December 05, 2016

結局は歯並びは大事

思い立って前歯3本を長くしてみた。
左上3番と左下2番3番を試しに1mmくらいレジンで長くした。とにかくびっくりするくらい吹きやすかった。調子が出るまで苦戦するアルペジオの練習も楽に出来るし、高音域も無理なく出るような気がするし、見た目も何か昔こんなアンブシュアだったよなという感じ。当然レジンは噛んでしまうし、酸処理や接着剤を使っていないので取れてしまったが、もう長くしないで吹くことができない。
そこで、思い切ってきちんと酸処理をしボンディング剤も使ってレジンを盛った。今までの咬頭嵌合位で咬合調整すれば盛ったレジンは無くなってしまうので、咬合位を変えて(直して)、当然臼歯はちゃんと噛んでいないがガイダンスを調整し、当初より短くはなったが、思惑通りのアンブシュアに近づいたと思う。

そもそも何で長くしようと思ったかである。
そもそもは「金管楽器のドッペルトーンはなぜ起こるか」を、とあるSNSでの意見交換で書き込みをきっかけに考えているうち、そうだ私も改善しようと思ったからである。
ドッペルトーンは簡単に言ってしまうと、演奏時の上唇と下唇の被りが均一でないからで、原因としては、歯並び(特に下の犬歯が出ている時に起こりやすい)、あるいは何らかの影響で演奏時に下顎が横にずれてしまっているからではないかと考えている。そのためにドッペルトーンあるいは息漏れが起こり、起こらなくても無理な力がかかってアンブシュアや音質に影響が出るのではないかと思う。

昔それについてはこのような記事を書いている。
金管演奏時の上下口唇の関係(1)

私はというと左側の下唇がやや出気味なので、意識的に下顎を右にずらし(左にずれているのを修正し)左側も上唇が下唇に被るようにして練習してみた。中低音は良く鳴るようになったが、高音域がキツくなってしまった。
私は以前自分で歯の調整やアダプターの試作を含めアンブシュアをいじりすぎて自滅したので、長いこと形にこだわらず鏡も見ず口唇を意識せずに吹くようにしていた。あらためて自分のアンブシュアを観察してみると、下顎を左にずらして吹いており、必要があってずらしていることがわかる。私は少々歯並びが左右非対称で、そのために歯の咬耗も左右非対称に起きて左側の歯が磨り減っているのである。だからまっすぐ歯を開くと歯の開きが左の方が開き過ぎる。下顎を左にずらしてアンブシュアを作ると歯の開きが左右対称になるのである。

歯の開きが左右対称だと良いことについてはこちらの記事。
歯の開きのバランス

つい2年前に同じようなことを書いているのに忘れてた。
やっぱり歯の開きは左右対称がよい


歯を3本長くして、下顎をまっすぐにしてアンブシュアを作った時の歯の開きがほぼ左右対称になるようにはしたが、臼歯が噛んでいない状況なので、思い切って歯並びを直すことにした。いろいろ考えてマウスピース矯正(クリアアライナー)。アンブシュア目的だと吹きながら歯の動かし方を調整しやすいからである。半年くらいはかかるかな。結局は歯並びって今更ながら思うのでした。

1612051 1612052
元は左図。左側(向かって右)の方が歯の開きが大きい。右図はレジンで仮に長くしたところ。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 20, 2016

2つのアダプター

以前から当院で作製したアダプターを使用しているクラリネット奏者が、アダプターを無くしてしまったので再作製したいということで来院しました。

最初に作ったのが10年前(=A)で、6年前(=B)にスペアを作りました。スペアを作る際に、私の方から敢えて形状の変更を提案し、最初の物よりも幅を狭く、咬合時の上顎とのスペースを狭くしました。
多くの方のアダプターを作製していくうちに、私なりに「よいデザイン」の要件ができてきて、幅はあまり広くせず、下顎犬歯間の幅を変えない。そうすることで下唇を下顎歯列に密着しやすくなり下唇が安定すると考えたのです。また不思議なことに咬合調整をきちんとすると良い結果となり、それは上下のバランスを取ることと、下顎のセッティングの安定につながるのではないかと想像をしていました。
私としてはAを見て過去の自分を反省し、私なりの良いデザインであるBを作ったわけです。

以前のブログ記事はこちら

A 1611201
B 1611202

ところが、無くしてしまったのはAの方で、メインでこちらを使っていたのだそうです。Bでも使えなくはないのだけれとAの方が音色が好きだそうで、個性的な音色が武器となっていたということです。AとBの違いは

1)Aは作製時に模型のアンダーカットを埋めて作製したので歯との間にわずかに隙間があるが、Bは内面を一層削って軟らかいレジンで直接口腔内で硬化させたため、歯に密着していたのです。Bではリードの振動が直接歯に伝わるために痛みを感じ、しっかり噛みこむことができないということです。
2)幅が違う。前述のような理由で幅を狭くしましたが、広い方がマウスピースが安定してよいということでした。
3)Aは真っ平でしたが、Bはなるべく咬合するようにしました。平らな方がよいのではということでした。

Bを作製したときのベースはAのコピーでしたので、今回はBのコピーを作製して写真を参考に幅を変え、あとは吹きながら以前の感覚を思い出していただき調整していきました。

できあがりはこちら(=A’)

1611203 1611204

本人の吹奏感を元に高さを調整しましたが、正面の写真で見ると左右傾いて見えるのですが、下から見るとバランスが取れているかな。

語弊があるかもですが、私の感想としてはA’はフランス的なふわっと柔らさを纏った音、Bはドイツ的なしっかりした境界明瞭な音。ご本人によれば、しっかりマウスピースを噛むことが出来るので、口唇に力を入れずに吹くことができるからではないかということでした。

私も今後は思い込みをせずに、本人の目指す音色やアンブシュアを理解して、いろいろ試して形態を作っていきたいと思いました。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 10, 2016

ダブルリップ用アダプター

当院にて、上の前歯の調整をし、下顎前歯のアダプターを作製して使っていただいているクラリネットを吹く方です。今度はダブルリップに挑戦したいということで、上顎にアダプターを試してみることになりました。

以前の記事はこちら

クラリネットのアンブシュアは、通常上唇は巻かずに上顎前歯で直接マウスピースを噛み、下唇は巻いてリードを噛むのですが、ダブルリップというのは、上下とも口唇を内側に巻いてマウスピースをくわえる奏法です。
メリットとしては、音色が柔かくなること。おそらくリードにかかる力を弱くできるからではないかと思います。しかし、歯の状況によっては上唇内側の粘膜が痛くなる可能性があります。

この方の場合、上顎前歯が磨り減って鋭利になっているため、ダブルリップで吹きたいのに上唇が痛いということです。しかし、歯が磨り減って咬合高径が低くなっているので、そういう意味でもダブルリップは有効かなと思います。

そこで、相談していろいろ試して、結果このような物になりました。

1611101

ソフトシート1.0mm(一番薄いもの)を使用し、加熱圧接すると出来上がりは厚さ0.5mm。表側は長くても気にならないということで、保持のために歯頸部から5mmほど。内側は、あるとタンギングに差し支えるというで、歯頸部ぎりぎりに。最初は犬歯~犬歯にしましたが、段差があると違和感があるということで奥まで伸ばしました。

1611102


| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 02, 2016

歯の長さを整える

オーボエ用の上顎アダプターがとても効果があったので掲載します。

普通の会社員をされているけど音大出身のかなり上級者です。元々は上顎前歯2本の長さが違うために当院にいらした方で、歯ぎしり等により歯が全体的に磨り減っているのだけれど、1本は補綴物(セラミック)のために長さが保たれており、結果2本の長さが変わってしまった。
そこで、もう1本の方をレジン充填材で長さを調整し、演奏上の効果もあったし壊れることもなかった。
全体的に歯が磨り減っているために、咬合が低くなっており、なので下顎前歯部のアダプターで咬合を上げて演奏が出来た方がよいと考え勧めたのだけど、違和感があって使用はしていないということ。

何年かして、今度は上顎の側切歯、犬歯がかけたということで来院された。歯の咬耗は進み、左右とも中切歯に比べて側切歯と犬歯が短い。
最初はレジン充填材にて歯の形態を長くし、咬合調整も十分にやったのであるが、なにせ歯ぎしりで歯にかかる力には耐えられず、取れてしまった。歯ぎしりによる歯の損傷を防ぐためのナイトガードは使用しているが、どうしても日中でも無意識に歯ぎしり食いしばりをやってしまうのだそうである。

1611021

そこで、着脱式にして長さを補うようなアダプターを試すことになった。模型上で歯の長さを整え、それにハードタイプのシートを使用してマウスピースを作成した。
結果は期待していたような効果があったということで、pやsfが特に良くなったとの事。ご本人によれば、歯の長さが短いと、その部位の口唇・頬の支えがないため、内側に寄る方向に力が入って、上唇の中央部に厚みが増してしまうのではないか。そうするとリードに余分な力がかかってしまい、キャパシティが減ってしまう。ということです。

1611022 1611023

オーボエ・ファゴットでは、口唇を内側に巻いてアンブシュアを作るので、どうせ歯並びは関係ないと思っている人は多いのではないかと思うのですが、やっぱり関係あるんですよね。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

October 31, 2016

反対咬合とトランペット演奏 その4

さて、治療方針をどうするかです。反対咬合の程度が大きいため治すとしたら、外科矯正を併用する大掛かりな治療となるため、プロ奏者として活動しながらというわけにはいかない。部分矯正で軽い反対咬合にするという手も考えましたが、とりあえずアダプターを試すことにしました。
アダプターは出すことはできてもひっこめることはできない。反対咬合のアダプターは普通に考えれば上の前歯に付けて前に出すでしょう。しかし上の前歯を大きくアダプターで被うことは、金管楽器を吹いていれば使い物にならないことは想像が出来ます。そこで、下の前歯にアダプターを入れることにしました。演奏時の歯の開きは必要以上に大きく、そのため下唇が内側に巻き込まれているので、歯を長くし、しかも内側に入るようにデザインしました。
作ってみて試奏すると音は出る。これが仕事の場で使えるかどうかは、しばらく使ってみないとわからないとは思いました。音色は大きく変わりました。元は深く柔らかな音質で、もちろんそれはそれで魅力的ではありましたが、アダプターを入れるとトランペットらしい硬質で華やかな音になりました。

1610311 1610312


さてアダプターを作って1か月半ほど経過し、再来院されました。アダプターは常用しており、無しでは演奏できない状況との事。特に高音域のアタックが改善されたということでした。
演奏時のレントゲンを撮らせてもらいました。
中音域では、下顎の位置は変わりませんが、アダプターの分歯が長くなっているので、下唇が内側に巻き込まれれ方が減ったように見えます。
高音域では、アダプター無しに比べて下顎の位置が約3mm上方になり、アダプターの高さ2.5mmを加えて、歯の開きが約5.5mm狭くなっています。本人の感覚として舌を拳上しなくでも出るようになり、より高音域でさらに舌を拳上できるようになったということです。実はレントゲンでは舌の上面の位置は変わっていないのですが、下顎の位置が違うので、相対的に舌を拳上せずに済むようになったということですね。だからアタックがやりやすくなったのです。また、高音域では楽器の向きも変わりました。アダプター無しでは下唇の支えがないため下向きでしたが、中音域とあまり違わなくなりました。

1610313 1610314
中音域              高音域

| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 08, 2016

反対咬合とトランペット演奏 その3

前回の「反対咬合とトランペット演奏 その2」で紹介したプロ奏者のレントゲン写真を分析重ね合わせした。
高音域では関節頭が後方に行っているが、関節窩の形態から、どうしても下方に行く必要があり、結果下顎が回転して前歯が開いているのがわかる。
下唇を巻き込まないと吹けないということであったが、レントゲンでも巻き込まれているのがわかる。演奏時に歯を開いていることが原因と思われる。

1609081

さて、反対咬合・受け口といってもいろいろなパターンがある。骨格的なバランス、前歯の傾斜、下顎骨の形態などなど。骨格的に上下顎のアンバランスの程度が大きいほど下顎前歯の舌側傾斜の程度が大きくなることが多いし、骨格のバランスは良いけど前歯が唇側傾斜してるために反対咬合になることもある。反対咬合でも演奏時の顎位はそれぞれであるはずである。
根本先生の説では、反対咬合では演奏時の前歯の関係は上よりも下の前歯が前に来るということであったが、私はなかなかそういうケースに会ったことはない。一人だけちょっと下の歯が前に出ているかなというレントゲンがあったのでよく見ていると、ほぼちょうどと言ってよいようである。この人の場合は、下唇の唇側傾斜が大きく、どうしても下顎前歯の切端が前に出やすくなる。

1609083

つづく

| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 06, 2016

反対咬合とトランペット演奏 その2

先日とあるプロオケのトランペット奏者が来院した。元々受け口であるが、だんだん前歯の歯並びが変化したと感じており、アタックが決まらない、下唇を巻き込まないと吹けない、高音域で音がこもってしまうといった問題があるということであった。それらの演奏上の問題は受け口にあるのではないかと考えているとのこと。

1610315
咬合時の歯並びの写真

歯並びは、顎顔面の成長が終わり親知らずも落ち着くと、そう変化はしないのであるが、歯ぎしりや舌癖などが原因で成人してからでも変化していくことがある。なので、歯並びが変化してきているというのは実際に起こっている可能性はあるが、今回はその件については触れない。

反対咬合の程度としては大きく、外科手術併用でないと治すことはできない。まずはレントゲンを撮ってみた。
下のレントゲンは、左が中音域の実音F。右がオクターブ上の実音Fである。

1609061  1609062

中音域              高音域


反対咬合の程度が大きいのに、演奏時は上の前歯よりも下の前歯が後ろにある。下顎頭(下顎骨の関節頭)は関節窩の中にとどまり回転している。注目すべきは高音域で、通常前歯の開きが小さくなるのに、下の前歯がさらに後ろに行き、開きが大きくなっていることがわかる。おそらく高音を出すためには、前歯の開きを狭めることよりも、上下前歯の前後的な差をつけることの方が必要なのだと思う。下顎頭はこれ以上後方には行くことができず、下顎前歯が後方に行くためには下顎骨が後方に回転する必要があり、必然的に前歯の開きが大きくなったのだろう。

高音域では、息を絞るのが困難なことと、歯を開くために下の前歯にマウスピースのリムが引っかからず、上の前歯に下からプレスする状態であることが、高音域の演奏に影響を及ぼしていることが推察される。

つづく


| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 03, 2016

反対咬合とトランペット演奏

咬合と管楽器演奏の関係については、根本先生の本の図が有名すぎて、皆さん信じているのではないだろうか。各種テクニック本にも引用されているらしい。

1609031

   ~根本俊男著「すべての管楽器奏者 ある歯科医の提言」より


下顎は3次元的に動き、可動域には個人差があり、口唇の厚さは筋肉により調節可能だし、マウスピースの圧力は均一ではない。つまり、咬合タイプによって決まるわけでもなく、咬合タイプによって理想的な向きがあるわけでもないと私は考える。
図では、正常咬合では演奏時に上下の前歯前歯がそろっていて、反対咬合では下の前歯が前に出ているが、私の経験(演奏時のレントゲン撮影)では、正常咬合の演奏時の顎位は、上下の前歯がちょうどそろうことはなく、わずかに上の前歯が前に来る。反対咬合の演奏時の顎位では、下の前歯が前に来るケースは少ない。

下の写真は5年前に講演のために、咬合と楽器の向きが関係ないことを示すために当団練習風景をこっそり撮ったもので、当団トランペット3名は咬合パターンがまったく違うのにも関わらず(1st骨格性III級、2nd上顎前突、3rdI級正常咬合)、向きはほぼいっしょである。
楽器の向きは強いて言えば演奏時の上下口唇の位置関係と相関があり、つまり出したい音色によっても変わるのではないか。いっしょに演奏しているうちに音色が似てくるので、向きがほぼいっしょなのではないかと思う。

1609032

下顎(関節頭)は前には出るが後ろにはいかない。開口時に下顎は後方に回転する。つまり、金管楽器演奏時に、普通の人が下顎を前に出して演奏するところを、反対咬合の人はあまり前に出さずとも楽に演奏できる。しかし反対咬合の程度が大きければ下顎を後方に押し込める必要があり、顎関節周囲に負担がかかる。これが私の「受け口気味(軽い反対咬合)だと金管楽器演奏に有利かも」という仮説の根拠であった。


つづく


| | Comments (0) | TrackBack (0)

August 23, 2016

折れた歯を戻す その2

当団首席トランペット氏の折れた歯を戻した翌日、電話がかかってきました。トランペットを吹いている方で、旅行先で転んで前歯が折れてしまい、当院は初めてだけど診てもらいたいが、東京に戻るのが少し先なので、現地で応急処置を受けた方がよいかというご相談でした。おそらくどこの歯科医院を受診しても、折れた歯を戻すことはせず、仮の差し歯を作って入れるのではないかと思います。そうなると、もし戻せるような状態だったとしても、もう戻すことが出来なくなります。しかし楽しい旅行で前歯の無い状態というのは気の毒なので、ダメ元でアロンアルファで付けてみることを提案しました。

旅行後に来院されましたが、結局アロンアルファは試さなかったとのこと。歯が粉々になって戻せないと思ったのだそうです。見ると、粉々の破片は隣の歯(左上側切歯)のレジン充填が外れた物のようで、折れた左上中切歯は歯を戻すことができるようです。しかしながら、折れた歯はレジン充填によるツギハギ状態で、少々の2次カリエスがあります。普通ならクラウンにすべきとは思います。しかし2か月後にコンサート本番があるということもあり、とりあえず戻してみましょうということになりました。
破折面のカリエスを削り、そこに接着剤が入る隙間ができました。そこで、今回はスーパーボンドではなく、レジン充填剤(フロアブルレジンといって、強度はあるが流れがよく薄くできる)を使うことにしました。隣の歯は普通にレジン充填しました。
咬合調整も必要なく、ほぼ元通りに戻せたと思います。楽器持参ではなかったので試奏していませんが、多分大丈夫でしょう。

16082311608232


| | Comments (0) | TrackBack (0)

August 22, 2016

折れた歯を戻す

前歯が折れてしまったら、私なら瞬間接着剤でくっつけてしまうと、2016.6.1の「前歯を再現する」でつぶやいた。正直言うと実際にアロンアルファでくっつけたことはない。状況によってはありだとは思うが、一般的にはあまりお勧めできる方法ではない。失活歯であれば通常ポストを立ててクラウンを被せる治療を行う。瞬間接着剤でつけるとしても、感染歯質が残っているか、その接着剤が人体に悪影響がないか・・・判断が必要だろう。しかし瞬間接着剤では接着剤の厚さが限りなく薄くなるので、ほぼ元の歯の位置に戻せるというのが大きなメリットと思う。私的に考えていた術式は、まず瞬間接着剤で戻したら、境目をぐるっとタービンで削ってレジンで埋め、舌側から穴を開けてピンで補強するとよいかなと。

とある休日、居酒屋でから揚げをつまみにハイボールを飲んでいるところに当団首席トランペット氏から電話がかかってきた。なんでもするめを噛んで歯が折れたとのこと。おお、それは一大事!(上記を試す絶好のチャンスではある)翌日来院いただくことになりました。折れた歯は右上中切歯で、マウスピースの当たる部位のほぼ中心に位置します(マウスピースが右にずれている)。昨年左上側切歯を抜歯して苦労し、何とか演奏が落ち着いてきていたのに・・・。

見ると折れた場所はちょうど歯肉縁のあたり。つまり考えていた術式は使えません。後で壊れないように一般的な治療法であるクラウンにするかとも考えましたが、側切歯1本変わるだけであれだけ苦労しているので、しばらく思うように吹けなくなることは確かでしょう。まずはそのまま接着して戻してみましょうということになりました。

問題はどうやって戻すかですが、虫歯ではない原因で失活歯となり、歯冠の歯質がほぼ残っていて、破折面はとてもきれいで虫歯もなく、きれいに戻ると思いました。しかしアロンアルファというわけにはいかないので、考えた挙句スーパーボンドという歯科用接着剤を使いました。最新の強力な歯科用接着剤と比べ軟らかく粘り気のある材料なので、むしろ衝撃に強く外れにくいのではないかと思いました。

かなりしっかり圧接したのですが、ほんの少々高くなって咬合調整が必要になり、吹いた感じが違うということで、歯の長さ自体もわずかに削りました。スーパーボンドの性質上どうしても厚みが出たのでしょう。接着面に溝を掘っておけばよかったかもです。もっと薄くなる接着剤の方がよかったかもしれませんが、スーパーボンドは信頼できる接着剤なので、これでよかったことにします。これで取れてしまったら、舌側に穴を開けてピンを入れて補強します。


16082211608222


| | Comments (0) | TrackBack (0)

«薄いリップガード その後