« July 2005 | Main | September 2005 »

August 2005

August 29, 2005

上の前歯とリムの位置関係

上の前歯が短いということで悩んでいる人はそう多くはないだろう。当院で歯を長く調整した例が最近でも3人ほどあるが(いずれもトランペット)、いずれも削ったとか差し歯がはがれたとかで短くなってしまったという場合である。短くなってしまうと起こることとしては、高音域で上唇に力が入るというのが共通した症状であった。
私も短いという話を以前にも書いたのだが、実際に歯自体が短い(本当に短根だし)だけでなく前方に傾斜しているんのでなおさら上下的な位置が上の方にある。数年前からアンブシュアの見直しをしていて正直恥ずかしい話であるが良くなったり悪くなったりで、少し前には割と好調でアンブシュア改造も終了かなどと書いたのだが、最近しばらく練習不足だった影響かどうにも上唇が上がってしまいまた悩んでしまっていたわけです。上の前歯が上の方にあるのだからどうしてもリムが上に行く、それに伴い上唇と鼻が上がると私は思ったわけです。そんなのは関係ないよ、人間の構造はそうは違わないんだし・・・とも言われたけど、でもやっぱり多少は関係あると私は思う。レントゲン見てもらえばわかるけど人間の顎の形態にはヴァリエーションがあるのである。確かにそれだけが原因ではないけど、そうなりやすい要素の一つではあるんじゃないかと。
上記歯を長くして良い結果を得たというのは、歯が短くなった分特に高音域で上唇の振動面積が広くなってしまい今までより余計に息の圧力が必要になるためで、長く戻すことで楽に吹けるという理屈である。私も場合も特に高音域で上唇が上に上がってしまうのは、上唇の振動面積が広い割に息の圧力が足りないから振動面積を小さくしてしまうためであろう。そう言う意味では歯の位置なんて関係ないのかもしれないが、私だっていろいろやってみたのよね、意識的に下唇の下の筋肉を鍛えるような練習もしてるし。だって歯が上の方にあるんだから上唇を緩めるとリムに歯がかからないんだよ・・・・あれ、歯にリムがかからなくても吹けるゾ。しかもとっても良い感じ。上の前歯の切縁にリムがあたってる感覚。

050829

(スキャナーの性能が悪くて申し訳ない。右のは私の昔の物だけど、多分今はもうちょっと違うはず)

金管楽器の演奏においてマウスピースと前歯の関係は、通常上下前歯とも口唇を介して唇側面にリムが乗っている。写真左のプロ奏者の例をみてもらえばわかる(4/14のブログの物を再掲載)。上下の歯の関係がちょうど並ぶのではなく少々上の前歯が前に来ることは置いておいても、少なくとも前歯の唇側面に対してほぼ垂直にリムが乗るというのは、教科書的にも当たり前のこととして考えていた。
しかし、上の歯面にリムを当てずに吹くと良いことに気がついて、昔撮ったレントゲンを思い出した。そういえば昔はそうやって吹いていたんだわ。こうすると上唇の力が抜けて息の圧力もかけられるから良い音になるだけでなく、おまけに楽に吹ける。下顎をあまり前に出さずにしかも音域によってマウスパイプの角度を変えずに吹けるのである。
写真右は、私の演奏時のレントゲンで、実は9年前に撮った物で私にしては絶好調の頃。レントゲンは2次元的でわかりにくいのだが、今あらためて考察すると、上の前歯の唇側面には全くリムが乗っていないで、側切歯(2番目の歯)の切縁にリムが乗っているのだと思う。レントゲン上で上下の前歯の位置にずいぶんずれがあるが、これは上の側切歯と下の前歯の位置がそろっているためである。
通常は上の中切歯の唇側面にリムが乗るため、アパチュアというか上唇の振動部分の位置は上の中切歯の位置で決まるのだが、リムが側切歯の切縁に乗るときは側切歯の位置で決まるんだと思う。試しに上唇を楽にして上唇の上から指で中切歯の唇側面を押さえた時と側切歯切縁を押さえた時の上唇中央部の位置を比較すると、後者の方が内側に入り込むことがわかる。
だから、下顎をあまり前に出さずマウスパイプを少々下向きにして吹けるので、頚や顎の周囲に負担をかけずしかも腕の短い私が楽器を楽に持ってベルを腿に置いてちょうどいい。マウスパイプの角度については、私はもともと上下の前歯が前方に傾斜しているため、上下の前歯に均等に圧力がかかるようにするには、歯の開きが変わるとリムの当たりの変化に伴い角度を変えないといけなかったし、歯並びに影響されて左右への傾きも変化してたのが、上の前歯に影響されなくなるので、ほぼ同じ当て方で上から下まで吹けるというわけである。

で、何が言いたいかというと、歯とリムの関係は実は重要ではなく、口唇とその周囲の筋肉が良いバランスの所にリムが来て、たまたま歯がある場所がリムに対しての歯の位置なのである。

良い子は真似をしないでね。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

August 04, 2005

上の前歯の長さの基準

トランペットの方の治療で最近多いのは、何と言っても上の前歯の長さの調整である。ご本人はもっと別のこと(上の中切歯間の三角の大きさが問題だと思い込んでいる人が多い)が原因と思っているのだが、そうではなくて前歯の長さを調整して解決することが多い。
ではその上の前歯の長さは何を基準に設定するかである。最近は臼歯部の高さを基準に本来あるべき咬合平面を想定して長さを決めるようにしている。以前は2001年のたわごとで書いたように上唇の長さとのバランスかと思っていたが、臼歯部とのバランスを考えて長さを設定した方が正解のことが多いようである。
で、なんで臼歯部の高さが関係があるのか考えてみた。おそらく口角の上下的な位置が絡んでくるのではないかと思う。つまり、ご存知のように金管楽器を吹くときは軽く顎を開けているわけで、上下の歯列の間には隙間が出来るが、標準的なアンブシュアではその隙間の辺りに口角が来るのではないかと。(口角の筋肉の集まっている部分が下の歯列に密接して口角を支えるためだろう。)当然口唇は口角を結んだ線上にあるのだから臼歯部の上下的な位置とは関連があるというわけである。
歯科関係者以外にはわかりにくいと思うので、ケースリポートのケース1の中川さんの写真を見ていただくと、口の中の横から見た写真で治療前は奥歯に比べて上の前歯の切縁が上にあるが、治療後は奥歯とほぼ同じ高さであることから理解してもらえるだろうか。先月も奥歯の高さに比べて上の前歯が長い人がいて、その人はもっと違う点を調整しに来たのだけど、演奏時のレントゲンを見ると上の前歯の切縁と下唇が接触していて、上の前歯を削ることを勧めたのだが、ほんのわずかであるが削ってみるとかなり吹きやすくなり音も抜けた。
私が矯正したい理由の一つがこれで、前にも書いたが私は上の前歯が短く奥歯からの咬合平面より上方にあるのである。金管楽器を吹くには上の前歯が短いほど良いと思い込んでいる人も多いと思うのだが、「丁度いい長さ」が良いのである。以前はその歯なりのアンブシュアだったのだろうが、アンブシュアを整理して色々な面で良くはなったけど、きっとそれは歯並び(歯の位置)の条件がいい人のためのアンブシュアなのだろう。特に高音域では歯が短い分口角を上に上げると吹きやすいのであるが、そうすると中音域からつながらなくなる。口角の位置を変えずに吹けないこともないが、少々無理を感じるのである。

| | Comments (4) | TrackBack (0)

August 01, 2005

金管楽器の息漏れの法則

先週あたり狭い防音室で練習してるとやたら息漏れがする。昔から時々少々同じ場所から息漏れがするんで調子のバロメータ代わりにしておりあまり気にしないようにしているが、少し前の練習不足に加えて先シーズン吹いてたパートが音が低くってアンブシュアが多少くずれたのであろう。今は大体直った。

息漏れがするんですという相談は割と多く(そういえば最近はないかも)、いろいろ試しているうちに一つの法則を発見した。金管楽器の息漏れというとマウスピースの脇から息が漏れるのだけど、もちろん歯並びのせいだけではなく奏法自体も絡んでくるわけで、歯並びが非対称だったりすると漏れるように思うが、逆に息漏れをしないようにするがためにアンブシュアに無理が出るというケースもある。
私の発見した息漏れの法則とは、「息漏れを直すには、息が漏れる方の側の上の奥歯をアダプターで膨らます、もしくは、息が漏れる方の反対側の下の犬歯の辺りをアダプターで膨らます」というものである。つまり、息漏れをする方の側は何らかの原因で頬が歯列(奥歯)に密着する力が弱いか、反対側の口角の下の支えが弱いかなんではないか・・・ということである。どっちに手をつけるかは歯並びを見て判定する。
歯の治療や歯周病の影響で奥歯の歯列が凹んでしまった場合には、そこにアダプターを足すと効果があることもある。奥歯のアダプターは確かに吹きやすくなることが多いが、ともすると横に引き気味のアンブシュアになってしまい音質が悪くなるので注意が必要である。
片側の口角の下の支えが弱いと、その反対側に下顎がずれてしまい緩んでしまうのではないかと思う。だから、一見きれいな歯並びでも下の犬歯の前後的な位置が違うと、犬歯が後ろにある側の口角の支えが弱くなるようで音が不安定になったりもする。アダプターで膨らみを調整するとアンブシュアのバランスがとれて安定し息漏れも解消するという理屈である。歯列の形態からして凹んでいる部分にアダプターを足すのは有効だと思うが、必要以上に盛り足すと確かに楽に吹けるけど口角の下の筋肉が弱るので気を付けないといけない。
(リムの当たる前歯の状態が原因で下顎がずれるときはそちらをアプローチするが。)

息漏れがするんですという相談には、まずこの法則に当てはめて考えてみるんだけど、もちろん法則とは反対側から息漏れをする場合もあるようである。口を横に引いていると息漏れがしやすくなるが、そういえばこの前法則が当てはまらなかった人は横に引き気味のアンブシュアだったような。いずれにしても100%の精度の法則ではないので鵜呑みにしないでね。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« July 2005 | Main | September 2005 »