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May 11, 2005

抜歯を早まらないで

とある音大生(金管)が内側に引っ込んでいる上の側切歯(2番目の歯)を抜歯した後になって相談に来た。タンギングがしにくいという理由で抜歯をしたようである。抜歯後3mmほどのスペースが残ったわけです。抜歯した歯科医はおそらく抜歯後に当然ブリッジをいれるつもりで抜歯に応じたと思われる。ところがブリッジをいれることを楽器の先生に反対され、とりあえず人工歯をボンディング剤でとめてあり、歯茎と人工歯の間の隙間から息が漏れるというのが悩みであった。ブリッジの隙間から息が漏れるという相談はよくあるのだが、多くの場合、歯茎との隙間から息が漏れるのでなく、歯のない部分というのは歯根もないのでそこの歯槽骨が凹んでいるわけで、そこに空気が溜まる感覚がするだけではないかと私は思っている。だからこの音大生も息が漏れている訳ではないだろうと考えた。実際そこを埋めても何の変化もない。人工歯が短めに作られており(対合歯と当たって脱落するのを防止したと思われる)どうやらこれが原因のようで、試しに人工歯を1mmほど伸ばして左右のバランスを整えると吹きやすくなったということであった。
私は抜歯自体を反対しているわけでなく、両隣の歯がくっついていて咬合に影響なくって将来矯正治療の予定もないのなら抜歯しても何の問題もないので、抜歯をお勧めすることがある。こういう場合でも抜いてくれない歯医者もあるので依頼書を書いたこともある。
しかし、抜歯すると両隣の歯に隙間ができる場合は放っておくことは普通しない。なぜなら、歯はスペースのある方に移動するものだからである。段々隙間に向かって両隣の歯が傾斜してきたり、もしそれまで噛んでいた歯があればその歯が伸びて来る可能性もあり、咬合が崩れることを防止するためにも通常は何らかの処置が必要になるのである。
この音大生の場合だと、抜歯をしないで上下歯列をちょっと側方拡大をしてリンガルブラケットを付ければ1年程度で演奏に悪影響を与えることなく矯正治療ができたはずなんだけど、抜いてしまった歯は戻らない。残念。

以前にも音大受験予定の高校生(木管)が相談に来た。転んで上の中切歯をぶつけて破折し、歯医者さんでは抜歯をしてすぐにインプラントを入れることを勧められた。インプラントを入れた後、上物の歯を入れるまで半年間の予定で仮の人工歯を両隣の歯にボンディング剤で止めてあるのだが、あまりに頻繁に外れるので楽器の練習ができない・・・というご相談であった。見たところ単に人工歯のボンディングの仕方が悪いようなのであったが、それは置いておいて。
転んで上の歯をぶつけて折れる人の多くは上顎前突である。その高校生も普段口を楽に閉じることが出来ないくらい歯が出ている。楽器を吹くときもその分歯に負担がかかるし口唇周囲だって楽ではない。音大受験生が抜歯をして矯正治療を始めることはなかなか難しいが、抜歯を機会に、その部分に歯を移動して前歯を後ろに下げればよかったのにと私は思ったのです。その高校生も親も歯が出ているという自覚がなく、今からでもインプラントを除去して矯正治療をした方が楽器を続ける上ではいいと思うんだけど、なかなかそこまでは言えませんです。抜歯する前に相談に来てくれればよかったのにと、残念な思いをしたのであります。

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