずれる必要がある(つまり中央部分がアパチュアの端に来る)ということなのではないかと考えている。もちろん、歯並びの都合でリムの座りによってずれることもあるだろうし、上顎前突の場合には上下の前歯の位置関係の良いところで吹くためにずれているケースも多いように思う。
この他に、なるほど口唇の厚さの良いところを探すべくずれる必要があることもあるのだなということです。モダンの場合は、それをマウスピースの選択でカバー出来るのではないかと思うが、出したい音質を出せるのがずれたところ・・ということのあるのであろう。

当院にて矯正治療中のトランペッター、リンガルブラケットで治療していてレベリングも終わり今は少しずつスペースを閉じながら前歯を後ろに下げている段階なのであるが、たびたび演奏上の不調を訴えて相談に来る。器具自体は大きな影響はないし歯並びはあまり変化していないので、矯正治療をしていなくても起こりうるスランプであるが、どうしても歯の方に意識が行ってしまってなおさらドツボにはまってる様子。そういう気持ち面もあるけれど、もしかしたら使う口唇の位置が変わったこともあるのかなあと思ったわけです。つまり、以前はかなり右にずらして吹いていたが、歯並びが良くなり真ん中よりで吹けるようになった。息をまっすぐいれたいので意識的に真ん中に持って行った。元々クチビルは厚めでマウスピースも以前と同じ物を使っている・・・もしかしたら彼にとってはずらして吹いていた方がよかったのかもしれない。まあ、真ん中で吹くメリットもあるしそうしたい気持ちはわかるんだけどね。

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June 19, 2006

オジサン世代

少し前に、私のHPを見たという人からもらったメールに、お体をお大事になさってください」と結んであって、ああそうか、何だかブログに不健康ネタが続いていたなと反省(書いてるのはたまになんだけど)。私くらいの世代だと飲んでも病気の話になるしね。本人は元気に楽しく毎日を過ごしておりますのでご心配なく。


最近の若者の管楽器奏者は、皆良いアンブシュアをしている。指導者が行き渡っているのであろう。
私くらいの年代の若い時というのは横に引き過ぎのアンブシュアが多かったように思う。無理に高い音を出そうとして横に引く、押し付ける。悪いアンブシュアの典型として横に引くアンブシュアがあって、かなりの割合でいたように思うが、今の若者で見ることは少ない。

私の所に相談に来る人には、まず最初に問診票に記入してもらって話を聞いて、大体の演奏の腕を予測して、歯並びを見て、じゃあどうするかという話をする。ホントならまず楽器を吹いてもらった方がいいのだが、最後にルーチンで楽器を吹くところのレントゲンを撮るので、そのときまとめて吹いている状態を観察している。そうすると、想像と実際のアンブシュアとかけ離れていることがたまにある。
このところ、ベテランな割にアンブシュアが横に引き過ぎ力入り過ぎというケースが何人かあった。また、私の経験では、大人になって初心者で管楽器を始めた人は、ちゃんと専門家に習ったり正しい知識を持って始めるのでむしろいいアンブシュアをしていたりするのだけど、そうでなかったりとか(よく聞いたら手ほどきを受けたのがやはり同じくらいの年代の素人からということ)。
で、そういう世代(30代後半から40代)にその傾向が強いなあとつくづく思ったわけです。普通、これくらいの世代では中学くらいで専門家に教わることなく管楽器を始めることがほとんどで、今でも続けている人というのはそれなりに上手くなれた人なのではないかとは思うのだけど、特にこれくらいの年代になると若いときは吹けてもだんだん出来なくなることがでてきたり、そうすると無理なアンブシュアになってなおさら横に引いたりするんだと思う。
となると、演奏の状況を見ないで治療法・対処法の説明をした後で、あああんなこと言わなきゃ良かった、歯をどうこうよりアンブシュアと練習方法が問題だなあ!と思った時には既に遅く、本人はすっかり歯の形態修正あるいはアダプターという希望の光を見ているわけなのであります。
そういう時はどうするかですが、予定通りやりますよ形態修正かアダプター、今更がっかりさせられませんから。それでも、吹くための条件をよくすることは可能なので、力んだアンブシュアであっても吹きやすくはなります。それで演奏の楽しみを見いだしてくれればよいなあと思っております。

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