March 03, 2010

前歯はほどほどの長さがよいです

うわ、長いこと更新してなくてすみません!!この冬は1月の本番に向けて自分のホルンやオケの運営の方で一杯一杯だったですが、今は気持ち的にのんびりしてます。となると余計なことを考えるようで、楽器の改造とか古い楽器を引っ張りだしたりとか・・・。

前回の記事の「前歯はほどほどに長い方がよいです」について、少し前に文中に登場する中川さんからメールをいただきまた。中川さんがこの方に連絡を取ったところ、その後ご自分でヤスリでレジンを削ったそうで、中川さんから、歯を長くして良くなった人はいない、所詮ホルンとトランペットは違うのだ・・・と言われました。関西からの方なので少々の調整はご自分でやればいいでしょうし、全部削ったわけでなく、当院初診時よりは長いようでした。ある意味それはそれでよいのではないでしょうかね。長い方がよいと言っているのではなく、必要な長さというものもあるというのが私の考えです。

ホルンもトランペットも基本的に同じだと私が言うのは、基本的なアンブシュア(筋肉のバランスなど)です。そりゃあ全く同じではないでしょう。しかし、一昔前のイメージ=口唇に対してのリムの位置やマウスパイプの角度が違う〜というのは、現在ではほとんど差がなくなっているように思います。もちろん個人差はあるでしょうけど、奏法が整理され方法論が確立しグローバル化して同じになってきているのではないかと思います。

歯の長さを変えて起こる現象は、他の要素が同一だとしても一元的ではありません。単純に、歯の長さが変わってもアンブシュア(筋肉のバランス)が変わらず歯の開きが変わる場合と、歯の長さが変わっても歯の開きが変わらずアンブシュアが変わる場合の2つが考えられ、もちろんその中間が存在しますし、歯の角の形やリムの当たりなども変化するので、人によって反応はまちまちです。また、歯の角(歯の間の三角の隙間)の大きさの変化でも、同じようなことが起こります。

だから、歯を短くして、アンブシュアが変わらないもしくは良くなる場合は、良い結果になるでしょうし、逆にその時は良くてもアンブシュアを崩して吹けなくなってしまうことも起こりえます。前回の記事の人は、もしかしたら単に元のアンブシュアに戻ったために短くする必要があったのかもしれないし、それは見てないのでわかりません。もちろん、どんなアンブシュアで吹こうがその人の自由なわけです。

今、当院に通って歯の調整をしているプロのジャズ系トランペッターが2人いるのですが、2人とも調子を崩すきっかけが歯を削ったり短い差し歯にしたりしたことのようです。それで歯を長くして(=おそらく元に戻して)形態を調整していますが、基本はアンブシュア(筋肉のバランス)がよくなることを目標に調整し、プロ奏者相手にもアンブシュアの駄目出しを私はしています。元々は良いアンブシュアだったのが気づかないうちにバランスを崩してしまっていたのではないかと想像しています。
ジャズのトランペットの世界では、特に年配の世代の人には、歯は短い方が良い、ヤスリで自分で調整するもの〜という人が多いのだそうです。先輩に短くしろと言われれば、従わざるを得ない雰囲気らしいです。もちろん削って良くなる人もいるでしょう、そういう人がプロの世界で生き残った、ということなのです。通院中の2人を見ると、ああ、こうして歯を削って潰れてしまう人もいるんだろうなと思います。

パッと見た感じ歯が長くても、それなりにバランスが取れて演奏している人もいるのです。歯の長さは咬合や筋肉のバランスの中で決まるわけで、必要があってその長さであることも多い。ご自分でヤスリで削るのは自由ですが、誰もが削って良くなるわけではない。削ってくれと頼まれる歯医者もあるでしょうが咬合運動に悪影響のない範囲にとどめてほしいし、少なくとも切歯誘導がなくなる程削ってはいけないと歯科医の立場からは思います。

PS:中川さんからはもう一点「3ヶ月後の来院は下の前歯のレジンが取れたから行ったのだ、ありのままを書くように」とお叱りを受けましたが、実はレジンは取れておらず、少々角が欠けたかもしれないけど見てもわからないくらいほんの少しで、直しようがないのでそのままにしました。息が入り過ぎる感じがするのでレジンが取れたと思ったようでした。↓の写真を見れば下の前歯のレジンは取れてないことがわかります。

| | Comments (0) | TrackBack (0)
|

November 13, 2009

前歯はほどほどに長い方がよいです

続きまして、やはり歯を長くしたケースを紹介します。
開咬ではないのだけれど、自分で前歯を削ったために、下顎を前に出した時に前歯で噛めなくなったという人です。

トランペットを吹いていて、当サイトにも何度か登場しているトランペット中川さんの紹介で中川さんと一緒に来院されました。
1年前に上の前歯(左右1番)を自分で削り、最近は下の前歯の高さが不揃いを近くの歯科医院で相談したら、長くすることはできないということで、長い歯(右下1番)を削ったということでした。結果、息が入りすぎる感じ・息が止まらない感じがするということでした。また、右の上下1番で切端位をとれたのが下の歯を削ったらできなくなったということでした。

私は上の前歯を元に戻すような形で長くすることがよいと言ったのですが、同伴の中川さんに大反対され、この日はやめました。
写真を見てわかるように切端位をとろうとすると、犬歯が当たって中切歯が当たらない状態なのだが、それよりも歯の開きに左右差があり、これを改善すると随分吹きやすくなると考え、左下の前歯(1番2番)を長くすることにしました。下の前歯の切端は咬合時に上の歯と当たるので、単純に長くすることは出来ないのだけど、少々内側にもレジンを盛って厚くすることで長くすることが出来ました。が、微妙に切端位で当たらず、これ以上は上の方を長くしないと難しい感じでした。私はやりたくなかったのだけど、中川さんに奥を削って前歯が当たるようにしてくれと言われ、ホンノ少々下の犬歯を咬合に影響のない範囲で削りました。
0911131

中川さんはセットポジション=切端位でちゃんと前歯が当たることを大切にしておられます。ご自身も昔前歯を短くして切端位がとれなくなったので歯科医院に頼んで奥歯を削ってもらったのだそうです。普通奥歯を削って前歯の被蓋を深くすることは歯科的には御法度です。
上の前歯は短い方がいいというのが持論ということもあるのでしょう、せっかく前歯を削って奏法を変えたところなので変えるべきではないというご意見でした。

それから3ヶ月して今度は一人で来院されました。息が入りすぎる感じが改善しないということでした。私は上の前歯を長くすることを提案し、とりあえずやってみましょうということになりました。下の写真は長くした後です、この方が自然な歯並びです。
長くする前は、音質は間の抜けたボーっとした感じでアンブシュアも「む」っと下唇に力が入っていましたが、長くして音に張りが出てアンブシュアもいい感じになりました。息が入りすぎる感じも解消したということでした。
0911132

1回目に上も長くしていたらわけわからなくなっていたと思うので、結果的に良かったのではないかと思います。
自分でヤスリで歯を削る前に、当院にご相談ください>皆様


| | Comments (0) | TrackBack (0)
|

November 11, 2009

開咬

不正咬合の種類の中で「開咬(かいこう)」といって、奥歯で噛んだときに前歯が開く(上下の被りがない)状態のものがあるのだけど、管楽器関係の相談で開咬を主訴とするものは少ない。当院でも2回くらいしかない。開咬なのだけど気にしているのは別の部分ということはあるけど。
開咬は機能的な原因で起こることが多く、もしかしたら管楽器を始めても上達せずにやめてしまうことが多いので開咬の管楽器奏者自体少ないのではないかとも思うが、開咬でも上級者がまれにいてそういうケースは原因は解消したけど開咬が残っているのだと思う。
また、管楽器演奏時はどの楽器も前歯は開いているので、開咬自体が演奏に影響を及ぼすことが少ないということもあるのでしょう。

写真の患者さんはホルンを吹いていて、下の前歯が痛くなる/スタミナ不足を主訴に来院。演奏時のレントゲンを見ると、中音域でも奥歯をほとんど開かずに吹いていることがわかる。高音域で歯の開きをこれ以上閉じることも出来ないでしょう。どっちかというと八重歯の方を気にしていたのだけど、多分前歯を長くした方がよいかと思い(本当は矯正して直しちゃった方がよいのだけど)一番上がっている左上の中切歯の先を1mm程レジンで長くしました。すると、それまで口唇より上の筋肉が過剰に緊張し口角の無駄な動きが大きかったのが、随分解消しました。楽に吹けるようになったようです。もっと前歯の被りが改善した方がいいのでしょうけど、急に変わっても吹けなくなるだろうから、とりあえずはこのくらいで。
普通は歯を開いて=下顎を開いて演奏するのであって、その筋肉バランスで吹くようにできているのが、この人の場合は下顎を閉じないと吹けない。上唇を上に上げていたのが歯が長くなったことで上唇を下げることができ、下顎も少々開けるようになったのだと思う。

ということで、開咬も実は金管楽器にとってマイナス要素になることもあるようです。

091111

| | Comments (0) | TrackBack (0)
|

October 26, 2009

インコグニト

矯正治療は一般的に歯の表側にブラケット(ブレース)と呼ぶ器具を接着剤で付けワイヤーで力をかけて歯を動かして行いますが、表側ではなく裏側に付けて直すのが「リンガル(舌側矯正)」です。
矯正治療中に楽器を吹くと困ることの1つがブラケットが唇に当たることですから、リンガルであれば問題ないような感じがするのでしょう。リンガルを主に行っている矯正歯科医院では、リンガルで治療する利点として「管楽器を演奏する場合も舌側矯正なら邪魔になりません。」とはっきり謳っていたりします。
楽器を吹いている人ならば、内側に器具があればあったでそれなりに邪魔だろうと想像できると思います。もちろん表についているよりも楽は楽でしょう。だからこそ、私は15年以上前からリンガルの治療を行っているし、講習会に参加したり新しい装置が出れば試したりしてます。しかしながら私は経験から「管楽器奏者にとってリンガル(舌側矯正)は万能ではない。」と考えます。それは・・・

1)管楽器奏者にとって装置自体だけでなく、矯正治療中に歯の位置が刻々と変化すること=アンブシュアが日々変わるのが実は困ること。もちろんそれはリンガルで治療しても起こることであり、むしろ表側に装置が無い分変化に敏感になることがある。
2)リンガルで治療すれば普通に吹ける&歯並びがよくなればスゴく上手く吹けるという過大な期待とのギャップがスランプ、不満を生む。
3)管楽器演奏のためにリンガルを選択する人は神経質な人が多いので、特にこういった傾向が強くなる。
4)歯の表側と違って裏側の面の形は個人差が大きいため、既製のリンガルの矯正装置では外れやすかったりワイヤーの細かい曲げが必要になる。一般的に一時的に表側に装置を付けたりダイナミックポジショナー(取り外しが出来る歯を動かすマウスピース)で仕上げる必要があることが多い(私は滅多にしませんけど)。
5)通常のリンガル用のブラケットはかなり大きく厚いため、歯肉炎が起きやすく、管楽器奏者にとって何より舌に邪魔。シラブルが変わることはある程度時間が経つと慣れるが、人によっては演奏時に擦れて痛い。
6)小さいブラケットも開発されてはいるが、治療の完成度としては劣ることが多いようだ。

上記1〜3のような患者さんを経験すると、表側の器具で直した方が「患者さんの覚悟」が出来て良い方向に行くのではないかと考えるに至ったのでした。それに加えてリンガルだと舌の違和感や治療上の不安(完成度や治療期間の問題)も考えられるので、基本は管楽器の人には表側の装置をお勧めしているというわけです。

最近日本でも入手可能になったドイツ製の「インコグニト」という製品がありまして、これは簡単にいうと「オーダーメイドのリンガル用矯正器具」。
歯に合わせてコンピューター上でデザインして作るので、歯にぴったりで薄く作ることができるので外れにくく、既製品の一番小さい物と同じ厚さ(実際はインダイレクトで付けるとレジンの厚さがプラスされるのでインコグニトの方が薄いと思う)角もないので違和感は小さいはずです。ワイヤーも出来上がりを想定してコンピューターで曲げたものが用意されており術者のストレスも無く順調に歯が動く。つまり上記4〜6が解決するということです。この講習会に行ってこれなら自分にも付けて直したいな~と思ったくらいです。
お高いのが難点ですが(私は普通の表側の矯正の料金に器具実費分を上乗せした設定にしているので、儲かる訳ではないです)、これならお勧めしてもいいなと思っています。管楽器奏者にとって歯並びの治療法のよい選択肢が増えたということであります。

当院ではまだ管楽器の方には1例のみです。サックスの音大生ですが、歯並びを直したいんだけど先生にあまり賛成してもらえず、先生に知られない様に治療したいのでリンガルにしたいということです。最初音色が変わった感じがするということでしたが、大きな問題ではないようです。以前から下の前歯用のアダプターを使用していて、これがないと吹けない!そうで、当然歯が動けば使えなくなるのですが、アダプターの内側を少々削って使用の度にヘビーシリコン印象材で歯に合わせてもらい大丈夫ということです。初めてまだ4ヶ月ですが八重歯は解消し歯が動くのが速いように思います。

| | Comments (2) | TrackBack (0)
|

October 20, 2009

後戻り

大変ご無沙汰しております!!
また長いこと更新していませんでしたm_ _m
所属オケの運営委員長の業務(&自分でやらなくてもいい仕事まで抱えるタイプなもので)に加えまして、この夏はアレルギーで咳が止まらなくなったり、先月は新潟公演を行ったのでその準備もあって、ブログどころではなかったのでした。
細々とメールでの相談に答えたり、診療室に来る管楽器吹きの皆さんの相談に乗ったりしています。
ホルンの方はこの春くらいからアンブシュアがいい感じになり調子がよいもので、練習しなくてもそれなりに吹けるので怠け癖がついてますが、さすがにちゃんとコンスタントに練習しなくちゃと思っています。

矯正歯科医に管楽器を反対される、顧問の先生に矯正治療を反対される・・という相談はよくあるのですが、この前いただいた相談は、後戻りをするから矯正が終わって2年間も管楽器は諦めるように言われたということでした。いわゆるブレース(歯に固定する矯正器具)を付けている間に禁止するのはよくあることですが、普通はブレースが外れて楽器が吹ける様になることを楽しみにするのに・・・。通常矯正が終わったら後戻りを防ぐためのリテーナー(保定装置)を使用します。元の歯並びや楽器の種類によっては後戻りしやすいケースもなくはないですが、そういう場合は保定の仕方を工夫すれば問題ありません(私は歯並び全体をカバーするタイプの着脱式の物を使ってもらうことが多いです)。よほど吹き方が悪くなければ後戻りの心配をすることはないと私は考えます。
また、矯正と管楽器を両立すると「歯がボロボロになる」と言われたとのこと。たぶん、歯に負担がかかって歯が短くなること(ジグリング参照)をさしているのかもしれないけど、そんなこともないと私は思います。演奏時にどういう力が歯にかかるかを理解して治療をすれば問題ないし、実際管楽器を吹く人にそういう例があったのかもしれないけど、他に何か要因があると思うんですよね。

何だか、矯正治療中の管楽器を禁止する歯科医が増えているような感じです。以前、装置が外れたのをユーフォ二ウム吹いているせいだと言われたという相談があったり(絶対そんなことないです)。何かあったときに保障できないということなんだろうけど、残念です。

貯めているネタがいくつかあるので、しばらくは更新が続く予定です。

| | Comments (2) | TrackBack (0)
|

February 04, 2009

II級2類不正咬合

II級2類と分類される不正咬合の種類があります。白人に多く日本人には少ないと考えられています。II級2類はあまり本人が困らないのか治療機会は少ないですが、このところウチの診療室ではII級2類の来院者が多いような気がします。
骨格的には上顎前突だけど上の前歯が内側に傾斜している(普通の出っ歯と逆)ので上下前歯の前後差は少ないのだけど、咬み合わせが深いのが特徴です。矯正治療は見た目の割には治療期間が長くかかる傾向にあります。
最近II級2類であるために演奏上の問題が出て来た相談が2件あったので紹介します。

一人はトロンボーン専攻の音楽短大生。本人の自覚はないのだけど先生に歯を治せと言われて来院、その時は矯正するとなると治療期間がそれなりにかかるので勧めませんでした、卒業まで短いし。1年後にまた来院、再度先生に歯を何とかしてみてからトロンボーンを続けるかどうか考えるよう言われたのだそうです。その頃本人はトロンボーンに執着が無くて短大を卒業したら全く別の分野の学校に行こうと考えていました。
演奏時のレントゲンから上下前歯の切縁の位置関係が逆になっているのがわかります。そこで上の前歯(中切歯2本)の形態を変えることにしました。まず切縁を0.5mmほど削り(元々削れていないで萌えた時のままギザギザしていた)レジンを唇側面に盛り側切歯と同じくらいの位置にしました。
結果は息が入りやすくなりハイトーンが楽に出るようになりました。3か月経って「今まではマウスピースの重心が下にあったのが上下均等なアンブシュアを作れるようになった」ということで全然違うのだそうです。それで周りにも勧められ4年制の音大に編入することになりました。

090204_2(クリックで拡大)

0902042


もう一人は部活でホルンを吹いている高校生。顎関節症で1年前から大学病院口腔外科に通っていますがよくならないということで相談にきました。主な症状は閉口筋の痛みで、楽器を吹くと余計痛くなる(例えばテスト期間楽器を吹かないでいたら痛みが軽くなった)ということでした。口腔外科の先生からは強制はしないがホルンはやめた方が良いと言われているけど、どうしても楽器は続けたいということで、今も毎日2時間練習しています。
II級2類の程度は↑よりもずっと大きくて、咬み合わせが深く下の前歯が全く見えないくらいです。楽器を持って来ていなかったのでレントゲンは撮りませんでしたが、おそらく普通の咬み合わせの人に比べてかなり無理な下顎のポジションで楽器を吹いているのだと思います(最近までマウスパイプはほぼ水平ということでした)。咬み合わせが深いので普通の人の何倍も下顎を開かないと上下前歯の隙間ができません。さらに前にも出さないといけません。顎関節とその周囲の筋肉の負担は相当なものと想像できます。
私は矯正治療を勧めました。顎関節症はいろいろな要因で起こるので咬み合わせを直したからといって100%直ると言う補償はないという話はしましたが、おそらくかなり症状は軽減すると思います。楽器を続けたいのであれば出来るだけ早く矯正治療を始めた方が良いと私は思いました。以前にもII級2類のチューバの人の矯正しましたけど、咬み合わせが浅くなるため治療のかなり早い段階で吹きやすくなると言っていました。器具が付くことの心配などで治療開始にはなりませんでしたけど、やった方がいいのにと思います。とりあえずはマウスパイプを下向きにして下顎が無理のない位置で吹くようにする(それはそれで演奏上のデメリットも多いですが)ようにアドヴァイスしました。

| | Comments (0) | TrackBack (0)
|

November 18, 2008

リムは上唇3分の2

今日は私のアンブシュア改造の話を少々・・・といっても大げな変化ではないです。今年の5月くらいにリムをほんの少々上にずらしたのであります。高音域が圧倒的に楽になり(特に中顔面に無理な力が入らなくなった)リップトリルが楽にできるようになった。けど最初、低音域がスカな音になり、普通に吹けていたことが吹けなくなった。そこで7〜8月に左右の犬歯の高さの調整をし、9月くらいには落ち着いてきました。
では、どうしてそういうことが起きたのか解説します、想像ですけど(最初はわからなかったですが辻褄があうようになってきました)。
私は標準よりも少々上下前歯が前に傾斜しています。以前はリムは下顎前歯に乗っており上顎前歯の唇側面には乗らず中切歯の遠心で位置が決まっていたのだと思います。それでマウスピースは少々下向きだった。それがリムを上にずらすことで上の唇側面に乗るようになった。そうすると下顎を前に出す必要が出てきた。
上唇をリムで押さえるので、高音域で上唇が上がらなくなった。以前は上唇にリムは触るだけだったので高音域で筋肉に妙な力が入ってしまうのが悩みだったのが解決し、上唇に無理な力が入ってないのでリップトリルも楽になったということだと想像してます。その分低音域では下顎をかなり前に出す必要が出てきたけどしなかったので低音がスカになったということでしょう。
図が汚くてごめんなさい、レントゲンを撮った訳でないのでイメージであります。赤い部分はリムの圧力を受ける部分です。
081117

私は下顎の歯列が左に少々ずれていまして少々咬合平面が右上がりに傾いているのです。そのために犬歯の削れ方が左右で違う。そこで右は上をレジンで長くし下を削り、左は下をレジンで長くし、上下の歯の隙間が左右でバランスがとれるようにしました。
たぶんなのですが、以前のアンブシュアでは息の流れが少々下向きで上下の歯の隙間は下から見てバランスが取れていたのでよかったのが、息の流れが変わって真っ直ぐに近くなると正面から見ての上下の歯の隙間のバランスは悪いので音域によるアンブシュアがつながらなくなった(左右にずれる)。だから昔出来たことが出来なくなったのでしょう。今はそういった問題がなくなり、右の口角が上がるのも解消しました。
ただし、顎を前に出す必要が出てきたので、低音域を吹き過ぎると顎関節周囲が痛くなる度合いがひどくなったのが困りものです。

昔はトランペットは上1/3・下2/3、ホルンは上2/3・下1/3と言われていて、求める音質の違いかと勝手に思ってましたが、今時トランペットで上1/3で吹いている人は少ないですよね。一般的には上唇1/2〜2/3と言われているようですが、基本的には機能的な問題でリムの位置が決まるのかもしれません。

| | Comments (0) | TrackBack (0)
|

November 17, 2008

カスタムメイドのリッププロテクター

今年の日本矯正歯科学会は9月に幕張で行われまして、私は真面目に全日程参加してまいりました。今年も管楽器関係の演題が1つありました。
北海道大学の先生のポスター展示で「管楽器演奏者がマルチブラケット装置を装着した際に見られる吹きづらさと痛みに対するプロテクターの効果」というものです。内容は、矯正装置装着前から管楽器を吹いている患者5名について、吹きづらさ、痛さ(口唇、歯)を、そのまま、耐水紙および加圧吸引形成器で作ったプロテクター使用時にどのように変化するかを調べたというもの。耐水紙は細長く折って(おそらくよく使う油取り紙を横長に4つ折りした状態)ブラケットの上に密着させ、プロテクターは軟らかい樹脂シート(可動粘膜部はカット)+硬い樹脂シートを重ねておりポスターの図から想像すると、すべての歯冠とある程度頬舌側の歯茎を被った大きなもの。金管は上顎、木管は下顎に着用したとのこと。当然歯が動くので治療中は毎月型をとって作り直す必要がある。結果は、人それぞれではあるが、金管ではプロテクターで痛みが改善し、シングルリードでは耐水紙からプロテクターに変更すると吹きやすさが改善したとのこと。
発表内容からは、調べた5人の楽器は不明(金管、シングルリード、ダブルリード、フルートの分類のみ表記)、年齢や楽器の経験度も矯正治療のどの時期かどのようなブラケットを使っているか治療前の歯並びも不明であった。発表者に質問したところ、すべてアマチュアの中高生で数ヶ月しか試していないということ。ブラケットの種類はポスターの写真ではセラミックブラケットにワイヤーで結紮している。
おそらく初級者だろうから多少厚い物が口の中に入ってもそれなりに吹けちゃうんでしょう。シングルリードに関しては矯正器具のカバーというより切縁をカバーしたことで吹きやすさが向上したんじゃないかと思う(通常のアダプターの効果と同様)。

歯科医師対象に管楽器歯科に関する講演をするという先生から最近メールをいただき発表内容についての意見を求められた。その中で、矯正治療中に管楽器をやる場合はフルートを勧め、どうしても他の楽器を始める時はプロテクターを毎回作製するべき・・・ということであった。確かにフルートが最も影響が少ない(初級者の場合)が、すでに矯正装置に慣れていれば意外と金管楽器も平気で吹けたりするし、私はやりたい楽器を選択するべきだと思う・・・という話は長くなるので置いておくとして、この先生の作製するプロテクターは切縁や歯茎を被わず、唇側面に巾5mmほどというもの。感じとしてはこちらで紹介してる市販の「リッププロテクター」(ちなみに私は矯正歯科材料メーカーから入手しているが、最近楽器屋で売っているらしい)みたいなものか。その先生によればトランペットを吹いて血だらけにしてくるから必要ということです。
(この「リッププロテクター」を試したいという患者さんに使ってみてもらうが、私の診療室ではかえって吹きにくいという患者さんがほとんどです。)

私はこういったカスタムメイドのプロテクターには賛成しない。これを矯正治療中を通じて使用してもらうためには毎回模型作って技工をしなければいけないので、手間もコストもかかり現実的でないし、毎回型取りをされて診療時間も1時間余計かかるとすれば私が患者だったら勘弁だな。痛みは他の方法で軽減できるし、、シングルリードでは吹きやすくなるかもしれないが、矯正治療の初期段階で凸凹が解消して切縁がそろうとアダプターを使用する時と同じような効果が現れる。
私の経験では、ブラケットを薄くて小さくて角ばっていないものを選択し、結紮はエラスティックリングを使うことで、吹きにくさは多少残る人はいても痛みを訴える患者はほとんどいない。毎回プロテクターを作る手間よりもその患者さんのためにブラケット等の材料を揃える方がよほどいいと思うのに。
そういえば、最近矯正治療の相談にきたオーボエの人が、矯正するか迷って楽器屋さんに聞いてみたら「皆血だらけにしている」と言われたとのこと。なんで血が出るかなのだけど、私の所でも中学生の初級者の患者もいるけど血を出す人はいないから、楽器の上手い下手ではないと思うのですよ。もちろん吹き方と歯並びも関係するのだろうけど、血が出るとしたら結紮ワイヤーの端がささるのではないかと想像するのです。ブラケットにワイヤーをとめるのに細いワイヤーで縛るのだけど捻って切った先を丁寧に内側に曲げ込めばよいのだけど、ちゃちゃっと曲げただけでは演奏時に粘膜に刺さることもあるのでしょう。
他でも書いたのだけど、矯正装置で吹きにくい要素の一つがブラケットのウイングの下に粘膜が入り込むことなので、それもあってワイヤーでなくエラスティックリングで結紮するのを私は勧めたい。私金管だけでもかなりの数の患者さんの矯正してますけど、血だらけになることなんてないです。中に3例、痛いというのでその部位だけブラケットをリンガルクリートに変更して解決したことがあります。普通は比較的均一にリムを圧接して吹くのだけど、1箇所に圧力が集中するポイントを作って演奏している人がいて、そのポイントがたまたまブラケット上だと痛いのだと考えてます。3人とも上の側切歯でした。

#北海道大学の作り方だと結構厚いので作り方を変えて、ちょっと試してみようかとも思ってますけどね。

| | Comments (0) | TrackBack (0)
|

October 27, 2008

上の前歯とクラリネットの角度

大学オケでバスクラリネットを吹いている学生さんが来院しました。悩みはマウスピースにパッチを貼るが片側だけ穴が開くので、パッチを張り替えると調子が悪くなるんだそうです。上の中切歯の長さは2本ともほぼ同じなんだけど、前後に段差があり内側にある方の中切歯でマウスピースを支えているのです。これは当然で歯並びに対して水平にマウスピースをくわえていれば問題ないのだけど、少々下向きになるので、同じ長さの歯であっても内側の方がマウスピースに付いてしまうわけです。彼女の場合は上顎前突気味なのでそうなりやすいしバスクラだと楽器の構えに自由度が少ないのであります。
そこで、内側にある中切歯の切縁を削ることと下の前歯にアダプターを試してくわえ方を変えることを提案しました。
オケでバスクラを担当するのは、普段普通のクラリネットを吹いている人が持ち替えをするものなので、彼女にはB管を持ってきてもらいました。ところがですね、アダプターを入れると全然駄目だし、前歯をホンの少々削っただけで音が出なくなるし・・・B管自体長年吹いていないらしく、普段からバスクラだけを頑張っているのですね。
萌出したままほとんど磨り減っていない歯だし少々削った位は全く問題ないので、まずは練習してもらうことにしました。バスクラでは左右の中切歯で均等に咬めるようになったということで、今度はアダプターも試したいということでした。慣れたバスクラではアダプターありの方が音質がまとまって良くなったので使うことになりました。

これまた最近アマチュアのクラ吹きが相談にきました。片方の側切歯が内側に転位していて、そこにマウスピースの先が当ってしまい深くくわえられないので音量が出ないのが悩みということ。楽器は下向きで、自分でも意識して下向きにして口をすぼめたアンブシュアにしているのだそう。内側の側切歯の高さがほぼ中切歯と同じくらいなので、楽器が下向きだと側切歯にぶつかってしまうとのです。
そこでまず楽器の向きを上げてみることを勧めました。前歯の咬み合わせ自体は浅めなので、その方が楽なはず。で、悩みはそれで解決。側切歯と反対側の中切歯の2点でマウスピースを支え、無理に口をすぼめずなくてもよくなり、しっかりとした音質に変わりました。上の前歯に対してのマウスピースの角度が垂直に近づいたことで無理な力がいらなくなったのでしょう。少々歯の切縁を削って調整すれば左右中切歯で支えることも可能でしょう。
後で聞いたら、本人は「もうこれは矯正治療をやるしかない!」と決意していたそうで・・・う〜〜ん、良かったのか悪かったのか。結局歯には何にもしませんでした。

クラリネットは2本の前歯で均等に支えることが出来た方が良いです。そのためには、楽器の角度に応じて前歯をほんの少々削るとよいこともあるし、楽器の角度を変えることで解決することもある、というお話でした。


#といっても、上の側切歯が内側にあるのがクラリネットのマウスピースに当るからと矯正治療をする人もいます。最近前歯がほぼ並んだ人がいますが、やはりかなり吹きやすくなったということでした。内側にあっても楽器の角度を変えることで解決しますが、逆に言えば内側に歯がなければ楽器の角度に自由度ができるということです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)
|

October 23, 2008

金管楽器の差し歯

私は一応矯正歯科専門でやっているので普通の歯科治療はしないことにしているのだけど、どうしても私のところで差し歯を入れたいという管楽器関係の患者さんもあり、根の処置がいらない場合に限りですけど補綴処置もやることにしました。
補綴処置というのはいわゆる取り外しのできる入れ歯の他に、クラウン(歯の周りを削って全体を被せる治療:いわゆる差し歯)やブリッジ(歯の欠損した前後をクラウンにしてダミーの歯をくっつける)をさします。管楽器奏者では、この補綴治療を受けるとき一番心配なのは治療前と歯の形が変わって吹けなくなってしまうことです。ですので、治療を受けるときにできれば下記のような手順をふむと安心と考えていました(当サイト「歯の相談室1998~99年」質問5に掲載。)
・まず治療前の模型を作る。
・土台を削り印象をとる。
・仮歯(テンポラリークラウン)を作る:この段階で楽器を吹いてチェックする(場合によってはいろいろ試みて形態を調整する)。
・形態が決まったら模型をとり(特に形態を変えない時は治療前の模型)これを模して技工してもらう。
・補綴物を仮着する:この段階で楽器を吹いてチェックする。
・補綴物を合着する(最終的な接着剤で)。

しかしですね、こういう形にしてくださいと技工所に参考模型を渡しても、そうは同じ形にはならないのです。隣の歯や対合歯、反対側同名歯があればまだいいのですが、最近入れたのは前歯全部しかも下の歯と噛んでない状態だったせいもあり、全然違う歯ができてきました。大手技工所の技工料の高い材料のいいものを選んでいるのでそれなりの人が作っていると思うのですがそれでもです。普通の歯科的には十分にきれいで自然な形の妥当な物だとは思うんですが、なんとなく丸みを帯びているのです。なるべく平面的に作ってくださいと指示書に書いておいたんですが。それにどう見ても短いし薄い・・・。ということで、硬質レジン前装冠にしてよかったですよ。充填用のレジンを盛り足して形態の調整をしました。
たぶん普段からたくさん補綴物を作ってもらっている技工所であれば、要望も分かってもらえるんでしょうけど、なにせごくたまになもので。丸みを帯びた感じがピンとこない方は「仮歯が吹きにくい理由」(08.2.26)の図を参照ください、ここまで丸くはないですけど。世の中の差し歯には天然歯よりも丸みを帯びていることが多いように思います。
前々から管楽器の方に差し歯をいれるときは、硬質レジン前装冠がよいのではないかと思っていて、というのは通常自費診療で前歯を直すときは大抵の歯科医院ではセラミック(ポーセレン)を勧められるのだけど、厚くなりがちだったり後で形態修整するのが難しいのです。硬質レジン前装冠は保険でもできるのであまりよくない物もあるけど、ちゃんと作ったものは色もいいし摩耗もしなくなってきているし何より形態の修正がしやすい。

#もちろんセラミックの方が高価で優れている点がありますので、できあがってから形態修正の必要がなさそうなケースでは硬質レジン前装冠である必要はないと思いますし、一般的には差し歯をいれて最初吹きにくくてもそのうち適応してそれなりに吹けるようになることが多いので、他院での治療に硬質レジン前装冠を勧めているわけではありません。

では、どのように形態調整をするか、私は音を聞きアンブシュアを見ながら直していくんですが、例えば上の前歯であればチェックポイントは以下の通り。
・歯の厚さ(唇舌的な位置):これを重要視する人が多いが、少々の違いはあまり演奏に関係しないと私は思う。並びよりも上下の前歯で一つの面を作れることが重要。
・唇側面の形態:上下的なカーブ、左右的なカーブとも天然歯のように。補綴物は丸みを帯びていることが多く少々平面的にする方がよいようだ。
・歯の長さ:まず中切歯を臼歯部とのバランス、上唇とのバランスを見ておおよその設定をし、アンブシュア(口角の上下的位置等)を見て決定する。歯を軽く開いたとき(アンブシュアを作るように上下の歯を前後的に揃えて)開きがほぼ均一になるように、またアンブシュアを作った時の下唇のラインに平行になるように各歯の調整をする。
・歯の角の形態:角に近いほど圧力の効いたハリのある音になり、丸くなるほど柔らかめのポアっという感じ。抵抗感や吹き心地を確認しながら三次元的に調整する。
・切縁の斜面、舌側面の形態は普通にしておけばよいと思う(どこまで関係あるかは私にはまだわかりません)。

#ようするに本来の歯の形であればよいのでしょう。

わかりにくい説明ですが、職人芸的なところもあるので・・・・といっても最近やっと見えてきた感じでして、今後変わっていくかもしれません。

| | Comments (0) | TrackBack (0)
|

«MRIで・・・