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November 29, 2005

咬合力と管楽器

たまにであるが、歯学部の学生さんから「自分も管楽器を演奏していて将来はそれに関係した診療をしたいんです」という内容のメールをもらう。最近メールをいただいた学生さんは、授業でやる研究で管楽器を吹いている人の咬合力を調べるということであった。そういえば返事を出し損ねていた、ゴメンなさい。咬合力というのは、上下の歯が咬んだ時に歯にかかる力の大きさである。その学生さんはおせんべいで調べたいと書いていたのでそれは咀嚼能力、彼女勘違いしてるなあ。
通常咬合力を測定する方法としては「オクルーザルフォースメーター」という歯ブラシくらいの大きさのものを噛んで測定するか、「プレスケール」という感圧フィルムを歯列全体で噛んでどの歯にどのような力がかかっているか分布までわかるものを使うかというところ。普通は大臼歯での咬合時の力の大きさ(圧力×接触面積)を咬合力と言うのだと思う。咬合力は、単純に閉口筋(咬筋、側頭筋などの咀嚼筋)の筋力を反映するものではない。それこそ噛み合わせや歯の形態や顎の形が大きく関与してくる。また、咬合力が大きすぎると歯にダメージを与えるから、力がかかりすぎると歯根膜が感知して何らかの抑制がかかるだろう。
データを出すとしたらサンプルや対照をどう選ぶかを慎重にしないといけないし、咬合力に関係する要因は多い。楽器の種類にもよるだろうし。おそらく数字として統計学的に差を出すことは難しいのではないかと想像する。
咬合力と管楽器演奏との関連を考えるとき、1)管楽器演奏が咬合力に影響を与えるのか、2)管楽器の上達に咬合力が関与しているのか、に分けて考察しないといけないと思う。
管楽器演奏は咀嚼筋の筋力をアップするかどうかであるか、正直言ってあまり関係ないのではないかと私は思う。前にも書いたんだけど、金管楽器演奏時に笑筋が優位に働いているから笑筋が付着している咬筋を鍛えることが大事だ、みたいなことを書いている人もいるんだけど、それは違うんじゃないかと思っている。下顎の位置を保つために咀嚼筋が関与していると思うけど「咀嚼する」力の大きさに比べれば小さい。しかし、唇を閉じるための筋肉は鍛えられると思う。普段唇を開けている人というのは咬筋の活動が低いことが知られており、習慣として唇を閉じることができるようになれば咬筋にも影響があると思われるので、そういう点では無関係ではないであろう。
咬合力が管楽器の上達に関与するかどうかであるが、咬合力の大きい人というのは噛み合わせや歯並びがいいだろうし、顔面の筋力も優っているいるだろう。また、スポーツ歯科の分野で咬合力が強い方が身体能力(瞬発力等)が高いことが知られているが、管楽器演奏も体を使ったパフォーマンスであるから全く関係なくはないだろう。
これは予想であるが、少なくとも学生オケ程度のアマチュアレベルで測定しても数字としては何も出てこないんじゃないかと思うが、有名プロ奏者のデータを取ると面白いかもしれない。もちろん、咬合力が直接影響しているわけではないだろうけどネ。

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