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April 14, 2005

新説/なぜ金管楽器演奏時に上下の前歯が並ばないか

私は管楽器関係の治療(矯正に限らずアダプターや歯の調整でも)行う時にはルーチンで演奏時のレントゲン写真を撮っている。頭部レントゲン規格写真(セファログラム)といって頭を固定し管体からの距離が一定なので、再現性があり比較もできる。そうすると金管楽器の方の多くは「わずがに」上の前歯と下の前歯の前後的な位置に差がある。つまりほんの少し上の前歯が前方にあるのである。中には何らかの原因で上の前歯がかなり前にある場合もあり、実際にそれが演奏上の障害になることもある。例として、当HPのケースリポート登場の治療後のレントゲン写真を2例載せておく(いずれもプロ奏者)。050414-1
ご存知のようにファーカスの本にあるように、正しくは上下の前歯が並ぶと言われているのだが、実際は1mm程度差があるのである。どうしてだろうと考えていて、昔は、リムの座りを考えれば、上の側切歯と下の側切歯が並ぶ状態で上下の前歯の関係が決まり、通常の歯並びでは下の歯列が唇側面がそろっているのに対し上の歯列では舌側面がそろう関係上、側切歯よりも中切歯は厚い分わずかに前方に行くのではないか・・・と考えていた。いや、どうもそういう訳ではなさそうだと、少し前から「アパチュア調整」説を考えている。
02年9月のたわごと「金管楽器の角度を決めるのは何か」で実はちらっと書いたのであるが、
どうやら上唇が下唇にわずかにかぶさる状態というのが理想のようで、このわずかな「かぶさり」のために下顎が上下にスライドするとアパチュアが相似形で大きさが変化することができるのではないかなあ。(以上引用)
つまりアパチュア周囲では上唇が下唇にわずかにかぶさる状態であることが必要であり、その位置を決めるのが上下の前歯の唇側面ということである。これではわかりにくいので、モデルとして私の手で説明すると050414-2


つまりかぶさりによりアパチュアが調整されやすい状態となり、上下唇がちょうどだとアパチュアの柔軟性がないのである。
この説に少々の確信を持ったのは、少し前にいらした反対咬合のトランペットの方のレントゲンを見た時であった。反対咬合といってもいろいろな程度があって、以前のたわごと(02年9月「ポッセルトのバナナ」)で書いたように、普通に下顎を開くと下顎は後方に行くのであるから、少々の受け口であっても十分にこの1mm程度上の前歯が前にある位置に持って行くことが出来る。むしろ軽い受け口は楽にこのポジションを取れるのである。しかし、重度の骨格性の反対咬合(矯正歯科用語でいうと構成咬合の取れないくらいの)では、無理なこともある。それでもそれなりに上手に吹けている人がいるのはなぜか、おそらく上唇に下唇がかぶさっているのではないかと思ってた。その反対咬合の方は骨格性ではあるが歯を開けた状態なら上下の前歯を並べることも可能な程度なのに、下の前歯がわずかに前方にあったのである。
もう一点、このアパチュア調整説で説明ができることがあって、高音域では息が下を向くと言われているけど、これはアパチュアが小さくなると相対的なかぶさりの量が大きくなり、結果角度がつくのではないかと思う。実際、上記の反対咬合の方は、高音域ほど息が上を向くということであった。かぶさりが逆であれば当然そうなるのである。

だからといって、私はファーカスや多くの教則本にある、上下の前歯を前後的に並べるという説明を否定するつもりはない。というのは、上下の前歯をそろえるくらいのつもりでないとよいポジションがとれない人がほとんどだからである。顎の構造上、上下の前歯を開けようとすると自然に下の歯は後下方にいくので、そろえようとする意識が必要なのだ。あるホルンの教本では低音域では下の前歯を上の前歯よりもかなり前に出すという図が載っていいて、んなバカなと思ったが、これも、意識としては必要なことで、ホルンの場合は低音域では上下の前歯を開く必要があるが、普通に開こうとするとかなり後方に行ってしまうので前に出す意識が必要であり、また、アパチュアが大きくなれば相対的にかぶさりが小さくなって息の角度は上向きになり、下唇が前方に出ている感覚になるからではないかと思う。

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Comments

近いうちに私が楽器をくわえている時のレントゲン写真を撮影していただけますか?

Posted by: 田中正敏 | April 27, 2005 07:40 AM

どうぞどうぞ。
電話で医院の方に予約を入れてください。

Posted by: kyu-ko | May 09, 2005 02:22 PM

今日は。
これおもしろいですね。
上唇がだんだんしたにかぶさるのではなく、下唇がなんらかのスライドをするんじゃないかと思うんですが、そのスライドが、舌の動きと関係しているように思います。
私は大原のホームページにもかいてある舌の体操の、舌を上アゴにそわして、後ろにもってくのをやってから、ハイトーンが前よりでます。
両方がリンクしてるからじゃないかと思うんですよ

Posted by: ちえぞう | May 21, 2005 01:38 PM

ちえぞうさん、いらっしゃいませ。返事が遅くなってスイマセンです、懲りずにまた来て下さい。
舌のトレーニングは、舌の後方部を上に上げることに役立つのです。たぶん、ハイトーンほど舌後方を上に上げて息をしぼることでスピードを上げているのだと思います。
上唇か下唇かに関しては、上顎は動かないけど下顎は動くんですから、下唇がスライドするというのは当然なので、それを前提に書いたつもりでした。(アパチュアを大きくするために上唇を上に上げるのはあまり良い奏法ではない。)
舌の後方の話とは関係なく、下顎の位置を変えれば当然舌の位置が変わる。アパチュアの大きさは、実際は主に下顎の開き=前歯の開きの変化で変わるのですが、そのためにどこを意識するかは人それぞれで、なかなか歯を意識して位置を変えるのは難しいので、顎だったり舌の位置だったり口の中の広さだったりノドだったりなのでしょうね。

Posted by: kyu-ko | May 26, 2005 08:45 AM

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