November 07, 2011

デンタルショーに行ってきました

新響の練習がお休みになる先週末に診療室のスタッフと食事会を大江戸温泉を行うことになっていて、たまたま近くの東京ビックサイトで東京デンタルショーが開催されることを知り行ってきました。歯科関連の業者が集まる大きな展示会です。かなり盛況で、歯科の世界に活気があるんだなと嬉しくなりました。
私はあまりデンタルショーには行かない方なのですが(矯正歯科関連の展示はないですし)、実は現在診療室の移転を考えていて、いろいろ妄想が膨らんでいるところでして、デンタルショーでそれに拍車がかかってしまいました。私の理想としては、小さい診療室ですべて自分の手と目が届く状態で少数の患者さんだけを治療する~なのですが、スタッフに目標を持って活き活きと仕事をしてもらいたいし、矯正治療の患者さんとは長いおつきあいになりますので私がもし病気になったりとか歳をとった時に患者さんが困らぬよう、将来につながるような診療室にしたいと思うようになりました。

とことん患者さんのためになることを考えたいと思っています。一つはレントゲンのデジタル化。矯正歯科で使うレントゲン(セファロ・パノラマ)は、デジタル化してもさほど放射線の線量が変わらないということだったので、フィルムのレントゲンを使っていたのですが、やっと照射線量が半分とか1/4になるというものが出てきました。元々歯科のレントゲンは線量がごく小さいものですが、こういうご時世でもありますし、少しでも患者さんの負担が少なくなるように、これから各メーカーの機種をよく比較して選びたいと思います。あとは、ホワイトニング(歯を白くきれいに)の道具ですね。クリーニングにはエアフローを開業時から使用してましたが、ホワイトニングについてここ数年は患者さんにホームブリーチを勧めていましたが、専用のLED照射器を使うと効率的にかなり白くなるようで、これなら患者さんの負担もなくてよいかなと。

あと管楽器の患者さんのために何ができるか~が私の診療のテーマですが、矯正治療と歯の形態についてはいろいろこのサイトでも書いてきましたが、あとは周囲の軟組織についても考えていきたいと思っています。

このところのマイブームがコンポジットレジンの治療法で、最新の材料・器具・術式について勉強しているところでして、この分野での一人者の教授の講演がデンタルショーであったのですが、非常に面白く、これも活かしていきたいと思っています。
歯が大きい虫歯になったり欠けたり抜けたりしたときに、どうしてもクラウンやブリッジ、インプラントになってしまうのですが、それは歯科医が収益を上げるためにはある意味しかたがないのかもしれないけど、特に管楽器奏者にとっては、できるだけ歯の形が変わらず、治療期間が長くならず治療中も楽器が吹けるということが大切であり、このような治療では演奏に支障が出る可能性が高いわけです。そうなるとコンポジットレジンなどの接着材料を応用した処置が非常に有効と思っています。しかし、それは個人の技量によって治療結果の差が大きく、保険点数の評価が低いあるいは保険で認められず、なかなかやってもらえる歯科医院は少ないのが現状と思います。

また、軟組織に関しては、当院でやっているのはCO2レーザーを利用した顎関節症や舌小帯の処置くらいです。顎関節症だと普通管楽器演奏を禁止されたりするのだけど、一過性のものだったらレーザーですぐに症状が軽減して演奏を休むこともせずにすむし、舌小帯を切ると1週間くらい楽器が吹けないのだけれど、レーザーで切ると休む必要がなかったりします。で、それにプラス何ができるか、一つにはスポーツ分野で行われていることの応用で、スポーツ選手が首に巻いているようなものとか、スポーツ用マウスガードの考え方を応用して、演奏のパフォーマンスアップが出来るのではないかと、デンタルショーで思いました。
あと考えているのが、デンタルエステティックでして、審美歯科の範疇を超えて、口唇や顔面のマッサージ等を行うというもので、この分野の業者も複数あることもわかりました。デンタルショーで「リップエステ」というのを体験してきたのですが、洗顔にしても化粧液にしてもエステサロンにしても口唇に対するものというのは実はほとんどなく、口唇が命の管楽器奏者でも、口唇のお手入れなんてしていないと思うのですが、口唇の角質のお手入れとビタミンなどの栄養を導入し振動を与えて血管を柔らかくするというもので、もしかしたら管楽器奏者に有効かもなんて思いました。今日さっそくお手入れ後の口唇で楽器を吹いてみないと~しかしその器械が250万円もするんですよね。どうやっても元はとれないな。

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October 11, 2011

クラリネット用アダプタの効果

私はアダプタを入れたり歯の形態を変えて効果があっても、処置後のレントゲンはあまり撮っていないのですが、この前、典型的な効果が出たのでお願いしてレントゲンを撮らせてもらいましたので、アダプタ使用前後の比較をご紹介したいと思います。
前にクラリネット演奏で耳鳴りがするという人にアダプタを入れたを書きましたが、その人のご紹介で、特に演奏上困ったことがないけれど、アダプターを試したいと来院されました。
アダプターを入れたとたんに音色がよくなり効果がありました。アダプターを入れることで下唇を支える筋肉が少々内向きに寄るのがわかりました。写真じゃわかりにくいのが残念なのですが。イメージで言うと、口角を横に引く力と内に寄せる力が拮抗していたのが、下唇からの力が下の前歯歯列に向かって密着するようになった(通じるかな??)。最近の木管用アダプタですぐ効果が出る人の典型例です。
普通はマウスピースを上の左右1番(中切歯)で咬んでいるのが、この人は舌側に転位している左右の2番(側切歯)で咬んでいるのです。2番を削ることで1番で咬めるようにすることは可能かと思いましたが、レントゲンを見るとこれでバランスがとれているので、上はいじらずに、下の左右1番が舌側に傾斜している分を膨らませた形態で作成しました。

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使用前後の演奏時のレントゲンの重ね合わせは、このようになりました。アダプタを入れても、リードに当る部分(下の前歯の切縁あるいはアダプタの角)の位置は変わらずに、下顎の位置が変わっていることがわかります。
なぜ良い効果があったかですが、アダプターにより、リードに当る下唇の面積が広くなるから効果がある、と言う人がいるのですが、そうではなく、下顎の位置が変化して口唇の状態が変わるためではないかと私は思っています。下顎を前に出して吹くと硬質な音になりがちなのですが、アダプターで音色がよくなり楽に演奏できるようになることが多いです。
リードを深くくわえられる、リードを弱い力でくわえられる、口腔が広くなることでも音色が変化するのかなと考えていたのですが、それらはほとんど変化していません。やはり、金管同様演奏時の下顎の位置というのが重要なのですね。舌骨の位置は変わってないので、舌骨上筋群の影響もあるでしょう。
となると、アダプターがすべての人に有効というわけではなく、ケースに応じて使用するかどうか、デザインをどうするか考慮すべきです。

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※このところアダプター関係の投稿が続きますが、アダプターがよい・勧めるという話ではなく、アダプターの効果の経験から、演奏に望ましいアンブシュアや顎位、歯並びが見えてくるというお話であります。

※下の前歯のアダプターに歯の形を付与すると良いという話は、振動体が口唇である金管楽器に限った話であり、木管の場合はつるっとしていても音色に悪い影響はないと考えています。


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October 09, 2011

下の前歯も歯の形

1年前に、藝大生に下顎前歯用アダプターを入れてとても良かったをしたのですが、その後半年以上たって、守山先生から「人工的な音を何とかしろ」と言われました。もちろんこの左写真のつるっとしたアダプターでも十分に良い音がしているのですが。とりあえず、表面に何かしようと思ったのですが、どうやってやるかいろいろ考えて、義歯用の人工歯を埋め込むか、表面にカービングするか・・・で、いい方法を思いつきました。1)元々の歯列模型に薄いシートを加熱圧接して歯の形のカバーを作る。2)アダプターを入れた状態の模型にヘビーのシリコン印象材で凹型を作る。3)シリコンの凹径の内側に1のカバーをトリミングして敷く。4)カバーの内面にレジンを盛り、歯列模型に圧接する。5)溝を少々はっきりさせて仕上げて調整。で出来た物が右の写真。リアルな出来でしょう〜。これにしたら周囲に「アダプターやめたの?」と聞かれたそうで、普通の歯にしか見えません。
それで、結果ですが、替えた途端に「音違う!」って感じでした。ドイツらしい音になりました。素人にはわからない程度の変化かもしれませんが。守山先生にも大好評でした。

音色は倍音構成で決まるわけですが、表面が平滑だとたぶんほとんど整数倍音になるのだけど、表面が本来の歯の形をしていれば、どんなに歯並びが良くても当然凹凸や溝や隙間があるわけで、それが非整数倍音を生み、その楽器らしい音色となるのではないかと思います。

私は、金管の上の前歯用の大きなアダプターはあまり勧めないようにしていました。それは人工的な音がするからです。入れるとしたら1本か2本用の歯の形に近いものを作ります。以前、他院で作った物を愛用しているホルン吹いてる学生さんの希望で、それと同じ物を(私としては不本意な)作ったことがありますが、何か普通じゃない音をしていました。そういう経験もあり、音色への影響は上唇の振動の仕方が大きいと考えていましたが、下の前歯もそれなりに影響するのだということがわかりました。守山先生は、下唇の方がプレスが強いから下の方が影響するのではとおっしゃってましたが、それでもたぶん、上の方が影響が大きいとは思います。

歯が平らならどんなにいいだろう〜とか、アダプターはつるっとしているから音色が良くなるんだと思っている人もあろうかと思いますが、そうじゃないんだな〜。結局は歯の形は歯の形をしている必要があるということです。

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September 29, 2011

音域による下顎骨、舌の変化:フルートの場合

この前は、下顎骨、口唇、舌、舌骨の音域による変化をホルンの例でお見せしました。基本的には金管楽器は同じような動きをすると思われます。木管もそうかというと、そうじゃないんです。私は口腔内の広さのコントロールは同じようなことをするかとばかり思っていたのですが、フルートのレントゲンを撮らせてもらったらこのようになりました。

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フルート演奏時のレントゲンは、通常金属に隠れて歯や口唇の状況がわからなかったり、レントゲンの機械に楽器がぶつかるので頭部管だけで吹いてもらったりしていたのですが、木製の楽器(モダン)を用意してもらい、通常と逆向きにして撮ったので、口唇と歯の関係がはっきりとわかりました。このモデルは当団首席奏者で書物を大量に読む人なので、理屈通りの吹き方であろうと思われます。
今回の講演の準備として、フルートの発音方法、音の調整の仕方については随分勉強しました。簡単に言うと、音域によって歌口の内壁のどこに息を当てると良く鳴るかが違うので、音によって当てるポイントの位置を調整する。息の角度を下顎の前後運動と楽器の内外への回転の組み合わせで調整をするが、人によってその割合は違うということです。角度については楽器によっても違い、その楽器により良く鳴る角度が違うらしいです(フランス奏法・ドイツ奏法のことですね)。
高音域ほど下顎は前方に移動し、低音域では後方にくる。これは低音ほど鳴るポイントが下にあるので、息を下向きにする必要があり低音に行くほど下顎を後方に、さらに下唇も緊張させています。それで、上下前歯の隙間はほとんど変わりません。
わからないのが舌の形なのですが、舌後方の上下的な変化が金管とは逆なのです。これは、音色のコントロールのためかもしれません。高音域で音が薄くならぬように舌で調整をしているのか・・・もうちょっと勉強してみます。


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September 28, 2011

音域により下唇の状態が変わる

ホルン演奏時の音域による変化のレントゲンの重ね合わせを昨日載せたのだけど、口唇のところをよく見ると、下唇と下の前歯の関係が音域によって違うことがわかります。低音にいくほど下の前歯の先に乗っかる下唇の量が増えるのです。

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金管楽器の演奏時のレントゲンを撮ると、マウスピースが金属なのだけど、かろうじて口唇が写るのですが、上の前歯の先が上唇の縁と一致し、下唇は下の前歯の先に乗っかっているのです。私の経験ではこれは誰でもそうなります。

私はよく金管楽器を吹く人の上の前歯の長さを調整することがありますが、これと音色にある程度の相関性があって(私見ではありますが)、上下前歯の隙間が増えることで音色が重くなる、隙間が減ると音色が軽くなる。上の前歯の先と上唇の縁の位置は一致するのは変わらないので、上下前歯の隙間が増減するとその分歯から出ている下唇の量が増減すると考えています。歯の長さを変えると下顎の開きも変化することがあるので一概には言えず、これは仮に下顎の開きが一定ならということになりますが、アンブシュアを変えずに歯の開きが変わると、そのような音色の変化が起きる傾向があることを経験しています。
なぜか考えると、歯の開きが広くなって下唇の振動が増えることで、倍音構成が変わり、おそらく低い方の倍音が増えて重たい音に聞こえるのではないかと。それは低音域を鳴らすために下唇の振動を増やす必要があることにつながるのではないかと思うのです。
よく金管楽器の口唇の振動は上と下の割合がどう〜と言われますが、実際は音域によって変化するのではないかと思うし、自分でホルンを吹いてもそれは実感できます。


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September 27, 2011

ポイントは舌骨か

さて、2010年8月に紹介したホルンのアダプタのその後のお話です。アダプター使用してない時と使用したときの重ね合わせをしてみました(中音域の実音C:高音、低音はいずれ)。
アダプターの厚みの分は、半分は下顎が後ろに行くために使われ、半分は前歯の代わりとなり前方にいっています。このため、上下口唇の被りが浅くなり、下顎が後下方にいき、結果、倍音が増えて音色がよくなったと考えます。音量が大きくなったのは、倍音が増えると大きく聞こえるようになるのと、口唇の被りが浅くなると発音効率がよくなると予想しています。

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前方に出ていた下顎が後方にいくとなぜ音色が変わるのか?ですが、ハッキリとはわからないので、下唇の無理な緊張がなくなると今のところ表現しているのですけど、おそらく、舌骨上筋群がリラックスするためなのではと想像しています(これは去年8月にも書いていますね)。
舌骨上筋群というのは、主に下顎骨を引下げて口を開いたり(舌骨固定)、舌骨を引上げて舌後方を持上げて嚥下等を行う(下顎骨固定)筋肉なのですが、これが引き延されて緊張することはあまり良くないことなのです。よく、咬合が原因で肩こりや頭痛になると言いますが、これは咬合の不具合で舌骨上筋群が緊張するために起こると言われているのです。下顎を前方(あるいは側方)へ出すとどうなるかというと、
1)舌骨上筋群が引っ張られ緊張し、それに付随して下唇周囲の筋肉が過剰に緊張する。
2)舌骨の移動により頸椎が偏位して首やその周囲の筋肉に緊張する。
3)舌骨上筋群が緊張することで、舌骨が自由に上下に動きにくくなり舌後方のコントロールが難しくなる。
のではないかと想像しています。

金管は音域によって、歯の開きを変えて(高音では狭く、低音では広く)いるわけだけど、単純にそれだけではなく、特に下唇の緊張具合や厚さを変化させているのだけど、それがどういうことなのかずっと考えていました。下唇下制筋とオトガイ筋で調節をしていると思っていたけど、どうもそれだけじゃない。よくシラブルというか、舌後方を音域によって上下させるわけですが、それは単に口腔内の広さとか絞りを変えて息のスピードをコントロールしているだけでなく、舌骨の位置を変えて下唇の状態を自動的に変えているということなのだと思います。下顎を前に出さないことで舌骨が自由になるというということです。
若いときは、少々上顎前突で顎を出して吹いていても筋肉に柔軟性があるから十分に吹けるけど、年を取ると、単に顎関節がどうのではなくその辺の柔軟性が減少して、同じ吹き方では思うように吹けなくなるということなのかもしれません。
舌の位置が大切とよくいいますけど、そういうことなのですね。

下の重ね合わせはまた別の藝大生のレントゲン。音域により舌骨が上下しているのがよくわかりますね。下の前方部分の高さは、音の高さによって変わる(高音は上、低音は下)のですが、舌後方はむしろ低音で上に上がっているのがわかります。低音で舌前方を下げるためには後方を上げる必要があるということだと思います。

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September 20, 2011

予告編その後

6月の予告編で言っていた学会の講演が終わりました。何を話すか考え、それを全部盛り込むと2時間喋っても足りないので、項目を絞り、さらに1文字単位で削って、ぴったり30分の内容にしました。前の人が内容の割に持ち時間がとても長かったので、分けてもらえればよかったな〜〜。
「全身咬合学会」というある意味特殊な学会なので、それに合うようにし、管楽器演奏で不正咬合が起きるのかどうか、歯列咬合がどのように演奏と関係するのかどうかの2つにしぼりました。本当は実際にどのように治療をしているかの方が、聞く方は知りたいことと思うのですが、それだけ話しても、変な風に理解されて変に治療されてもやだな〜と思ったし。
どの程度伝わったかはわかりませんが、皆さんに面白かったと言ってもらえたので、よかったかな。それより、いろいろ勉強していろいろ考えた良い機会になりました。私は基本的に凝り性なので、まずこれに関する文献を集めるだけ集め、英語のものはアブストラクトだけでなくすべて翻訳し、音響物理学関係の文献もわからないなりに読み、各楽器がどのように音が出てどう調整されるのかを調べる所から始めました。たとえば、歯科の人はクラリネットもサックスもいっしょにしてしまうのですが、くわえ方が違うから歯にかかる力も違うわけで、くわえ方が違うのはどうしてなのか〜〜を2日間くらい本を読んだりネットで調べたりして、結局は講演では30秒くらいしか使わなかったり(この話は長くなるので、また後で)。
そういったいろいろな疑問点も湧いてきました。わからないことは、このブログでつぶやいて行こうと思います。わかって来たこともあり、それは何らかの形で世の中に出して行きたいと思います。
私は管楽器歯科と標榜をするつもりもないし、管楽器歯科専門ですと言うつもりもないですが、日本に自称管楽器専門歯科医は複数いるわけで、そういう人達の言っていることややっていることの中には、アレレと思うこともあり、その辺を暗に盛り込んでみました。大抵の歯科の先生は根本先生の「すべての管楽器奏者へ」の内容を前提にしているんですよね。疑問に思うことから始めて自分で考えないとね。講演の座長の先生は昔大学教授時代、自分の教室で管楽器関係の研究や論文を多数出していて、最近も管楽器と歯科関係の講演や雑誌投稿をしているのですが、何にも話しかけてこなかったということは、伝わんなかったんですかね。

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July 10, 2011

アダプタで演奏時の下顎位置を変える

5年ほど前の話なのだけど、クラリネットの勉強に留学中なのだが、耳鳴りがするようになったため留学を中断して帰国しているという人が相談に来たことがありました。
通常は下顎が少し前下方に移動した位置でクラリネットをくわえるのだけれど、演奏時のレントゲンをみると下顎は後方に行っており関節窩に下顎頭が押し込められたようになっている。前歯の被蓋が浅いのに楽器を下向きにして下の歯が後ろにいっているのであります。関節の周囲が圧迫されれば、耳に関係する神経や血管にも影響が出るだろうから、それが原因の一つかもしれないと考えたのです。丁度数か月前に吹き方を変えたということなので、演奏と耳鳴りの関連はあやしい。
そこで、アダプタをダメ元で使ってみてもらうことにしました。もちろん下顎をもう少々前に出して吹くようにというアドヴァイスもしましたが、そう簡単に吹き方が変わるわけではありません。アダプタで下顎前歯部の高さが増す分下顎が開くので楽になるかなと思ったのですが、すぐには耳鳴りが改善するものではなく、後は整体とか鍼灸とか試すくらいかと話し、その後どうなったかなと心配していました。

その彼が少し前に帰国のついでにアダプタのスペアを作りたいと来院しました。今はフランスで職を得てクラリネットの仕事をしているそうです。よかったよかった!アダプタなしでは演奏ができなくなったそうです。やはりあると楽に演奏ができるとのこと。
とりあえずアダプタを入れた状態で型をとりそれを元に複製を作りましたが、今までの物よりも幅を狭くすることを勧め、削りました。吹きながら調整しましたが、幅を狭くすることで下唇の収縮方向が変わって音が良くなりました。5年前は私は少々幅の広めの物を作っていたのですね~反省です。犬歯間という点では変わりませんが、犬歯のあたりのレジンの厚さを上の犬歯との関係を考慮して決めなければいけません。

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演奏時レントゲン(5年前) 咬合時
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5年前のアダプタ 新しいアダプタ

下顎の位置を変えて吹くことがそう簡単にはいかずアダプタが有効だった例をもう一つ。

音大をサックス専攻で受験予定の浪人生が相談に来ました。受験本番は1週間後です。
半年前から急に思うように吹けなくなり、すぐばてるようになったそうです。 本人は一時ソプラノを吹いたせいで前歯が1本出たためではないかということでした。
歯並びはきれいでほんの少々上顎前突(と言えないくらい少々)気味。1本出てきた~というほどの変化はなかったと思われます。 演奏時のレントゲンを見ると下顎前に出し過ぎ(上より下の前歯が前に出ているくらい)力入って音が硬くなっている感じでした。
聞くと先生にも下顎前に出し過ぎと言われたことあるとこのこと、判っているけどそうしないと吹けないということですね。
下顎前歯にアダプタ入れて吹いてもらいました。楽なアンブシュアになり音も格段に良くなりました。よかったよかった。

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演奏時のレントゲン アダプタ装着時

下顎の位置を変えて吹こうとすると口唇周囲の筋肉バランスやマウスピースのくわえ方が変わるので、そう簡単には変えられない。それまでの試行錯誤があってそのアンブシュアで吹いているわけですから、それを活かしつつ下顎の位置を変えるのにアダプタは有効だと思います。
アダプタを入れた後のレントゲンを確認すればいいのですが、すでに結果が出て満足しているので、患者さん本人にとってレントゲンを撮る直接のメリットがないので撮らないことが多いのです、ごめんなさい。私は基本極力必要最小限のレントゲン撮影にしようと思っているのもあります。

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June 22, 2011

オーボエと前歯の長さ

今日は少し前に来院されたオーボエの方の歯のお話をしたいと思います。

アマオケでオーボエを吹いている20代後半の男性、吹いていると唇が痛くなるのが主訴でアダプターを試したいと来院。小学生の時に上の前歯(1|1)を折って短いままになっている。オーボエには一生懸命取り組んでいる感じだけど、残念ながら音質が悪く、よくある口を横に引き過ぎの潰れたミーって感じの音がしていました。

演奏時のレントゲンを撮ってみると、歯が短いところにリードが入っていて、リードをホールドするために通常よりも咬み込む必要があるので、真ん中だけ短いからその脇の部分(側切歯、犬歯)で唇が圧迫されるわけです。
そこで、アダプターを試す前に歯を長くしてみることをお勧めしました。歯を長くするともっと痛くなるのではないかと思っていたとのこと、そんなことないですよ~~。

で前歯をレジンで歯らしく形を整えたところ(2mmくらい長くした)普通のオーボエらしい音が出るようになりました。アンブシュアも激変、横に引いていたのが普通になりました。さらに約2週間後アダプターを試したいということで使ってもらいました。さらに音がよくなったです。元々ちゃんと習ってきちんと練習している人のようなので、さらに上達すると思います。

さて、口唇が痛くないようにするのだったら、上の前歯の高さのバランスを良くすればよかったのだけど、まずは中切歯を歯らしい形にしました。長い間歯が短いまま放置されて挺出しているので、結果として、側切歯との差が大きく上下前歯の被蓋も正常範囲ではあるが大きめになりました。もしかしたらもうちょっと短くした方が結果が良かった可能性もあるし、これだけ長くしたからこそアンブシュアのバランスが良くなったのかもしれない。
アダプタを入れてさらに良くなったのは、見かけ上のジェットが減って下顎を前に出さずに済むので、下唇の力が抜けたのか、それとも歯の高さが増して演奏時の顎の開きが増して筋肉のバランスが変わったのか・・・どっちなのでしょうねえ~。顔の向きも変わってますね。
いずれにしても、どの管楽器も、普通の歯の形をしていてオーバージェット・バイトが1~2mmと小さめが良いという仮説が、オーボエでも当てはまったようです。

治療前 前歯を長くした直後 アダプタを入れた直後
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6/25:写真をアップして、文章を一部修正しました。

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June 21, 2011

予告編

うゎ〜8ヶ月も更新してませんでした。その間も普通に診療してホルン吹いております。管楽器の方の治療でもいろいろな体験がありました。忘れないようにとmixiの日記には付けているのですが、こちらにも書いて行きたいと思います。

大震災の影響でとある学会の講演を引受けることになりました。震災の影響というのは、元々他の先生が予定されていたが被災されて出来なくなったからということみたいです。主催者側は、管楽器の演奏で不正咬合が引き起こされる〜という話を期待しているようなのですが、私はそうは思っていないので、今何を話すか考えているところなのですが、期待される内容から離れるかもしれません。
管楽器演奏で歯列/咬合(歯および顔面骨格)が影響を受けるという報告は昔からいくつかされています。金管楽器では前歯が舌側(内側)に入り叢生になるとか、シングルリード楽器では上の前歯が唇側(外側)に傾斜したり顔面高が大きくなるとか、といった結果が多いようです。だからII級1類(歯が出ている上顎前突)の人は金管楽器を吹くべきだとか(前歯が引っ込む)、反対咬合の人はクラリネットを吹くと良い(上の前歯が出る)と歯科医の立場として論文に書く人もいます。
私としては???です。多くの研究は、各楽器を演奏している人のレントゲンや模型を分析し、標準値あるいは対照群と比較するわけですが、その数値の差も、これは標準範囲内だろうくらいの違いですので、管楽器を吹くと不正咬合になるということにはならないのではないかと。たとえ1日5時間演奏しているといっても、そのうち実際に音を出している時間はその一部であり、歯に力がかかるような高音域・大音量となればさらに短く、それくらいで正常な歯が動くものかと。
それから不正咬合を是正するために楽器を選ぶというのも、なんだかな〜〜。自分の好きな楽器、やりたい楽器を選べば良いじゃないか。もし歯列/咬合に問題があるのであれば、それが演奏に不利にならない楽器にするというのならわかるけど、II級1類にトランペットを勧めるのは逆じゃないかと思います。
私の経験では、どの楽器も普通の歯列/咬合であることが大切。叢生(凸凹)はさほど関係ないのです。でも上下のバランスが取れていて、前歯の被蓋(オーバージェット、オーバーバイト)が1〜2mmであると有利だと言えます。そうじゃなくてもそれなりに吹けるけど、その方が楽に上達出来るしより上を目指せる=理想的な奏法になりやすいということかと思います。
どうしてか・・・歯と口唇と楽器の良い位置関係=演奏に良い(筋肉に無理な力が入らない)顎位になるから。結局、良い音というのはその楽器らしい音、つまり普通の(=標準的な;あえて言えばヨーロッパ人の)歯、歯列、咬合の人が吹く音が良い音ということなんだと思います。そういう話を今までの経験からしようかなと。

というわけで、しばらくは頻繁に更新したいと思います。

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