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April 27, 2005

木管用アダプターのデザイン

今月はなぜか木管のアダプターを作りに来る人が多い。季節ものなのだろうか。中には今まで他で作ったアダプターを使っていた人が何人かいた。
いわゆる木管用アダプター(根本式)のデザインというのは、下前歯の舌側(内側)から切縁、唇側面(外側)の1/3〜1/2程度を被う。幅は犬歯から犬歯で、舌側はスムーズな面とし、切縁と舌側は1〜1.5mm程度の厚さで歯並びの凹凸をカバーする。当院に来院される人には根本先生に作ってもらった人もいるし、まったく管楽器のことをわからない歯科医院で作ってもらい楽器の先生に削って調整してもらったという人もいる。後者でもほぼ根本式のデザインに近いものであった。
このデザインで有効に使用していて再製したいという人もいるし、どうもよくないから作り直したいと来院する人もいる。私もこのデザインで作ることもあるが、最近思うのは、このデザインが向いている人というのは、下の前歯が比較的立っているもしくは内側に傾斜している人なのではないか。唇側面を上だけ被うので、結果として唇側面が実際の歯よりも前方に傾斜するのである。下の前歯が前方に傾斜している人というのは、このデザインだとさらに前方に傾斜してしまうので向かない、唇側全体を被ったデザインの方がよいようである。
特にクラリネットを吹いていると下の前歯が内側に傾斜してくることがあるし、そういう人の方が上達しやすいので、根本式で有効な歯並びの人が木管楽器には多かったのかもしれないが、特に最近の若い人は前歯が前方に傾斜した人が多いのである。アダプター自体のデザインをどうするかではなく、アダプターを入れた状態の歯並び(上下前後的な位置を含め)がどうなるかを考えないといけないと思う。

アダプターのデザインの要素としては

1)唇側:上下前歯の関係、唇側面の傾斜
上顎前突の人はある程度厚みを持たせ、軽く下顎を前に出して咬んだ時に上下の前歯がそろう(ほぼ一つの面になる)ようにする。例えば上顎2番が舌側転位していればそれに合わせる。逆に被蓋の浅い人は唇側全部を被わない方がいいようである。歯肉に移行的にし唇側面はスムーズに設定する。下唇の張り具合(筋肉のバランス)等を考慮しながら厚みや幅を調整する。通常は犬歯間だが、例えば第一小臼歯が舌側にあれば伸ばして上の唇側面とそろうようにするとよいようである。

2)切縁(咬合面):下唇の痛さ、コントロール、下顎の高さ
咬合面と唇側面との角はとって丸くする。丸い方が痛くなくコントロールしやすいようである。ジャズ系サックスの場合は角があった方が好まれることもある。マウスピースの角度の違いと音量が大きくなり強いアタックができるということだと思う。上面はほぼまっすぐにして、ある程度は咬んだ時に均一に当たるようにし必要があれば咬合調整をする。高さ(厚み)によって筋肉のバランスや口腔の広さ、喉のポジションが変化するので、適当な高さというのは人によって違うと思う。演奏時の顎の上下的な位置を変えない場合でも、唇側の厚さで下顎を前に出さない分高径が低くなるので高さは1〜2mm程度必要なことが多いようである。

3)舌側:アダプターの保持、舌感、舌のポジション
アダプターが保持できればなくてもいいと私は思う。唇側を一部しか被わないときには保持のために必要になるが薄くする。舌側面をスムーズにすることで気流を整えると言われるけれど、それが実際に演奏に影響するパーセンテージはかなり低いと想像する。しかし、ある程度の厚みで被うデザインのアダプターを長年使用している人には同様に舌側面を被う。舌のポジションに影響を与えるため「あり」で奏法が出来ている人には必要だろう。

なお、私の最近の経験ではクラリネットとオーボエは同じ考え方でデザインを決めてよさそうである。もちろん、上記の内容は決定打というものではなくまだ試行錯誤中であり、今後もいろいろ試してみる必要がある。

ちょうど一般的な木管アダプターのデザインを変更してかなりよい結果が出た人の写真(模型だけど)を撮ったので、出来たら載せます。クラリネット演奏時の下顎のポジションというのは上下前歯の切縁同士の関係で決まるのではなく、下の前歯の下の方の位置も影響があるようで、下の前歯が前方に傾斜しているのにアダプターで唇側の上の方だけを被ったため下の前歯が必要以上に前方に出てしまっていたが、デザインの変更で良い結果が出た。あきらかにいきなり音質が良くなって、本人も喜んでいた。

上顎前突の人がアダプターで下顎を無理に前に出さずにすむ、というのもアダプターの適応症である。ベテランのプロ奏者でも、Pのコントロールが楽とか音が安定するといった結果であった。最近は管楽器専攻の学生で女の子が増えて、小柄で顎の小さい子も多い。顎が小さいと歯並びに問題が出るだけでなく顎関節も小さく当然顎の可動域も狭くTMDの症状が出やすいわけで、形だけ「正しい奏法」をすると無理があるケースも多いはずである。悩んで先生に相談しても、そんなことを言ったら歯並びの悪い人は楽器を吹けないだろうと相手にされずに困って来院した学生もいる。理想的には矯正をするとか自分に合った楽器を選ぶことが必要なのだろうが、既に楽器を選んで専門に勉強をしている以上、頑張ってほしいと思うし、そのために手助けできることがあれば私も頑張りたい。

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